第95話
プライドを撃破すると次の層への階段が現れる。
肉体的にはまだまだ疲れていないはずなのだが、精神疲労がかなりきているようだ。
安全地帯で少し休憩をとる。
軽く食事をとり落ち着いたところで出発した。
もう途中のモンスターは代わり映えがないが、ストレス発散には丁度いい。
ボス部屋に着くと予想通り次はグラトニーだった。
「お前も模造体なんだな…」
ケルベロスであるグラトニーは高い機動力と頭が3つあることによる並列思考や視界の広さが特徴だ。
目が合うと頭の一つが火球を吐いてきた。
「おぉっと。ずいぶんなご挨拶だな。」
違う頭からは土魔法で岩の槍が飛んでくる。
立ち位置を細かく変えながら火球、岩、風球が目まぐるしく飛んできて避けるのに一苦労している。
「ん?待てよ…避けなくても…」
飛んできた火球を翡翠で切り払うと真っ二つになって消えてしまった。ミスリル製の強みが出ている。
「これならいけるぞ!」
魔法の乱発してきているが翡翠で切り払いながら猛スピードでグラトニー(模造体)に向かっていく。
「オラオラオラオラオラオラオラオラ!」
剣の間合いまで近づくと距離を取ろうとしてグッと身をかがめて飛び出した。それに気付けたから俺も飛び上がる。
「せっかく近付いたのに離されちゃあもったいない。」
空中で噛みつこうと3つの頭が交互に迫ってくる。
どうしても顔から斬りつけるのは抵抗があるな…
上から噛みつきにきた頭を躱して回転した勢いを使って頭にかかと落としをする。
激しく地面に叩きつけられて怯んでいるところにそのまま落下しながら一太刀いれる。落差の勢いがついたからか真っ二つになった。
「よしっ。」
模造体は消失し次の階層への階段が現れた。
「ここを降りたら今日は戻ろう。」
ダンジョンの入口の湖に転移するとそこにはシラナがいた。
「ご主人様よ、いかがだったかのぉ?」
「今日は心が疲れたから途中でやめてきた。たぶん明日はラーストとシラナと戦うことになるんだと思う。」
「なんじゃ!?妾と戦うとな?」
「あぁ。20層に入った時の仲間とそれぞれがボス部屋にいて一体ずつ戦ってきた。グリード、プライド、グラトニーを攻略したけど、仲間に剣を向けるのに疲れた。本物じゃないのはわかってるけど、心が目の前の姿の敵を敵と思えなくするんだよ。」
「確かに仲間に剣を向けるのはよっぽどのことじゃ。じゃが、見た目を似せてくる魔法やスキルを持つものもおるじゃろう。心を乱されるのは仕方ないが敵と仲間の違いはわかっていてほしいのぉ。見た目にだまされるな!妾も神獣らも命を懸けてご主人様の配下じゃ。仲間じゃ。それを忘れんでほしいものじゃ。」
「ありがとう。少しスッとしたよ。それでも手応えに残る気持ち悪さは拭えないんだよな。」
「慣れる必要はないが、割り切るより他にないな。」
「あぁ。今日休んでスッキリすれば大丈夫。また明日もがんばるよ。」
「少しでも安らかに居られるようにお祈りしてるよ」
エルレインの家に着いたのは夕食の準備する少し前の頃だった。
「あら。マァ君今日は早かったのね。もしかしてもう攻略終わったの?」
「いやいや、まだ終わってないんだ。ちょっと疲れたから今日は早めに切り上げたんだ。」
「マァ君がダンジョンで疲れるなんて珍しいね。厄介なダンジョンなの?」
「うん。相当ね。偽物なんだけど、仲間に剣を向けなきゃならないんだよね。」
「う〜ん。それは確かに厄介ね。私やハルを切らなきゃならないってことよね?」
「あ〜ダンジョンに入ったメンバーだからディケとハル、ゲイル、ビークは出てこないと思う。」
「それにしても敵と分かっていても仲間に剣を向けるのは疲れてしまうわね。」
そう言うとディケはそっと抱きしめてくれた。
「大丈夫。あなたの仲間はそんな簡単に敵にはならない。あなたを1人にはさせない。もし1人になるって言っても私が1人にさせてあげないんだから。だから安心して戦ってきて。疲れたら戻っておいで。私もハルもどちらもあなたの帰ってくる場所なのだから。」
「ありがとう。頭ではわかっていても見た目が仲間だと、ちょっと…ね。ディケにもシラナにも優しくしてもらったから、一晩寝れば元気になるさ。明日は切り替えてサクッと終わらせてくるよ!」
翌朝起きると目の前にディケの顔が…
「ちょっ!ディケ!なんでここに!?」
「へへへ。マァ君が少しでも元気になったかなぁって気になって早起きしちゃったから寝顔見に来たの。」
「気にかけてくれて、俺を支えてくれてありがとう。今ので元気出たよ」
「美味しい夕食作って待ってるからちゃんと帰ってきてね。待ってる。」
「うん。行ってきます。」
さぁ引き締めて攻略だ。今日で終わらせてやる!




