三人の始まり‐ふたつめ
村をでたアスカはしばらくして、後ろの二人、つまりはアキナに言葉を投げかける。
「君・・・嘘ついてるでしょ。」
意表を突かれたアキナは、目を大きく開き、大きく深呼吸をしてから言葉を繋げていく。
「よくわかったね、私が病気じゃないってこと。なかなかにうまく”プーベテートの病”を演じれてたと思ってたのに。てか現にパパもママも騙せてたのに。流石鍵師さんだね。・・・ちなみにさぁなんでわかったの?」
アキナは、自分の赤髪を指で遊ばせながら、無邪気に笑っている。白いワンピースを風にはためかせ、黄色い瞳は、太陽の色を反射させている。
アスカは黙っている。黙ったまま眼鏡の位置を直す。アキナと正対し、多少の不愉快さの色を持つ目で彼女を見る。
「あまり感心はしないです。嘘で病を利用するのは。それに、たかが親を騙すためだけに、そんなに痩せるなんて。馬鹿だね。」
淡々とした口調は、アキナの威勢を抑え込ませたが、丸められたそれは次第に敵意に変わっていく。
「うるさいなぁ。・・・私には私の理由があるの。それがどんだけばかばかしくても、合理的でなくても。私なりの理由があるのよ。」
「理由?理由があるのなら、正しく向き合えば良い。正面からぶつかればいい。無かったんじゃないか君には。勇気が。」
アキナが言葉を詰まらせ、反抗心でアスカを言葉の刃を突き刺そうとした時、口論を走らせる二人、いやその場にいた三人に覆いかぶさるように、大きな影が三人の降り注ぐ。
「ドラゴン・・・。なんで・・・・。」
アキナが言葉を漏らすと同時に、イエレナが黒の布切れ、そのマントを脱ぐ。そうするとイエレナは、大きく飛び上がり、竜の首元目がけ、蹴りを放つ。大きな呻き声をあげ、翼を暴れさせるが風圧に負けることなく、イエレナは再び、竜の懐に入っていく。拳を力強く握りこみ、その腹に向けて殴りこむ。
竜の腹は溝のように凹み、それに反発するように竜の口から大きく息が漏れる。
竜は、もう一度翼をはためかせるが、今回は暴れまわったわけではないようで、その位置をどんどんと空へと向かわせていった。
「けほっ。あなた、強いのね。・・・・?」
咳き込みながらアキナが、イエレナをほめたたえる。しかし確かな違和感を感じた。アキナの目に映るイエレナは、肌の色などないほどでまったくの白さであり、竜を追い返したとは思えないほどの華奢な男の子であった。
「イエレナ君だっけ?なんか・・・これ・・は、なに。」
兄に似た金色の髪は、風に揺られている。しかしイエレナの持つ青い目は、感情の機微などでは一寸とも動いていなかった。そしてなにより紡いだ口は、見た目こそ普通であっても、何ものも開くことができないほどの様相であった。
「弟だよ。喋れないけど。異常な力を持っているけど。・・・・弟なんだ。俺の大事な。」
アスカから発せられた言葉たちは、妙な流暢さを持っていた。
「プーベテートって、かかったら喋れなくなるの?だから・・・・私は、あなたを不快にさせた?」
「似てるだろ。今の君に。ただ違うのは、君は喋ることができるっていうところかな。」
やはりアスカの声は落ち着いている。周囲の鳥たちの心地よさが響くほどに。そして地面にある黒の布切れを拾い上げ、優しくイエレナにそれを被せ、弟と顔を合わせる。青い瞳同士が、それぞれを映し合い、冷たい風が横切る。
アスカは、色素の薄まった彼だけに見えるそばかすをくすぐる様に撫で擦り、アキナを見る。
「始めようか。そろそろ治療。」
読んでいただきありがとうございます。
感想お待ちしています。
次話もお楽しみください。




