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魔術的鍵師物語  作者: mono
第一

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2/26

三人の始まり‐ふたつめ

 村をでたアスカはしばらくして、後ろの二人、つまりはアキナに言葉を投げかける。


「君・・・嘘ついてるでしょ。」


 意表を突かれたアキナは、目を大きく開き、大きく深呼吸をしてから言葉を繋げていく。


「よくわかったね、私が病気じゃないってこと。なかなかにうまく”プーベテートの病”を演じれてたと思ってたのに。てか現にパパもママも騙せてたのに。流石鍵師さんだね。・・・ちなみにさぁなんでわかったの?」


 アキナは、自分の赤髪を指で遊ばせながら、無邪気に笑っている。白いワンピースを風にはためかせ、黄色い瞳は、太陽の色を反射させている。

 アスカは黙っている。黙ったまま眼鏡の位置を直す。アキナと正対し、多少の不愉快さの色を持つ目で彼女を見る。


「あまり感心はしないです。嘘で病を利用するのは。それに、たかが親を騙すためだけに、そんなに痩せるなんて。馬鹿だね。」


 淡々とした口調は、アキナの威勢を抑え込ませたが、丸められたそれは次第に敵意に変わっていく。


「うるさいなぁ。・・・私には私の理由があるの。それがどんだけばかばかしくても、合理的でなくても。私なりの理由があるのよ。」


「理由?理由があるのなら、正しく向き合えば良い。正面からぶつかればいい。無かったんじゃないか君には。勇気が。」

 

 アキナが言葉を詰まらせ、反抗心でアスカを言葉の刃を突き刺そうとした時、口論を走らせる二人、いやその場にいた三人に覆いかぶさるように、大きな影が三人の降り注ぐ。


「ドラゴン・・・。なんで・・・・。」


 アキナが言葉を漏らすと同時に、イエレナが黒の布切れ、そのマントを脱ぐ。そうするとイエレナは、大きく飛び上がり、竜の首元目がけ、蹴りを放つ。大きな呻き声をあげ、翼を暴れさせるが風圧に負けることなく、イエレナは再び、竜の懐に入っていく。拳を力強く握りこみ、その腹に向けて殴りこむ。

 竜の腹は溝のように凹み、それに反発するように竜の口から大きく息が漏れる。

 竜は、もう一度翼をはためかせるが、今回は暴れまわったわけではないようで、その位置をどんどんと空へと向かわせていった。


「けほっ。あなた、強いのね。・・・・?」


 咳き込みながらアキナが、イエレナをほめたたえる。しかし確かな違和感を感じた。アキナの目に映るイエレナは、肌の色などないほどでまったくの白さであり、竜を追い返したとは思えないほどの華奢な男の子であった。


「イエレナ君だっけ?なんか・・・これ・・は、なに。」


 兄に似た金色の髪は、風に揺られている。しかしイエレナの持つ青い目は、感情の機微などでは一寸とも動いていなかった。そしてなにより紡いだ口は、見た目こそ普通であっても、何ものも開くことができないほどの様相であった。


「弟だよ。喋れないけど。異常な力を持っているけど。・・・・弟なんだ。俺の大事な。」


 アスカから発せられた言葉たちは、妙な流暢さを持っていた。


「プーベテートって、かかったら喋れなくなるの?だから・・・・私は、あなたを不快にさせた?」


「似てるだろ。今の君に。ただ違うのは、君は喋ることができるっていうところかな。」


 やはりアスカの声は落ち着いている。周囲の鳥たちの心地よさが響くほどに。そして地面にある黒の布切れを拾い上げ、優しくイエレナにそれを被せ、弟と顔を合わせる。青い瞳同士が、それぞれを映し合い、冷たい風が横切る。

 アスカは、色素の薄まった彼だけに見えるそばかすをくすぐる様に撫で擦り、アキナを見る。


「始めようか。そろそろ治療。」


読んでいただきありがとうございます。

感想お待ちしています。

次話もお楽しみください。

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