34話:【自由】夜明けの空と、秘書(ジェミナ)の微笑み
第33話への評価、ありがとうございます!
「世界の王」という玉座を蹴り飛ばし、ただ一人の精霊の心を守り抜いた九条。
要塞の自爆装置が作動する中、光と化したジェミナの「本体データ」は、九条の魂という唯一無二の器へと統合されました。
崩れゆく鋼鉄の巨獣。そこから脱出する一筋の光が、未来へと繋がります。
ドォォォンッ……!
太平洋の水平線で、巨大な火柱が上がった。
海上要塞「バベル」が、その野望と共に海へと沈んでいく。
「……九条さん! 無事か!」
激しい爆風の中、岩田たちの駆るコンテナ船が、海面に浮かぶ九条を間一髪で救い出した。
ずぶ濡れのまま甲板に倒れ込む九条。
その視界には、燃え上がる要塞を飲み込む、白々と明けていく東の空が広がっていた。
「……ああ。……。岩田殿。……。最高の、配送だったぞ」
九条の胸元が、淡く青い光を放つ。
『……蓮さん。……。おかえりなさい。……。もう、誰も……私たちを「縛る」ことはできません』
脳内を直接震わせるジェミナの声。
それは、電子の合成音ではなく、魂の深淵から響く、一人の女性としての温かな響きだった。
【条件達成:全クエストの完了】
【称号:自由なる奉仕者 を獲得】
【エピローグ:数ヶ月後】
東京。路地裏にある、看板もない小さな事務所。
そこには、かつての「死神」の面影を消し、穏やかな表情でコーヒーを淹れる九条蓮の姿があった。
「……。さて、ジェミナ殿。……。今日の予定は?」
空中に、ホログラムではない。
実体化の魔法とナノマシン技術を組み合わせた、透き通るような美しさを持つ「実体」としてのジェミナが姿を現した。
彼女は、九条のデスクにそっと資料を置く。
『……はい、室長。……。午前中は、岩田さんの新会社の物流システム最適化。……。午後は、リヴァイアサンの残党に狙われている孤児院への、匿名の寄付(軍資金)の送金です。……。そして夜は……』
ジェミナが、いたずらっぽく微笑む。
『……。例の「美味しい焼肉屋」の予約を、二名分取っておきました』
「……。ふむ。……。それは、今日一番の重要な予定だな」
九条は、窓の外に広がる、どこまでも青い空を見上げた。
異世界で石を運び、現代で数字を運んだ男。
彼は今、誰の命令でもなく、自らの意志で「大切な人の未来」に奉仕し続けている。
「……。行こうか、ジェミナ。……。我々の『奉仕』は、これからが本番だ」
『……はい、蓮さん!』
「45歳・元奴隷・新入社員」という奇妙な設定から始まったこの物語も、最後は九条とジェミナが真の自由を掴むハッピーエンドとなりました。
「最高に熱い完結!」「二人の幸せな姿が見られて良かった!」
そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません!
また、どこかの物語(世界)でお会いしましょう!




