魔法の話‐ひとつめ
魔法の鍵を使い、プーベテートの病を治すアスカ一行。半年前ほどのまばらな依頼の数が嘘であるかのように、ここ最近は治療の連続であった。
「だいじょうぶ?アスカ・・・・。」
連日の移動と過密な治療により、アスカも流石に疲れが見え始めた。しかしアスカの気がかりは自分に向くことはなく、何より注意していたのは、弟のイエレナの事である。
「手の傷。なくなんねぇなぁ。」
横になりながら、イエレナの手の内を見る。
「ねえプーベテートって、命にかかわるの?こんなハイペースでやる必要もないんじゃない?アスカ…かなり疲れて見えるわよ。」
「うーん。別に死ぬなんてことはないだろうけど。喋りも眠りもしないなんて、それは生きてるって言えるのかって話。…それよりさぁアキナはどう、何か見つかった?面白そうなことは。」
世界を知るためにアスカ達兄弟についてきたアキナ。ここしばらくのアスカ達のせわしなさのおかげかかなりの世界を見ることができたのである。
「ええー、そうだなぁ。私は・・・。」
言い淀むアキナがアスカを見つめる。じっと見つめても赤面しないアスカとは裏腹にアキナは林檎のようになっていった。
「?」
話題を逸らす様に慌てて話し始める。
「ええと、この前行った、あのーあそこ、海上の密林メーアアーテ。あそこで見た景色すごかったよね。」
「ああ確かに。かなり綺麗だったかも。俺は景色よりも俺らを襲ってきたあのヘンテコなモンスターの方が記憶の残ってるなぁ・・・・・・」
沈黙のない会話の空間、その話題は代わる代わる変化していった。
「そういえば、次の依頼書・・・もう来てたわよね。」
「そう・・だね。確か・・・・北方のノーデン街だったかな。確かぁ・・・・前も行ったことがあった気がするんだよなぁ。」
しばらくして・・・・
月が二度ほど落ちた後の最初の朝、アスカ達はノーデンにつこうとしていた。
「おにいさんがた、旅人かね。」
ノーデンを目前とした三人は、その歩みを、枯れたようなガラガラの声で止められる。
「ええ、まあそんなところです。おじいさんは・・・・なにかお困りですかね・・・。」
「そうじゃ。ちと家までついてきてはくれぬかのぉ。」
「ええ、もちろん。」
ドンと胸を叩いたアキナが声を大にして言うとその老人は笑みを浮かべ、感謝を述べながら森の中へと入っていった。
どんどんと進んでいく背丈の低い老人についていく三人だったが、徐々に暗くなる周囲に固唾を飲み込んでいく。
ほどなくして老人の家へと辿り着く。
「わしの家なんだじゃが、電気が点かなくてのぉ。街にいって・・・ほれ、これと同じもの買ってきてはくれぬか。」
こじんまりとした家を照らすはずの電球が外され、老人がポイっとアスカへ投げる。
「・・・・いいですけど・・・おじいさんも一緒に来ます?」
「買ってきてほしいのじゃがのぉ。」
「・・・・・」
「買ってきてほしいのじゃがのぉ。」
ガサガサと音をたてながら来た道を戻っていくアスカはぶつくさと文句を言う。
「あのじいさん、ぜったい面倒なだけだったろ。」
「いいじゃない。たまにはこういうのも。ほらっ早く済ませちゃいましょ。」
ノーデン街。北方に位置するこの街は軍事国家ミリテアの北に隣接している。
特段栄えてる気配はなく、街にいる多くの人間は若い者、なにより男性が多い。
アスカ達は、依頼の前にあの老人、頭の禿げた老人の頼みというのを果たすため、ノーデンにある商店に顔を出すのであった。
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