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12=番外 我が研究所の○○○の漏出ではないと思いたい(異世界の某所員視点)

これはあくまで異世界の某研究所の部門長の話であり、筆者の思想信条とは一切関係ありません。


元々11話として投稿していましたが、本編になくても困らない蛇足なので、番外編としました。新しい第11話はこの前に挿入しています。


我が国の法術(補足1)研究所(補足2)は、応用系の水術利用部や風術利用部、触媒研究部(補足3)だけでなく、精製研究部のような基礎系でも名前を知られているほどに研究水準が高い(補足4)。当然ながら、他にも多くの研究部・研究室が存在し、中には最先端の所も少なくない。そんな研究室の一つに誤動作研究室(補足5)というのがあって、そこがそれがしの職場だ。


その職場が急に脚光を浴びている。きっかけは、アジア・ナウロッパ・灼熱の3大陸が交わる交易地域を中心に、風術をサポートする触媒(法具)の誤動作事故が増えたことだ。調査の結果、誤動作は加熱術の法具しょくばいでも増えていたことがわかり(補足6)、同時に我々は、これが偶然でないと確信した(補足7)。


始めのうちこそ、邪神が関わっているかも、という意見もあったが、過去に起こった「カビ」事件と類似性が指摘されたことで(補足8)、その意見はいつしか消えてしまった。報告の数ヶ月後に邪神が封印されたにも関わらず、誤動作事故が収束どころか拡大したことも、邪神説を捨てる理由になった、


代わりに我々が心配したのは、以前に事故を起こした「カビ」が、どこかの国の研究所から再び流出したのではないか、ということだ(補足9)。事故による漏出を含め、人為的な原因があるのなら、原因を特定しない限り被害は拡大しかねない。


原因究明の為にバグを起こした法具しょくばいの履歴の共通点を捜したが、それを見いだすのは簡単ではなく、それが複数の収納しょくばいバッグ(補足10)と関係あるらしいと分かる頃には、水術や分解術にも影響が出ていた。しかも、その頃になると、収納しょくばいバッグに入れた事のない新品の触媒にまで似たような誤動作をする品が現れ始めた(補足11)。そんな混乱状態だったので、勇者様達が日本大陸から姿をくらましたというニュースが届いても、誰も気に留めなかった(補足12)。


そんな時、いきなり大事件が起こった。邪神の封印が5年あまりで解けてしまったのだ。封印を弱めるような細工は検知できなかったので、封印時に問題があったことになる。それは、勇者様たちが召喚当初から懸念したことでもあった(補足13)。


なれば、勇者様達の出奔しゅっぽんも、封印チーム抜きで再封印するためではあるまいか? 封印の街での情報が集まるにつれ、関係者の多くがそう信じるようになった(補足14)。その結果、世話人を含む封印チームは、邪神捜しに専念することになった。勇者様たちには独自の捜索をして貰う。それが我々に伝えられた情報だ。


邪神探しとは別に、1年後のシンクロ期に新たに召喚する必要がある。こちらの準備も必要だ。


これに関して、懸念がひとつあった。それは、6年前に召喚術が使われた形跡があったということだ(補足15)。もしも、邪神が同時に召喚を行なった場合、どちらの召喚が優先されるか? 

世界中の研究者が議論し、最終的に、我々の召喚が邪神の召喚より優先されそうだから、大丈夫なはず、という結論にはなった(補足16)。


だが、召喚は失敗した(補足17)。理由は不明だが、法具しょくばいの誤動作の可能性が高い。こうなったら、年々悪化する誤動作問題を解決して、7年後の召喚の成功に掛けるかない。果たして、それまで邪神を抑えられるかどうか。


その後、時間が経つにつれ、邪神を気にかける余裕すらなくなってきた。上等な法具しょくばいを使える階級(上流階級)が、術を使えなくなるという問題に直面したからだ(補足18)。10年後には、それが遺伝することすら判明した(補足19)。


もはや邪神封印どころではない。大昔の予言にあった『混沌の時代』とはこれのことかも知れない。ということは……(補足20)。

以下の補足は異世界の某研究所員の話によるもので、筆者はその内容に関知しません。


(某所員による補足1)

我が国では法術と呼んでいるが、東の大国では法力とか道術、その東の日本大陸(というか島)では神通力、西のナウロッパ大陸では魔法、南の灼熱大陸では魔術と呼んでいる。いずれも同じものだとそれがしは理解している。


(某所員による補足2)

創立170年で、世界のトップ10の一つだ。

創立のきっかけは、3代前の聖様(年配の男性)が、彼らの世界では「研究所」という所に頭の良い者や技術のある者を集めて、色々と新しいことや、馬鹿げたことを探究している、と教えて下さったからだ。


こちらの「大学」では、教典的な文献を元に哲学して知識を拡大しているが、「研究所」という所では、実験や観測を元に理論を作り、その理論を元に新たな実験や観測を行なうということを繰り返して、知識を更新・修正し続けることを目的にしているそうだ。それを我々も真似た。だから「文献の勉強の出来ない」落伍者であっても、手や足を動かす者であれば、重用される。


そういう事情で、研究所のの構成員には一般市民(中流階級とかいう、実は広い意味での上流下級に含まれる教養の高い人々とは異なる)が多く、設立から50年ほどは「大学」に比べて国から冷遇されて来たが、前々回の勇者様(若いほう)が研究所に入り浸るようになって、ようやく最低限の研究が可能になった。その副産物として「大学」にも実証的な学部が設立されるようになって、人材確保の点でも助かるようになった。


(某所員による補足3)

例えば水術利用部は運河(灌漑を兼ねる)の効率化や船の形の効率化、風術利用部は帆と風車の効率化の研究で知られている。触媒研究部は、法術を効率化する手段として、ザルとか軽石とか、触媒以外の奇想天外なものを考案することで有名になった。これら効率化は、もちろん法術との組み合わせとしての効率化で、例えば風術をどのように調整した時に、風車の形をどのように変えたら、もっとも効率が良いかを、出力別に調べたりする。


その風術利用部だが、所内ではグライダーの研究でも有名だ(翻訳者注:第9話の補足21参照)。


サーフィンのように風に乗るという考え方は昔からあったものの、余りに危険でアイデアが進展なかった。というのも、常に風の調整が必要で、上級の風術師が乗る必要があったからだ。上級の風術師でかつ運動神経の良いものは少なく、しかも精々が強風の日に数百メートルを移動できる程度で、実用から程遠い。しかも風術師が墜落で死傷する例が世界各地で相次いだのが決定的で、風に乗るのは遊び程度、というのが常識となっていた。


これを変えたのが、前々回の勇者様が提案なさったグライダーだ。機体を思い切り大きくして、風術師を守るコクピット付きでも、そよ風で浮力を得られるようにした。コントロールの難しい強風でなくても良いというのは、操縦者が機体のバランスにより専念するのに重要だった。しかも、操縦しやすいように、翼の下に浮力を調整できる羽を取り付けたのも大きい。お陰で中級手前の風術師でも乗れるようになった。


とはいえ、ちょっとでもバランスが崩れると風術師が焦って風のコントロールが途切れてがちになる。それで墜落してしまう事故も多く、他の原因と合わせて、開発から何年経っても3回に1回は墜落して大けが、残りも10分程度が限界だった。当時の勇者様は「加速が足りない」と仰っていたが、加速は風が行なうものだと思っていたので、いつまでも成功率が低かった。この誤解は、今回の勇者様が解いて下さるまで分からなかった。


それでも、大成功する日が過去2回あった。晴天の暑い日で、地上はほぼ無風だったのに、高く飛べたまでは良かったのだが、そこから降りられないうちに、急に入道雲が発生して、落雷で2度とも操縦者が犠牲になったのだ。しかも2回目は、そのまま豪雨になって、地上にまで浸水被害が出た。


この時以来、空を飛ぶ事は神の怒りとして禁忌になった。その後は隠れながら実験しているけど、成功率はいつまでも上がらず、結局、異世界の「カクユウゴウ」とかいうのと同じぐらい無駄と思われるようになっている。それでも挑戦したがる物好きな風術師がこの部門に集まるので、所内で有名だ。


(某所員による補足4)

精製研究部が有名なのは水生成での宣伝が上手いからだろうと思う。


水生成というと、普通の人は水術の延長だろうと思うし、過去にきた勇者様・ひじり様も、皆そのように思っていらっしゃった。しかし、水術とは液体を動きを操作するもので、対象は水に限らない。だからこそ、塩水だろうが泥水だろうが、ほぼ同様に扱える。


では水を精製するのにどの法術を使うのか? 現在の主流は以下の2種だ(翻訳者注:第7話の補足14参照)。

(1) 分別術と風圧縮術の合わせ技(空気中に水分がある場合):水蒸気を空気から分けて、それに圧縮・膨張を組み合わせて、朝露のように凝結させる。

(2) 分解術と分別術の合わせ技(地中に水分がある場合):土の構成分子と結合しているのを分解術で分離して、それを分別術で分ける。

ちなみに、海水の場合は、ちょっと遠回りだけど、加熱術で蒸気にしてから(1)を使う。これは、水と塩との結合が、水と土の結合以上に強く、(2)だけだと中級以上の分解術が必要になるからだ。


これらの方法は、前々回の勇者様に言わせると、どちらも「エントロピーを下げる」プロセスだそうだ。エントロピーが何であるかはそれがしにはピンと来ないが、ともかく、かなりの法力を使う。これを効率化するために、触媒以外に布や金属を使うが、それでも大変なので、よほど困った時(船の難破でボートや最悪丸太で海を漂流している時など)以外は飲み水には使わない。だから船や旅行では、普通に水樽を積み込んだり、雨水を貯めたりするのが常識になっている。


雨水と言えば、今回の勇者様が当地を訪問した際、「雨水は腹を壊すんじゃないの?」と言っていたのを、ひじり様が「あんた、馬鹿じゃないの? 降り始めのパラパラ雨こそ、ゴミとかを拾うから、1万人に1人ぐらいのものすごーく繊細な人ならお腹をちょっと壊すかも知れないけど、普通は全然ん大丈夫だし、その後の本降りの雨なら、もの凄く奇麗で、名水と呼ばれる泉よりも奇麗なのよ。だれよ、そんなデタラメを言いふらしているの? あ、きっとネット小説ね」とたしなめていたのを思い出した。へえ、異世界って、意外と間違った知識も蔓延はびこっているんだなあ、と驚いたものだ。


そういえば、前々回の勇者様から第3の方法として、もの凄く大きなエネルギーを一カ所に閉じ込める方法も提案された。なんでも

「物質には反物質というのがあって、膨大なエネルギーがあれば、その両方を作れるし、2つ合わせると大爆発する」

らしい。


この知識は『鉄腕ナントカ』という書物から得たそうだ。そこで提案されたのが、特殊(虚数)法術を使って、物質と反物質のうちの物質のみを取り込んで、反物質を別次元に捨てるのはどうか、とのことだった。勇者様は「ビッグバンならぬバンだ」と自画自賛していたそうけど、誰にも意味がわからず、言葉だけが伝えられている。


もっとも、概算では法力の非常に高い者が1000人掛かりでも1ccが限界らしく、アイデアは捨て置かれている。


(某所員による補足5)

ここ半世紀ほどは、付与型の法術で触媒を誤動作させる研究をやっている。


元々は、発動させる法術とは無関係な法術の同時発動による、干渉系の誤動作を防ぐ研究をしていて、干渉しやすい術の組み合わせや、干渉を防ぐ触媒の研究をしていた。でも、誤動作を起こすような外部刺激を調べる過程で、軍事応用の可能性が浮かび上がってしまい、それを知った国の上層部が、軍事研究への予算を増やす代わりに外の研究の予算を減らすようになって、いつしか軍事秘密研究が部署の半分を占めるようにになってしまった。そのため、他の部よりもセキュリティーが厳しく、建物も全く別の場所になっている。


(某所員による補足6)

風術の誤動作には、帆に吹かせる順風を起こす代わりに突風となり、船のバランスが崩れかけるというものがあって、それが直接のきっかけで、誤動作研究室の世間への露出が増えた。加熱術のほうは、触媒の一部が剥がれて紙が降って来たり(翻訳者注:第8話の補足27参照)、帽子(hat)が飛ばされたり、花月カゲツ風鳥の絵が対象物に現れたりと、手品のようなネタ法術になっていた。


(某所員による補足7)

誤動作が、スペルの1文字が変わるだけの誤植によるものであることは、誤動作研究室のメンバーの間では一目瞭然だった。この手の誤植がランダムに起こることが知られていたからだ。しかし、ランダム誤植の確率は低く、法具しょくばいでサポートしている場合は皆無に近い。


それを考えると、最近起こった事故は、偶然で片付けるには多過ぎた。風魔法だけが影響を受けたのも、ランダムの可能性を否定していた。そして決定的なのが、誤植が伝染する事故が過去にもあったことだ。


(某所員による補足8)

200年ほど前、特定タイプの法術をサポートする法具しょくばいが、次々に誤植事故を起こした。発生したのはアジア大陸のみ。件の法具しょくばいを集めて精密に調べたところ、いずれも、その内部に巣食ったカビが原因だった。カビが他の法具しょくばいへも伝染して被害が広がったのだ。


そのカビがどうして発生したかはしばらく謎だったが、前々回の勇者様が

「それは遺伝子獲得の突然変異だろう」

と説明して下さった(翻訳者注:第7話の補足12参照)。説明によると、カビやそれより小さな「イキモノ」は、短い時間で沢山「変異」というのを起こして、自然に進化するらしい。その変異で、法具しょくばい内部に巣食う性質と、法術を変化させるという性質を同時に獲得したのだろう、とのことだった。


同様のことが今回も起こったと考えると、辻褄はあう。辻褄は。


(某所員による補足9)

カビ事件で起こしたカビは、その対策の研究の為に世界中の研究所内で保管・繁殖させていた。同様の突然変異で、自然界の普通のカビが他の危険な性質を自然に獲得してしまった場合の対策を立てる参考のためだった。しかし、長年の研究のうちに、軍事利用の可能性も追究されるようになった。


邪神封印の前後こそ、世界の団結の為に戦争や紛争は一旦棚上げにする。紛争の一旦停止が勇者様たちの心証を良くすることが分かってからは、世界の暗黙の了解毎にすらなっている。しかし、自国の影響力を高めようとするのは大国の本能で、邪神封印が終わるといがみ合いが再開する。そういう訳で、地域覇権を目指す大国は軍事研究を行なっている。


当然ながら、複数国の連合で秘密裏の情報共有や人材交換があったり、スパイ活動があったりする。そこは国際政治の世界だから、原因の「カビ」を訪問研究所から持ち帰るために、ライバル同士が手を結ぶ事すらある。件のカビの場合だと、ナウロッパ最大の超大国が東の大国と秘密裏に共同研究している。これは法術研究の人間に周知の秘密だ。かく言う我が国も、ナウロッパの別の大国と手を握って、相手国からトップ研究員を派遣してもらい、この誤動作メカニズムを研究している。共同極秘研究には、仮想敵による軍事転用の可能性と、その対策もあり、人の事は言えない。


そういう事情だから、今回の誤動作事件も、どこかの国から「何か」が漏出したのではと、どの国も疑っている。その原因がなんらかのミスなのか、あるいはパートナー国の裏切りなのか、その両方なのかはどうでも良い。大切な事は、漏出の責任のみを他国になすりつけて、それほど危険なものを自国も開発していた事実から国民の目を背けさせる事だ。


運悪く、一番早く多く見つかった場所が、我が国の影響の及ぶ小国群で、我が国は色々批判されている。そして、これを理由に、我が国の研究を総て暴いて、研究成果を持ち帰ろうとしている国すらある。もしかしたら漏出があったかも知れないが、そうだとしたら、漏出を起こしたのは誰なのか? 誤動作研究室のメンバーとは考え難い。


我々が密かに怪しいとにらんでいるのは、ナウロッパの超大国だ。いち早くコーティングにようる応急対策を発表したが、原因となる「カビみたいな何か」について、あらかじめ多くの情報を持っていないと、この早さは説明し難い。となれば、東の大国で発生したのかも? (翻訳者注:第8話の補足27にもあるように、この見立ては見当はずれである)


(某所員による補足10)

虚数術と呼ばれる特殊な法術のうち、空間拡張を起こす法術を発動させるための触媒で、収納袋とも呼ばれる。


(某所員による補足11)

誤動作させた法具しょくばいの影響範囲にある他の法具しょくばいが、「感染」によって内容の異なる誤動作を起こしていると分かるのに時間がかかった。


不幸中の幸いは、これら一連の事件の結果、我が国が危険な何かを漏出したのではないかという疑問が下火になったことだ。同時に、コーティング対策が直ぐに効かなくなったことから、我々も超大国への疑いを捨てた。


(某所員による補足12)

異世界から来られて、すでに隠居している、ゴキブリ嫌いの人たちで、こう言っては難だが、用済みの人たちだ。どうせゴキブリ退治の旅にでも出たか、ゴキブリの見つかった日本大陸に嫌気が差したのか、そんなところだろう。


(某所員による補足13)

勇者様たちは、以前から

「ゴキブリのせいで危うく失敗するところあった」とか

「封印チームの誰かがゴキブリを連れて来てしまったのではありませんか?」とか

「巻き込まれが役に立つという迷信は捨てて下さい」

と仰っておられた。確かに『巻き込まれは宝』と教えは広く信じられているし、それがしもその口だったから、封印チームの誰かがこっそりゴキブリを連れて来ていておかしく無い。偶然の一致にしては、あまりに勇者様たちの行き先に鉢合わせしすぎなのだ。


ゴキブリのことは勇者様とひじり様のお二方だけが知っている、ということを、改めてみしめている。それは世界各国の上層部も同じだろう。この世界にゴキブリはおらず、その脅威を分かっていたものは居ないのだ。

『専門家の警告を軽視する政治家は国に混乱をもたらす』

とは、ひじり様が国の煮え切らない態度に対して放った言葉だが、確かにそうだ。研究者の端くれとして、それを支持せず、国からの予算が減らないように保身に走っていた自身を恥じる。


(某所員による補足14)

当時、その街の長屋に、勇者様とひじり様が偽名で滞在していたらしいことが判明した。封印を密かに監視していたらしい。おそらく封印チームに足を引っ張られたくなかったのだろう。その2人は、封印の少し後に長屋を引き払っている。となれば、彼らが邪神を追っていると考えるのが自然だ。たとい希望的観測であっても。


(某所員による補足15)

邪神が召喚したかも知れない者達は、今までの所、邪神の邪魔をしたような形跡はない。となれば、邪神が我々のシンクロ召喚術を邪魔すべく、次のシンクロ期に召喚を行なうのではないかと危惧された。


(某所員による補足16)

一回のシンクロ期に呼び出せるのは1組のみ。そのペアが、邪神の元に行ったら、人類の元に来なくなる。だから、この件に関して国から研究所に問い合わせがあった。問い合わせは我が国だけでなく、他の国の研究所にもあったようだ。


シンクロ術の性質から、行動の一致度以外に、偶然性もシンクロ度を高める。つまり、お互いが示し合わさない状態でのシンクロは、お互いを一部でも認識した「示し合わせ」よりシンクロ度が高い。しかし、これらの基準は、邪神が全く同じシンクロ術を使って召喚した場合には関係ない。その場合、異世界地球からとの配置が、シンクロ度を決めるのではないかと言われている。


この世界が異世界とシンクロする時、この世界は、異世界世界地球からみて太陽の反対側だ。従って、異世界の日本を対象にして召喚する場合、太陽を中心に対称になるのは、日本の裏側となる。それはこの世界では、北西大陸から少しずれて、間の大西洋(勇者様達はそう仰っている)となり、それならばと、北西大陸の宗主国が集まるナウロッパに召喚拠点が置かれている。本当は季節まで考慮すべきだが、幸いシンクロはこちらの夏になることが多いので、異世界の日本より高緯度のナウロッパに軸対称点がくる。軸対称という意味では、我が国もナウロッパに勝てないので、召喚で対立するのを諦めているし、それは東の大国も日本大陸も同じだ(翻訳者注:第10話の補足20参照)。


一説には、配置のシンクロ度よりも異世界地球からの距離が問題だという話もあるが、幸い、シンクロは常にナウロッパの真昼ちょっと過ぎ(異世界日本の真昼ちょっと前)に起こるので、距離が一番近い所が軸対称度の一番高い所になる。


(某所員による補足17)

邪神が我々よりシンクロ度の高い召喚を狙って、それに成功させたとは考えられ辛いので、召喚術の誤作動が可能性としてあげられている。しかし、シンクロ期でもない現在、召喚術の検証が出来ないし、簡易実験でもそのようなバグは見つかっていない。真相は闇だ。


(某所員による補足18)

法具しょくばいの中に、それを使うと、たといその時は正常に機能しても、術師自身が「感染」して法術を使えなくなる品が出始めたためだ。それは、あっという間に古いタイプを駆逐した。しかも、その状態で法術を使おうとすると、バグを起こすだけでなく、影響範囲にある人や法具しょくばいすら高い確率で感染したから、上流階級は魔法が使えなくなってしまった(翻訳者注:第8話の補足27参照)。


(某所員による補足19)

それが赤ん坊の祝福の儀式の問題だったことが判明したのはそれがしの引退したずっとあとのことだ。


(某所員による補足20)

この時はじめて、それがしは法術の誤作動が邪神によるものであることを悟ったのである(翻訳者注:第5話の補足1ならびに第7話の補足1参照)。

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