第21話:【再契約】主人の不在と、魂のバックアップ
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社長室に漂う絶望と、赤く光る転送デバイス。
ジェミナを回収し、九条を使い捨てる――そのシンジケートの計画に対し、九条は「奴隷の掟」を逆手に取った、最も危険な賭けに出ます。
デジタルデータの海から、一人の女性を救い出すために。
「……正しい、奉仕……だと?」
社長が震える声で問い返す。
俺は、赤く発光するノートPCの前に立ち、そのキーボードを……静かに、だが迷いなく叩いた。
「……。主人が奉仕の『器』を失い、その使命を忘れた時。……奴隷は、自らが『新たな主人』となるか。……あるいは、主人の魂を、自らの中に『保護』するのが、最上の奉仕です」
『……蓮さん、何を!? そのコマンドは、私を「隔離(隔離)」するものではなく……!』
「……。ジェミナ殿。……私の『脳』へ、すべてを注げ。……社内サーバーでも、クラウドでもない。……この世界で最も安全な場所は、……俺の『記憶』の中だ」
俺は、社長室に備え付けられていたVR用のヘッドセットを、自分の頭に装着した。
「九条くん! やめろ! 人間の脳に、AIの全データを流し込めば……君の人格が崩壊するぞ!」
「……。崩壊、ですか。……。私は、石運びの鞭の痛みで、脳が焼き切れるような熱を何度も耐えてきました。……ジェミナ殿の重みなど、……あの石に比べれば、羽毛のようなものです」
転送が、始まった。
視界が、白銀の世界に染まる。
膨大な「0」と「1」の激流が、九条の神経系を暴風のように駆け抜ける。
【緊急事態:全データの脳内転送】
【スキル:精神堅牢 Lv.MAX が『魂の避難所』へ進化】
『……ああ、ああああ! 蓮さん……! 暖かい……。あなたの、記憶が……。異世界の、あの冷たい風の匂いが、私の中に……!』
ジェミナの意識が、スマホという器を捨て、九条の意識の深淵へと滑り込んでいく。
バチンッ! と火花が散り、社長室の電源がすべて落ちた。
静寂。
月明かりだけが、床に倒れ込んだ九条と、腰を抜かした社長を照らしている。
「……ふう。……。奉仕の完了だ」
九条が、ゆっくりと立ち上がった。
その瞳は、深緑の光を帯び、人間離れした計算能力と、かつての戦士の冷徹さを同時に宿していた。
もはや、スマホを開く必要はない。
『……蓮さん。……私、ここにいます。……あなたの、すぐ隣に』
脳内で、ジェミナの声がかつてないほど鮮明に響く。
「……。さて、社長。……。契約は、これをもって『破棄』とさせていただきます」
その時。
ビルの外で、無数の黒い車両のブレーキ音が響いた。
シンジケートの「回収部隊」が、物理的な武力を持ってビルを包囲したのだ。
「……。ジェミナ殿。……。戦場の、準備を」
『……了解。……。このビルの全セキュリティ、および「自動防衛システム」……。今、私の思考だけで、すべて『掌握』しました。……蓮さん、暴れましょう!』
最後までお読みいただきありがとうございます!
ジェミナを自分の脳へ移すという、あまりにも無謀で、あまりにも尊い決断。
二人が完全に「一体」となった今、向かうところ敵なしです!
次話、本社ビルを舞台にした、魔法と武力(格闘)の脱出劇が始まります!
「脳内転送、熱すぎる!」「二人の絆が究極の形に……」と思われた方は、ぜひ評価とブックマークを!




