魔法の話‐じゅういち
なんやかんやもう一晩お世話になったアスカ達だったが、その身支度はもう済ませている。
「では、お邪魔しました。行きます。」
「おう。いろいろありがとな。それと・・・・・これ、やるよ。金はあるにこしたことはないだろ。」
決まり文句を言う気にならなかったアスカは素直にそれを受け取る。
「・・・・ありがとう、サンゴのおっさん。」
「こちらこそだ、アスカ。ありがとうだ。」
アスカは一礼をし、サンゴの家から離れていった。
徐々に遠くなるサンゴの振る大きな手。もう皺も見えやしない。
「ふふっ。なんだかいいわね。最後の言葉もお互いのありがとうなんて・・・なんていうの男同士の友情?みたい。昨日だって・・・ねえイエレナぁ、私たちを置いてってねぇ。」
はにかんだと思えば、口を尖らせ、すねたかと思えば、冗談を飛ばしている。陽気な過ごしやすい天気につられたのかアキナの機嫌は軽やかだ。
「ごめんって、まぁ、いつかは話すからさ。」
「ふふっ、いつかね。約束よ。私はいつだってアスカの傍にいるから。まぁ別に一生話してくれなくたっていいけどね。」
陽気な朝の空には、まばらではあるが雲がある。それでも青空は確かに見えている。
確かに歩みを進める3人は、ノーデンの街をついに出る。
その道中、見覚えのある人物と会う。
「おお、おぬしら。来おったか。いやぁ諦めなくてよかったわい。」
電球の件の老人がアスカ達に声をかけた。
「じいさん。久しぶり。どうかしたのか。」
背丈の低い老人は、手元に一つの書を取り出す。
「ぬしらがいなくなってから、しばらく家中を探したらのぅ、あったんじゃ。魔法の書。ほれっやるよ。」
「えっ!!本当か、じいさん。・・・・でと、唱えればいいんだっけか。」
「・・・・・・そうじゃ。しかし一つ問題があってのぉ。その魔法書にあるはずの筆跡がもう薄れて読めないんじゃよ。つまりじゃ、それでは魔法は使えん。」
ペラペラと背伸びをしながら魔法の書をめくっていく老人が言う。
「えぇ・・・・じゃあおじいちゃんは、私たちにただの紙をあげるってこと?」
「ふっふっふっ、と思うじゃろ。わしに任せなさい。魔法研究部署にいたわしならそれを直せるのじゃ。しかし…のぉ、その術はもうここにはないのじゃ・・・・・・」
意味ありげに言葉を詰まらせる老人は、若者の言葉を期待する。
「そ、そんな・・・・じゃあもうこの魔法書は使えないのかー」
察しの良いアスカがそれらしきことを言うと、目を光らせた老人が調子を上げる。
「ふっふっふっ、と思ったじゃろ。しかしミリテアにさえ行けば、なんとかなる!・・・・はずじゃ。」
言葉の締めくくりに、不安があったがアスカはそれに突っかかることなく、話を進めようとする。
「つまり、ミリテアなら俺は魔法を使えようになる可能性があるってことだな。・・・・よし、行きましょう。いざミリテアへ。」
新たな旅の友が増えたアスカ達は老人の言動の通りにそこに行くのであった。軍事国家ミリテアもとい”旧魔法帝国ミリテア”に。
「そういえば、じいさんの名前なんなんだ。」
「わしか?わしの名前は、シュパースじゃ。少しの間じゃがよろしくのぉ。」
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