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七罪の裁定者  作者: まーるぽー
第4章・中立学園都市国家・ゴンドヴィル後編

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第90話

目の前の光景に思考が停止していた。

ディケにかけよって声をかけるも、すでに事切れているため反応はない。


呆然としているところにドークスが体当たりをして俺が持っていた資料の一部を奪っていった。


「無理な支配力の行使は人格の破壊を早めます。重ねがけや、必要以上に使用しないでください。指示の誤認や無関係な行動をすることがあります。だと!俺は悪くない。俺は悪くない。この魔道具が使えないせいだ!俺は悪くないんだ!」


「お前が殺したんだよ。ドークス。お前の欲望のせいでディケが巻き込まれた。」


違う。俺のせいだ。心の奥底では俺が力をだせば何とかなるって慢心があったんだ。最初からディケについていればなんてことはなかったはずだ。俺がディケを殺したんだ。こんなにも自分が憎らしいことがあっただろうか。怒りで震えるってのを初めて体験した。

後で悔やんだってディケは返ってこない。

彼女は死んだんだ。俺のせいで死んだんだ。

守れなかった。自分に対する怒りが止まらない。


[他者の為に血の涙が出るほどの怒りを得ることができました。スキル:憤怒を解放します。]


憤怒はあらゆる状態異常、呪い、デバフなんでも解除できる。成長すれば状態異常にかからなくなったり魔法すべてに耐性を持つこともできるらしい。


今更遅いんだよ…これがあればディケを救えたはずなのに…

あぁ…また驕りだ。

何にしてもディケを殺したのは俺だ。


「ドークス。この書類は世に知らしめる。この景色を見ても保身に走るなら俺はお前を止めないが、俺も止まらない。どんな手を使ったとしても俺はお前を許すことはない。」


「俺はこの国のトップになるんだ。この国は俺のものなんだ。そのために俺は産まれてきたんだから。マァトごときが俺を止められると思うなよ。何としてでもこの国は俺のものにするんだ。」

結局ドークスは魔導具の取説の一部だけをもってフラフラになりながら走ってディケの部屋を後にした。


[大罪スキルを6つ揃えました。最後のスキルを授与するための試練を受けてもらうためにこちらに来てもらう。]


「ここは?」

「ここは君の精神世界。要は君の心の中だ。」

「心の中?」

「そう。私はずっと君を見てきた。何なら君の記憶の中の前世も含めてね。」

「アンタは誰だ?」

「あぁ。自己紹介が遅れたね。私は嫉妬のスキルだ。厳密には七つの大罪のジョブの集合体だ。嫉妬である私以外は解放されたからね。」

「それで今このタイミングで試練を受ける意味は?見てたなら今の状況わかるだろ!とってもじゃないが今そんな時じゃない!」

「いや、今なんだよ。私の能力は時間の権能。」

「時間ってなんだよ!」

「そのままさ。時間を早めたり、止めたり、戻したり。」

「時間を戻す?ってことは死んだことをなかったことにできるのか?」

「理論上は可能だ。他のスキルと違って嫉妬のスキルには代償が必要だ。」

「なんでもいい!ディケが返ってくるなら何でも捧げてやるよ!」

「うん。上々だ。では試練を始めよう。」

「よろしく頼む。」


「まず最初に、君が考えていたテミス家に潜んでいたらこんなことが起きなかったと考えていたが、実は同じ未来に収束するようになっているんだ。ハデスを使って侵入し、付き添っていてもディケは死ぬ未来を辿るんだよ。君のスキをついて魔道具は発動する。そして自我を取り戻そうとする君の働きかけでディケの人格が揺らいで先ほどのようにドークスが重ねがけをして発狂してしまうんだ。むしろそっちの方が厳しい現実を突きつけることになるかもしれないなぁ…」

「そうだったのか…」

「まずは、君はドークスをどうするつもりだい?」

「どうもこうもないさ。法があるなら法で裁かれるべきだ。必要なら私刑はその後でいい。法の抜け道を通るなら私刑一択だね。」

「じゃあその法で裁かれても君の満足いく裁きがくだらなかった時はどうする?」

「よほどのことじゃない限りはそれで終わりかな。少しは嫌がらせはするけど、罰を受けたのならそこまでさ。改心しないのならいつかまた裁かれる時がくるさ。悪事がのさばってていい世界には俺がさせない。」

「じゃあその悪事やら悪意にもそれぞれの正義があったら君はどう受け取るんだい?」

「それなら俺にも正義があるってことだよな?俺は俺の信じる正義を貫くだけだ。常に善良であろうとは思わないけど、俺の思う正義は貫きたい。」

「ほんっとに君は真っすぐだね。まぁなんとなく想像はついてたけどさ。」

「この問答が試練か?」

「そうだよ。私が君に渡していいと思えれば試練終了さ。」

「で?」

「う〜ん…君は悪用するような人とは思ってないから渡していいと思っている。だからこそ代償について話ししておくね。今回のように死を乗り越えて時間を巻き戻すとか、逆に時を送って相手に死をまたがせるとか失った腕を取り戻すために時間を操作しようとする時は相応の代償が必要となる。ここから戻ったら使えるようになっているけど、勢いまかせで使っていいような力ではないことは理解してね。ささげる代償も含めて一度立ち止まって考えてほしい。」

「わかった。試練は合格なんだな?」

「うん。おめでとう。これで七つの大罪すべてがそろったね。これからの人生に幸多からんことを願っているよ。」



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