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魔術的鍵師物語  作者: mono
第三

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20/26

魔法の話‐みっつめ

 異色な空気感となる一室で老人が話を続ける。


「おぬし、魔法が使えないとか言っておったよな。それは変じゃよ。魔法は使えるやつと使えないやつで別れる。だから例えその鍵が魔法で作られていたとしても、魔法が使える奴でないとそれは使えないと思うのじゃ。おそらくじゃが、それは魔法が組み込められた類のものではない。魔法そのものじゃ。まぁ、なにが言いたいかというとな、おぬしは使える側の人間であるということじゃ。」


「そんな話初めて聞いたわ。」


 アキナが声を溢す。


「無理もないわい。魔法は戦争が終わってから、廃れるいっぽうだったからのぉ。」


 アキナは以前聞いた話を思い出す。


「そこで科学なの?」


「その通りじゃ。お嬢さん、賢い。科学は魔法を打ち負かせるからのう・・・・。よく最近の者は魔法を人智を超えるものじゃと思っとるが、科学こそ人の手の内に収まるようなものでもないとわしは思うのじゃがなぁ。」


 過去を思い出しているのか老人の目は悲しみを帯び、遠くを見つめていた。


「・・・じいさんは、嫌いなのか?科学が。」


「いや嫌いかどうかわしにもわからぬ。ただわしはもう世界に置いていかれてるのじゃ。年齢も年齢、くるものもくる。わしはもう現代の街じゃ暮らせない。使えないからのぉ。その点、魔法は良かったぞ。限られた人間しか使えないからこそ、どうしたら皆が魔法の効果を享受できるのか考えたものじゃ。・・・・近頃はそれが足りんのかもしれんなぁ。」


 老人の言葉は、確信めいたことのような明確な声色であったが次の言葉で元の情けなさのある色へと戻っていく。


「っていう老いぼれの戯言じゃ。忘れてくれ。ほれ、電球はあったかの。」


 目的を思い出したアスカが、床下の物置に入り込み、散乱する物々を掻き分けていく。そして手を動かしながら老人に一つの質問を問う。


「なぁじいさん。俺が魔法を使えるっていったが、もしそれが本当なら、この鍵以外の魔法を使うには、どうしたらいい。」


「魔法書じゃ。書物を開き、それを唱える。たったそれだけじゃ。」


 さらに問いを投げかける。


「じいさん。・・・・魔法書持ってないか。」


「すまんの。」


「そうか。」


 アスカは、電球を探しながらそこらに散らばる本を開いていた。文字の綴られていない本。どれもこれも白紙のものばかりであった。


「おっ・・・これ使えるんじゃないか。」


 ようやく電球をみつけだしたアスカが、床下から戻り、微かに笑顔を見せる。

 電球を渡された老人は、それをはめ込み、スイッチを押す。

 バチバチと音をたてながら点滅していたその電球は、次第に安定していき、橙色の光で部屋中を照らし、老人の皺にうすい影を作るのであった。


「おぬしら結局は、なんでこんなところにいるんだったかね。引き留めて悪かったのぅ。おかげで今夜も安心して過ごせるわい。」


 外をみるとおそらくまだ明るい。森の中にあるこの家は、影で覆われているが、その暗さを気にしなければ心地の良い静けさがあるといっていい。

 笑顔で送り出してくれた老人にアキナが、その若さを分けるいきおいで手を振る。

 

「また会おうね。おじいちゃん。帰りにでも寄るからぁ。」


 背の低いその老人は、耳に触れるほどの高さでこちらに手を振り返してくれた。


「早めに会いにきてくれ・・・生い先の見えないジジイなもんでのぉ。いつでも会える約束はできんのじゃよ。魔法の使えるにいちゃん。気を付けての。」


 森の外へと向かう三人。だんだんと進んできた道は、生い茂る草木やらで隠されていく。

 外の世界。やはりいまだ昼時の時間である。

 太陽は、頭のてっ辺を垂らす位置にいる。

 

「よし、依頼・・・頑張りますかね。」


 伸びをするアスカが、同時に欠伸をするが、ふっと息を吐き、気持ちを入れなおす。

 再びノーデンに歩む方向を合わせると、アスカ達は街へと入り込んでいった。

読んでいただきありがとうございます。

感想お待ちしています。

次話もお楽しみください。

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