魔法の話‐よっつめ
一時代前までは、主流であった魔法。特にこの街、ノーデンではそれが著しかった。しかしそれはほんのうん十年で塗り替わり、科学への道へと進んでいくのであった。
それは、もちろん他の分野においてもそうで、医療においても学術的というものが優先されるようになった。
ノーデンへの街に入り込んだ三人は、電球を買った商店を通りすぎ、この街唯一の入院施設のある病院にたどり着いた。
「ここ?」
「うーん・・・だね。依頼書にはここって書かれてる。」
おそらく依頼において初めて訪れる場所。今までのほとんどは、その依頼主の自宅が主であった。
「まぁ、行くか。とりあえず。でもどこにいるかまでは、この依頼書に書かれてないんだよなぁ。」
頭を掻くアスカは、まず病院の窓口へと尋ね、依頼書に書かれている名前の患者を探そうとする。
「あのシャーデって女の子の病室って何号室ですかね。」
窓口の女は言う。
「少々お待ちください。」
淡泊な言葉を残す受付の女は、すっと立ち上がり、壁に取り付けられた受話器に耳に当てる。
「あちらにある階段から上がり、左手にある二つ目の病室、206号室がシャーデさんの病室です。」
「ありがとうございます。」
受付の女に言われた通り、すぐそこにある階段へと向かっていくと、アキナが感じた違和感を話す。
「なんか冷たくなかった。怒ってた?」
「あんなもんじゃない?こういうところって。向こうも大してこっちのことなんて覚えてないだろうし。」
釈然としないようで、アキナは口を尖らせ、もう少しああしたらいいのになんて小言を漏らしている。
関係者にそれが聞こえやしないかと不安に思ったアスカであったが、運よく他の人間とはすれ違わなかった。
階段を登り切り、左に進行方向を変え、病室の番号が記されたプレートに目を凝らす。
「206・・・206・・・・。あぁあった。すぐそこだね。」
扉の前にまで進んだアスカは、もう一度そのナンバーを確かめると三度ほどその扉を打つ。
「はいっ!!どうぞ。」
低く重さのある男性の声が、扉の向こうから聞こえる。ノックの音に驚いたのか言葉の切れ目切れ目が破裂したような発声の仕方であった。
扉を開けるアキナであったが、アスカの後ろへと後に戻る。そしてイエレナの羽織る布の裾をちょびっとだけ掴み、身を縮める。
アスカ達三人を迎えた病室の男は、かなりの図体をしており、身にまとう袖のない服は、今にもはちきれんばかりで、筋骨隆々の腕を丸裸にしていた。そして何よりアキナを怖がらせたのは、その顔である。しかめられた眉の下におまけのように添えられた一重の目に、どんなものでも丸のみにしてしまうほど大きな口。もみあげにまでつながる髭は、その男の凄みを増しに増していた。
しかしアスカは物応じせず、その男、頭の一部分が禿げた男に挨拶をする。
「こんにちは。依頼を受けた鍵師の者です。アスカといいます。こちらの小さいのはイエレナ。そしてこっちのはアキナ。よろしくお願いします。」
そのいかつさのある男は、おもむろに立ち上がったかと思うと、勢いよく地に膝をつき、手をつく。そしてついには頭で地を叩く。
「鍵師だかなんだかは分からねえが、頼む!!娘を、シャーデを助けてやってくれ。」
病室に広がる重低音であったが、通り過ぎる看護師は、注意もせず行ってしまった。
大の大人が頭を下げているが、特に慌てる様子もなくアスカが顔をあげるよう促す。
「あの顔、あげてください。とりあえずよろしくお願いします。」
泣きそうな顔はそのガタイの良さには似つかわしくなかった。
そんなぼろぼろの顔の後ろで、一人の少女が整えられた布団に横になっていた。
眠るはずのないプーベテートの病。であるのにも関わらず、シャーデと呼ばれる女の子は、その瞳を閉じ、じっと眠り込んでいた。
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