魔法の話‐じゅっこめ
アスカがシャーデの世界から目覚めた時、アスカはすぐに体を起こすそうとはしなかった。
「アスカ?」
肩に手を置いていたアキナが、アスカの変化に気づき、アスカは眼を開けざる負えなかった。
「サンゴのおっさん・・・・・・」
声かけられたことでようやく祈ることをやめたサンゴは、アスカの言葉が続くことを期待した。しかしアスカのその表情に、何かを気づかないわけにはいかなかった。
うつむき影を成すアスカの顔はサンゴよりも先に泣き声をあげた。
謝れなかった。誰も誰も謝れなかった。
ずっと眠っていたシャーデに注がれた慈愛と期待はあまりにも重すぎたようだった。ピクリとも動かず、日差しに焦がされ続けていた。
「ごめん。ごめんなさい。期待させるようなことしてしまって、魔法ならどうにかなるって思ったんだ。でもあんたの娘はもう、どこにもいなかった。ごめんなさい・・・・・ごめんなさい。」
そこからは、アスカの声だけが響いた。肩にあるアキナの手を除け、一人で泣き、一人でその場に立っているのであった。
置いてかれた二人は、ぼんやりと時間を過ごしていく。
「ねぇえイエレナ、アスカ達はどこに行ったのかしら。あんなに泣いてるのなんか始めて見たし。・・・・もっとさ、私たちになにか話してもよくない?」
アスカとサンゴの行方をしらない二人は、サンゴの家でその帰りを待っているのであった。
「私が最初から止めてればよかったのかなぁ。でも私もちょっと期待しちゃったんだよな、アスカの魔法。」
話を聞くイエレナは別にうわの空というわけではなくしっかりアキナの話を聞いている。
「ねぇ、アスカってさ、普段何考えてるのかな。あなたのこと?それとも依頼のこと?・・・それとも・・・・。」
答えを返すはずのないイエレナにあえて聞き、窓の外を眺める。
窓ガラスに映る自分の姿。
ガラスに閉じ込められたアキナはどこか薄く、はっきりとした姿はしていなかった。
「?」
イエレナがアキナの視線が刺さる方向、その窓に指を指している。
「なにっ?なにかあった?・・・・・・あっ、あぁアスカね・・・・帰ってきたみたい。・・・・いったいなにしてんだか。」
ため息をつくアキナであったが、それは扉の開く音で隠される。
普段通りの格好のアスカとサンゴが、家に入る。
「帰ったぞぉぉぉぉおお。」
サンゴの声は図体に負けず劣らずでかい。
「お前ら、今日中にはもうここを出る感じか?なぁ飯、今晩も食ってけよ。まだ少し早ぇけどよ。晩飯・・・・餞別だ。」
「ありがとうございます。」
微笑みながらのアスカの言葉は、非常に穏やかであった。
せっせと仕込み始めるサンゴの背中は、もしかしたら父に間違いないのかもしれない。
アスカにアキナ、そしてイエレナ。3人は食卓に佇み、その背中を見ている。
大きな手は卵を繊細にわり、黄身と白身を分けている。
サンゴがオムライスだぞと叫んでいる。
色のないはずの匂いが、そこに見え始める。漂う匂いは、3人の記憶に刻まれていく。
徐々に暮れる1日は、部屋の明かりを強調する。暖色のオレンジに染まる木造りの壁と床。使い古された白のテーブルクロス。そこに緑の装飾がある。そしてサンゴの自信ありげな顔。きっと成功したのだろう。
コトっ
汚れ一つもない皿に整えられたオムライスがある。
赤のケチャップは黄身の上で寝ている。
4人で囲んだ小さな机には娘のために数か月費やした彼の料理がある。それはやはり抜群なものであった。
読んでいただきありがとうございます。
感想お待ちしています。
次話もお楽しみください。




