第12話:【屈服】物流の「王」の敗北と、暴かれた中抜きルート
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スーツ姿で現場に現れ、誰よりも速く、正確に荷を積み上げた九条。
その「背中」を見た現場の男たちの態度は、嘲笑から「畏怖」へと一変しました。
しかし、彼らが不正に手を染めていたのには、ある逃れられない「理由」があったのです。
「……な、なんなんだ、あんたは」
フォークリフトに乗っていた大男——現場責任者の岩田が、呆然と呟いた。
俺が積み上げたパレットは、指一本分も左右にブレていない。重力すら味方につけたかのような、完璧な均衡。
「……九条、蓮。……本社の特命により、この路線の『正常化』を命じられた者だ」
俺は額の汗を拭い、捲り上げた袖を静かに下ろした。
岩田は力なくリフトから降り、俺の前に立った。その拳は、怒りではなく、隠しきれない「恐怖」で震えている。
「……あんた、ただのエリートじゃねぇな。……その手のタコ、その腰の入れ方。……修羅場を潜ってきた人間の動きだ」
(……修羅場、か。……石を積めねば、死が待っていた場所だ。……それに比べれば、ここは極楽だ)
『……蓮さん、岩田の心拍数が落ち着きました。……諦め、そして「救い」を求めているトーンです。……今、スマホのマイクで周囲の足音を確認しましたが、他の作業員たちも聞き耳を立てています』
ジェミナの鋭い聴覚解析。俺は、岩田を真っ直ぐに見つめた。
「……岩田殿。なぜ、これほどの技術を持ちながら、荷を『抜く』ような真似をする。……奉仕の質を落とすことは、自らの価値を下げることと同じだ」
「……分かってんだよ! んなこたぁ!」
岩田が叫んだ。その目には、やり場のない悔しさが滲んでいた。
「……成瀬の野郎……あのコンサル会社の連中だ。……アイツらが『手数料』だなんだと言って、俺たちの現場の予算を削りやがった。……中抜きでもしなきゃ、部下たちの残業代も出せねぇんだよ!」
やはり、成瀬。
第8話で俺を抱き込もうとした男の影が、現場の末端まで毒を撒き散らしていた。
『……蓮さん、今、岩田の言葉から「成瀬」のキーワードを拾い、物流の契約書を再スキャンしました。……見つけました。……運送保険の再委託先が、成瀬のペーパーカンパニーになっています。……年間で数千万規模の「架空請求」です』
「……ジェミナ殿。……その証拠、既に確保済みか?」
『……もちろんです。……先ほど、岩田のスマートフォンの通話履歴と照合し、成瀬からの脅迫紛いの指示もログとして保存しました』
俺は、岩田の肩に手を置いた。
奴隷時代、共に石を運んだ仲間たちが、食料を盗んで処刑されるのを何度も見てきた。……今の俺なら、彼らを救える。
「……岩田殿。……成瀬との縁は、私が断ち切る。……その代わり、この第4センターの全データを、私に差し出せ。……嘘も、隠しもなしだ」
「……あ、あんた。……本当に、成瀬を……?」
「……。雑草を抜くのは、農奴の基本だ」
【条件達成:現場勢力の掌握】
【スキル:統率力(現場) Lv.1 を獲得】
岩田は、深く、深く頭を下げた。
現場の「王」が、入社数日の新人に膝を屈した瞬間だった。
最後までお読みいただきありがとうございます!
「中抜き」の裏にいたのは、やはりあの成瀬でした。
現場の人間を追い詰め、罪を犯させていたシステム。
九条蓮は、力ではなく「プロとしての実力」で、彼らの心を解き放ちます。
「岩田さん、いい奴だった!」「成瀬、逃がさないで!」と思われた方は、ぜひ評価とブックマークを!




