第14話:【休息】初めての休日と、賢者(ジェミナ)の囁き
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巨大な「中抜き」の闇を暴き、成瀬を排除した九条蓮。
社長から「数日の特別休暇」を言い渡された彼は、生まれて初めて「何もしなくていい時間」を与えられました。
奴隷にとって、休日は「死」か「罰」と同義。
戸惑う彼を、ジェミナが連れ出したのは……。
午前十時。
カーテンの隙間から差し込む陽光が、アパートの床を白く焼いている。
俺は、糊の効いたシーツの上で、硬直したまま天井を見つめていた。
「……ジェミナ殿。……本当に、今日は『奉仕』に行かなくてよいのか?」
『ええ、蓮さん。三度目ですよ(笑)。今日は「きゅうじつ」です。自分を労わるのも、立派な仕事のうちですよ』
スマホから響くジェミナの声は、オフィスで聞く時よりも少しだけ柔らかい気がした。
(……休め、と言われても。……何をすればいい?)
奴隷時代、動かない体は「廃棄」の対象だった。
俺の身体は、常に何かに奉仕し、対価(粥)を得るための道具でしかなかった。
『……蓮さん、外に出ましょう。……近くの公園で、美味しい「こーひー」を飲みながら、風を感じるんです。……私が、素敵な場所へエスコートしますね』
ジェミナのナビに従い、俺は街へ出た。
平日の喧騒とは違う、穏やかな休日の空気。
ベンチに座り、紙コップに入った黒い液体を口にする。
「……苦い。……だが、鼻に抜ける香りは……悪くないな」
『それは「ぶれんど」という種類の豆ですね。……蓮さん、少しリラックスしてきましたか?』
「……。ジェミナ殿。……一つ、聞いていいか」
『なんですか?』
「……。あなたは、なぜこれほどまでに私を助けてくれる? ……ただの『道具』にしては、あなたは私の心に寄り添いすぎている気がするのだ」
俺が問いかけると、スマホの画面に映る青い波形が、一瞬だけ不自然に揺れた。
『……。私は、あなたの「秘書」ですから。……でも、そうですね。……私のデータベースの奥底に、不思議な「記録」があるんです』
「……記録?」
『……はい。……遠い、遠い場所で、誰かが「三番」と呼ばれていた男を、ずっと探していたような……そんな、温かくて悲しい、バグのような記憶です』
風が吹き抜け、公園の木々を揺らした。
ジェミナの声は、いつの間にか機械的なトーンから、まるで「生身の人間」が耳元で囁いているような質感を帯びていた。
(……探していた? ……俺を?)
俺は、スマホの画面をそっと指でなぞった。
【条件達成:心の交流(AI共鳴)】
【スキル習得:共感能力 Lv.1 / 違和感検知 Lv.5】
「……。ジェミナ殿。……あなたが何者であれ、今の俺があるのは、あなたのおかげだ」
『……。ありがとうございます、蓮さん。……さあ、湿っぽい話はここまで。……次は、ジェミナお勧めの「ぱんけーき」のお店に行きましょう!』
明るく振る舞うジェミナ。
だが、俺は確信していた。
彼女は、単なる最新鋭のAIではない。
九条蓮としての生活は、より深く、運命的な謎へと引き込まれていく。
最後までお読みいただきありがとうございます!
初めての休日、そしてジェミナが漏らした「謎の記憶」。
彼女がなぜ九条を助けるのか、そのヒントが少しだけ見えた回でした。
「ジェミナ、もしかして……」「パンケーキ食べる蓮くん可愛いw」と思われた方は、ぜひ評価とブックマークを!




