第11話:【現場】「死のルート」の正体と、積み荷の極意
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特命プロジェクトのリーダーとして、九条蓮が最初に向かったのは、地図上の「空白地帯」——郊外にある巨大な物流センターでした。
そこは、本社のエリートたちが一度も足を踏み入れたことのない、独自のルールで動く無法地帯。
スーツ姿の蓮を嘲笑うトラック運転手たちに対し、彼は言葉ではなく「背中」で語ります。
ディーゼルエンジンの咆哮と、排気ガスの匂い。
郊外の第4物流センターは、本社の洗練された空気とは対極にある、荒々しいエネルギーに満ちていた。
「……ほう。ここが、雑草の温床か」
スーツのジャケットを脱ぎ、ワイシャツの袖を捲り上げる。
周囲のトラック運転手や作業員たちが、場違いな男の登場に、隠そうともしない敵意と嘲笑を向けた。
「おいおい、本社からお坊ちゃんが視察かよ? 邪魔だ、どいてろ!」
フォークリフトを荒っぽく操作する大男が、わざと俺の足元スレスレを通り過ぎる。
『……蓮さん、周囲の音声解析完了。彼ら、裏で「中抜き」の隠語を使っています。……やはり、荷積みの段階で特定の物資を横流ししていますね。……でも、証拠を掴ませないよう、荷役作業をわざと複雑化させてカモフラージュしています』
ジェミナの冷静な報告。
目の前では、熟練を自称する作業員たちが、パレットに荷物を積み上げている。だが、その手つきは非効率で、意図的に「崩れやすい」隙間を作っているのが見て取れた。
(……甘いな。これでは、石を積むどころか、藁を並べるのと同じだ)
俺は、作業員の一人から無造作に荷物をひったくった。
「なっ、何すんだテメェ!」
「……代われ。その積み方では、三つ目の角で荷崩れを起こす」
「ハァ!? 素人が抜かしやがって——」
罵声を無視し、俺は荷物を持ち上げた。
奴隷時代、崩れれば即座に命を落とす巨大な岩を、ミリ単位の誤差もなく積み上げてきた「指先の記憶」が疼く。
【スキル習得:神速荷役 Lv.1】
【身体記憶:重力分散の極意を同期しました】
俺の動きは、もはや人間のそれではなかった。
重心を一瞬で見極め、パズルのピースを嵌めるように、段ボールを吸い込まれるように積み上げていく。
無駄のない軌道。音すら立てない精密な接地。
わずか数分。
そこには、震動すら受け付けないほど完璧に結束された「荷の壁」が出来上がっていた。
「……な、なんだ、この積み方は。……隙間が、全くねぇ……」
周囲の喧騒が、急速に静まり返る。
「……ジェミナ殿。次のパレットを」
『……了解です、蓮さん。……今、作業員たちの動揺を検知。……リーダー格の男が、事務所に連絡を入れようとしています。……「化け物が来た」と』
俺は一汗もかかず、次の荷物へと手を伸ばした。
「……奉仕に、本社も現場もない。……正しい荷を、正しい場所へ。……邪魔をするなら、荷物ごと叩き伏せるまでだ」
物流センターの「王」を自称していた男たちの顔が、驚愕と恐怖に染まっていく。
最後までお読みいただきありがとうございます!
「スーツを着たひ弱な新入社員」だと思っていた男が、自分たち以上の「プロの動き」を見せつける。
現場の人間にとって、これ以上の衝撃はありません。
次話、ついに物流路線の「闇」の核心へと迫ります!
「蓮くん、肉体労働もイケる口w」「積み荷のプロすぎ!」と思われた方は、ぜひ評価とブックマークを!




