第91話
「お別れな雰囲気だしてるけど、試練ってこれで終わりでいいの?ただお話しただけじゃないか。」
「そうだね。だって君は今までいっぱい頑張って6つの大罪スキルを解放させてきたじゃない。だから試練っていうかご褒美のスキルなんだよ。」
「じゃあなんで試練なんて言ったんだ?」
「あ〜あれね。雰囲気だよ。タダであげるにしても、君の中から観てたから心は見えてるにしても最終確認はしておかないとね。この力はとっても強力な力だから使い方によっては世界が変わってしまうくらいなんだよ。」
「時間の操作だもんな…」
「これから君は元に戻る。どう動けばいいかわかるね?」
「あぁ。ありがとう。今度は神獣化した時に会えるのかな?楽しみにしてるよ。」
「その時が早く来ることを祈ってるよ。」
光に包まれると目の前にはディケの亡骸と血の海が広がっている。
これからすることがわかっていても目の前の現実に落胆は隠せない。
《時間逆行》
[代償の提示を求めます。]
「何がいいんだ?例えば?」
[出せるものを提示してください。]
「俺のレベルを10くらい差し出すのならどうだ?」
[対象の時間を10分戻せますが、死を乗り越えるには足りません。]
「それなら何個かスキルを持っていけ!ん〜最近もらったスキル合成、統制、騙し討ち、詐術、多腕、瞬身、隠身。これだけだせばどうだ!」
[承認します。レベルとスキルを代償に死を乗り越えて時間を逆行します。]
「ディケ!ディケ!」
まだ人形のように止まったままの状態だ。
あの魔道具の支配下の時間に戻ったのだろう。
あれは別人格を植え付ける呪いの状態だからこれでいけるっ!
《状態異常解除》
「ディケ!わかるか!?」
「……っマァ君?だね。あぁ…よかった。私、私、マァ君に酷いことを…。ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
目に光が宿って元のディケに戻ったようだ。思わず抱きしめる。その温もりを、存在をしっかりと確認するように。
「いいよ。本心じゃなくて魔道具のせいであぁなっただけだから気にしてないよ。ちゃんといつものディケが戻ってきたからそれだけで十分だよ。」
「こんなに情熱的な抱擁されるとは…大変だったけど、悪くはなかったのかしら?父様にマァ君と結婚するからテミス家のためにはできないって伝えた後に部屋に戻るあたりから記憶が曖昧で、マァ君に酷いことを言った記憶とかがぽつりぽつりとある感じ。」
「たぶんその曖昧なあたりで魔道具を使われたんだね。あ〜本当によかった。ディケが無事で。さぁ!これからはディケをこんな目にあわせたお返しをしないとな。」
「マァ君、あの契約書があるから直接的なのはどきないんじゃない?」
「もちろん。だから反テミス派とさらにもう一つ賭けにでるのさ。そろそろ着く頃だよ。」
ゲイルから念話がきた。
「例の方お連れしたぞ。どこに行けば良いかな?」
「俺の位置がわかるならここに連れてきてくれ。」
「今、参るぞ。」
ガシャーン!!
ガラスを突き破ってゲイルと共にエルレインが来た。
「エル兄さん?」
「そ!賭けに出るってやつね。」
「マァト!だいたいのあらましは聞いた。我が家ながら愚かだとこき下ろすしかない。ディケにも大変な迷惑がかかったようだな。兄として、テミス家として謝罪させてくれ。」
「私はもう大丈夫だから気にしないで。」
「で、私に委ねたい書類があるんだな。まずはそれに目を通してから話をさせてもらおう。」
「これだ。」
エルレインにドークスの部屋で見つけた各種証拠書類を見せた。
「これは…もう言い逃れはできないな。私もテミス家ながら反テミス派に入らざるを得ないな。」
「そう言ってくれると信じていたよ。エル兄さん!すでに別な資料を渡してあるからたぶん今日か明日には緊急動議が出されるはずだよ。そこでエル兄さんからも追加で発言してもらえればドークスとファルノールの悪事は白日の下にさらされるだろうさ。」
「あぁ。そうしよう。」
「あ、そうだ。この書類はディケの部屋でたまたまぶちまけちゃっただけだから…ね。」
「あぁ。察したよ。」
その日の夕方に緊急議会が開かれるとのお触れが各地に伝えられた。
市中にもその噂はまたたく間に広がって、何が起きるのか色々な憶測のもとあることないこと話が伝わっていった。
そして議会においては今までのファルノールやドークスの悪事が糾弾された。
糾弾の声が満ち溢れたところでエルレインが立ち上がった。
「我が家ながら不徳の致すところとしか言う他ないが、様々な証拠資料を見ても明らかだ。長く教主をつないできた家系の一員だが、ここで一度、開けた選挙をもって教主の再選を願いたい!」
選挙の結果、テミス家は教主の座を失い、内政に関わる影響力も失った。
また明日以降の議会と裁判によってテミス家の今後が決まるのだという。
「エル兄さんが来てくれて本当によかったよ。」
「エルフの奴隷売買の書類がなかったら信用なんてしなかったが、ドークス兄さんの名があった以上、色々と疑わないとならない要素が思い出されたからな。」
「テミス家はどうなるの?」
「まぁ、取り潰しは避けられんだろう。あの2人だけの悪事ではなく教主の座を維持するために脈々と受け継がれた悪行なのだからな。それもやむ無しだ。悪行は神に懺悔し、贖罪せねばなるまい。」
「そうか…」
「家の外の人間であるお前が悔いることはない。ましてやディケは被害者だ。」
「2人を追いやったことに後悔は全くないが、エル兄さんや母様達の残った人々には少なからず…ね。」
「そう思うならディケを幸せにしてやってくれ。これは兄からの頼みだ。」
「もちろんだ!任せてくれ。」




