第98話
銀色の円盾だった。
「これは鏡盾:アテナ。この盾で防いだ魔法やスキルを跳ね返す盾だ。そこまで大きな盾じゃないから腕に着けて戦えるよ。他の神器もあるからどんどん人間離れしていくね。でもそれくらいじゃないとならないんだよ。人間の中での最強なんてたかが知れてる。君はそういう者を相手にしなきゃならなくなるからね。」
「ありがたく頂戴するよ。ヘラクレスもあるし、鉄壁だな。」
「そうだね。でも過信はよくない。強いアイテムだけじゃなくて自分だけでも戦えるほど強くなってもらわないと。神器だけに頼る戦い方はよして欲しいな。」
「もとよりそのつもりだよ。今のところアルテミスは重用してるけど、無きゃ無いでなんとかできるような相手しかいないんだけどさ。」
「まぁそうだろうね。なんなら君一人で国1つ簡単に落とせるくらいの戦力はすでにあるんだから。慢心せずにこれからもがんばって。」
そう言うとセルティエルは消えていった。
「あ〜終わった〜!!」
ダンジョンをでて湖にいるシラナに報告しようと呼び出すと
「ご主人様!大変じゃ!これを見てみぃ。」
「なにこれ?」
中で魔力が渦を巻く、ガラスでてきたような宝玉がシラナから渡された。
「ここの湖底のヌシが先ほどコレに変わったのだ!」
と言った途端にその宝玉がマァトに取り込まれた。
[スキル:空間魔法を手に入れました。]
「あら。ご主人様に入ってしまったのぉ。お体はなんともないかの?」
「ありがとう。毎度のことだ。気にしなくて大丈夫。」
「そうかえ。それならばよい。それで試練は?」
「突破したよ。あと3つの試練がある。これからも頼むね。」
「あと3つだけではない。これからも妾の命ある限り終身雇用でお願いしたいものだの。」
「終身雇用ね。嫌がられる雇用主にならないように気をつけるよ。」
「何か用がある時は呼んでくださいまし。妾はここの水が合うようじゃ。住処にしようかと思う。」
「わかった。また頼む。」
エルレインの家に転移した頃には空に夕陽が強く輝く時間だった。
「おかえり。」
「ただいま。」
このやり取りにとんでもない多幸感を感じる。
帰る場所がある、迎えてくれる人がいる。それらの安心感は代え難い。
「ようやく終わったよ。なんとか学校始まるのには間に合いそうだね。」
「ギリギリだけどね。」
翌朝、こっちでの用事が終わった旨をエルレインに告げて、学校に戻ることを伝えた。
「ディケ、ここまでになった家だから気にせず好きに生きるといい。私は司祭として1からやり直すさ。近くに寄ることがあれば顔を出してくれ。」
「えぇ。エル兄さんもお体を大切にね。私はマァ君のお嫁さんになる予定だから今度はご祝儀待ってるわね。」
「ちょっと!気が早いよ。まぁ…でもエル兄さん体に気をつけて。正直、テミス家にいい思い出はないけど、兄さん個人としては尊敬してる。何かあれば助けたいと思う。必要な時は呼んで欲しい。」
「ありがとう。そんなことが無いこと祈ってるよ。」
エルレインの家を後にして学校へ転移した。
「帰ってきちゃったわね。」
「何か悪いみたい。」
「だって、あっちならマァ君を独り占めできたんだもん。」
「ありがたいけど、それハルに言ったら…」
「私に言ったら何なの?」
「あ…ただいま。」
「おかえり。たまたま食堂に向かって歩いてたら2人がいるんだもの。それにディケからちょくちょく話は聞いてたから知ってるわよ。今度は私とデートしてもらわなくっちゃね!」
「そうだね。楽しみにしてるよ。ハルはこれから朝食なの?」
「そうよ。2人は?」
「私達はもう済ませてきたわよ。でもどうせなら一緒に行こう」
「そうだね。学校始まるの明日だし少しでもゆっくりしよう。」
明日から6級が始まる。
専門分野の上級学校として6、7級が存在する。
最初はオリエンテーションでどの分野に入るか決めて、それぞれの進級課題、卒業課題をクリアするために精進する。
俺とハルは弓術、ディケは回復術の学部に入った。
そこから2年日々精進しながら平穏に過ごした。
たまにデートしたり、休みには学園都市をでて隣の貿易都市へ出かけたこともあった。
ディケをハルのご両親に会わせたこともあった。
そこではハル、ジャンヌ、ディケの3人で女子会をしたりもしていた。
その時はジャンヌの目線が少し生暖かいものだったのを覚えている。
そして卒業式を迎えた。
「長かったし、色々あったけど、振り返るとあっという間に卒業ね。」
「そうだね。これからは冒険者として各地を見て回ろう。」
「そうね。これからが楽しみね。」
式典の後は卒業生のパーティーが用意されていた。
もちろんディケとハルはそれぞれに人だかりができていて、卒業後の各種勧誘が絶えなかったという。
「毎回なんなのっ!こういう会がある度に!」
「お疲れ様。」
「今まで何度も断ってるのに皆さん諦めないのよね。」
「これが最後のチャンスだもんね。どうにかして美人さんとご一緒できないか策を巡らせるんだよ。」
「ありがとね。そうやって褒めてくれるマァ君だから私達はキレイでいる努力ができるのかもね。」
「努力?」
「そうよ!マァト。放っておいて美人はできないの!私もディケもあなたの見えないところでいっぱい努力してるのよ。」
「それならなんかご褒美ないといけないね。」
「そうね。」「もちろんよ!」
アイテムボックスから2人にプレゼントを手渡した。




