第77話
それから学校が始まるまでの数日間は怠けて、だらけて過ごした。
もしかしたら怠惰のスキルが発現するかなと少し期待しつつ。
でも何も起こらなかった。ただ無為にだらけて過ごして終わってしまった。
後期の開始が近づくにつれて生徒は徐々に増えてきた。
ハルはギリギリ前日に戻ってきたようだ。
その間、スティアとフラウは一心不乱に魔道具製作に打ち込んでいた。
姉さん含めて5人がしっかりそろったのは始業前日の夕食だった。
「二人ともあれからどうなった?試作品まではいった?」
「「もちろん!」」
「スティアみんなに見せてあげましょ!私達の努力の結晶を。」
テーブルの上にジャラジャラと広げた。
「まずはそれぞれイヤリングを手に取って。そして魔石をもって魔力を込めるの。割れやすいように亀裂が入ってるから色が変わったら割ってそれぞれに渡してちょうだい。」
みんなそれぞれ色が違うようだ。
「色に意味はないから気にしないで。それじゃあ自分の色以外の魔石をイヤリングに取り付けて。そして魔石をトントンって2回叩くの。」
ブブブブブ
自分でしか分からない程度だが揺れているのがはっきり分かる。
「震えたらまた魔石に触って。そしたら開通するはずよ。」
「「あー。」」
みんな一斉に同じことをしかも目の前で言うから使えているのかわからない。
「ちょっと!みんな同じことを、しかもそれぞれの近くでやっても効果がわからないでしょ!」
それぞれ距離をとって小声で話ししても聞こえる。実験は成功だ。
前世で言えばほぼ骨伝導イヤホンだ。
「すごいよフラウ!」
「僕もかなり手伝ったんだけどな〜」
「スティアもお疲れさま。」
「これでみんなバラバラの部屋でも寂しくないわね。」
今は目の届くような距離だったからいいけど、本当に寮の部屋にいても大丈夫なのだろうか…
「ねぇフラウ。今はこの距離だったからいいけど、お部屋に戻っても大丈夫なのかしら?」
「ディケさんの心配はごもっともだけど、杞憂ね。ちゃんと実験したから大丈夫。寮のお部屋だろうと壁があってもしっかり聞こえるからね」
「これでもまだ試作品なの?ここまでいけば完成品といえそうな気がするんだけど」
「ありがとうマァト。いわば最終チェックみたいなところよ。何日か使って致命的な不具合がなければ完成と言えるわ。そしたら先生にレポート提出して終わり。そしたら少し早いけど5級に昇級決定よ。」
「おっ!やったね!製作系の人達は実績で昇級が決まるんだね。それでスティアは?」
「マァト…僕の作品を知ってるだろ?作るのはさっさと終わらせてあるから後はレポートだけの状態だよ。」
「まだ半期残ってるけどどうするの?」
「多少は授業にはでるけど、2人で龍神国と聖教国へ行って魔道具や鍛冶製品の研究というか見聞を広げる研修という名の旅行してくる予定。」
「まぁまぁ!聖教国のことなら色々教えられるから行く予定している所あるならアドバイスできるわ。」
「ディケさんに教わるつもりだった。よろしくお願いします!」
「…そろそろ敬語やめてくれない?級が違ってても、もう私にも慣れたかなって。だから呼び捨てにして、敬語ももうなしにしてくれない?その方が私もやりやすいし。」
「じゃ、じゃあ改めてよろしくディケ。」
「うん!あ、ハルもスティアもだからね!」
その晩
〜ディケの部屋〜
ブブブブブブ
「あら!あなたから通信がくるとは思わなかったわ。」
「わたしもよ。マァトとお話しようと思ったけど、まずはあなたとお話しなければと思ってね。」
「マァ君からチラッと聞いたわよ。あなた達正式にお付き合いすることになったんでしょ?おめでとう。かわいい弟をよろしくね。」
「あなたはそれでいいの?」
「いいかと聞かれると難しいわね。私だって弟としてというより人として、1人の異性として彼を見ているもの。彼が幸せならばそれでいいけど、その人が自分であればなぁという思いもある。」
「私はこのまま彼の伴侶になりたいと思ってるわ。私だってあなたの気持ちを知っているのにこのまま自分だけってのもイヤなの。彼がちゃんと平等に想ってくれるならあなたと2人で彼のそばにいる未来もあってもいいと思うの。」
「ハルからそんな提案してくるとは思わなかった。実は2番目でもいいからって話はマァ君にしてたんだ。でもそれはあなたが嫌じゃなければってところもあったんだけど、ここまでくればどんどん進めようかしら。」
「奇遇ね。以前からのあなたの行動や視線で気付いてないのはたぶんマァトだけだしね。私からも今度話してみるわ。」
「ハル…ありがとう。これからもよろしくね。」
「えぇ。フラウにも感謝しなきゃね。こんな話を部屋でちゃんと2人でできるんだもの。」
「たしかに。使用感も含めて私から伝えておくわ。聖教国のこともあるし。」
「わかったわ。よろしくね。」
後日スティアとフラウは完成レポートを提出し、無事来期には5級にあがるのが確約された。それと同時に残り半期を自由に謳歌する権利も得たのだった。




