第76話
フラウの研究室に入ったのは初めてだ。
様々な材料や書物が整然と並んでいる。性格がでるんだなぁ…
「そういえばダン実で先生が使っていたっていう通信器具とフラウが作ろうとしているのとではどう違うの?連絡とってたような事は言ってたけどさ。」
「あれはね、魔力を流して受け取る側に現在の状況を知らせる魔道具で、決められた事しかやりとりできないの。こんな感じに。」
四角い棒状の物を持ち出して、魔力を込めると元々書いてある絵柄が浮かび上がる。
数字とモンスターの絵、◯や✕の記号、剣がぶつかっている様な絵柄もある。
「これで、もう片方のクラスと連絡取っていたんだよ。階層と◯を光らせればその階にいて無事です。みたいに組み合わせと意味をあらかじめ決めておけば大体なんとかなるのよ。」
「でもフラウの作ってるのはこういうのじゃなくてちゃんとお互い話ができるようにするんだもんね?」
「そうよ。みんなと話ができるようにできたらよかったけど、現実味がないのよね…」
「そもそもこれってどういう原理で通信できてるの?」
「イヤリング型の魔石に音魔法とそれぞれを個体認識して組になるよう加工するの。あとは周りの金属部分の加工で遠距離でも使用可能にしてるの。」
「なんか…よくわかんなかったけど、魔石同士が組になって話ができるってことでいいの?」
「まぁそういうことね。」
「それって例えば都度、別の魔石をセットして同時じゃなくても4人それぞれと会話できたりしないのかな?」
「あ!気づかなかった。みんなで話せるようにする事に集中しすぎてた。できるとは思うけど、その分魔石が小さくなることによる聞こえの悪さか距離に影響してくるかもな…スティアどう思う?」
「う〜ん…フラウの言う通り音の伝わりが悪くなりそうだなぁ。そして魔石が小さい分イヤリング部分の加工で距離を伸ばさないとならないけど、それには限度がある気がするな…それなら取付、取り外しを自由にして誰かからの通信が来たらその魔石自体が光ったり何か知らせてくれるようにしたらどうかな?」
「それならいけそう!やってみよう!マァト、スティアありがとう。」
早く帰ってきた甲斐があったようだ。
集中してる2人に見学の礼を言って一足先に研究室を後にした。
思ったより時間がかかっていたのか夕食の時間になっていた。食堂に入ると後ろから凄い勢いの足音がしてきた
ドドドドドドドドドドドド…
「マァ〜あ〜くぅ〜ん!!」
ドンッ!
「あ!姉さん。もう戻ってたんだ?」
「マァ君に会いたくてね。」
「ありがとう。」
「ウソ。本当は家に居ていたくなくて早くこっちに戻ってきたの。」
「何かあったの?」
「うん。学校を卒業したらすぐ結婚させられそうなの。顔合わせとか言ってきたから逃げてきたの。」
「テミス家は家柄がいいから政治的な繋がりのために結婚させられるってことだよね?」
「そう。父様の地盤がためのために私の人生が利用されるってこと。ほんっとうに嫌!何か前より焦ってる感じなのよね。」
「焦って姉さんを使って取り込まないといけないくらい追い詰められてるのかな?」
「家にいる時にはわからなかったけど、恐らくそういうことなんだと思うわ。マァ君私をお嫁さんにしてくれない?もう家族じゃないからいけるんじゃない?」
「まぁ家族の縁は切れてるから結婚しても問題はないだろうね…それにしても学校卒業したらすぐってもうそんなに時間がないね。お嫁さんにできるかどうかはわからないけど、俺と冒険者になる?俺はもう帰る家もないからすぐに旅に出て世界各地を回る生活をしようと思ってるよ。」
「え〜!そこは男らしくビシッと俺の嫁になってついてこいって言ってよ〜」
「姉さんのことは人として大好きだしとっても大切にしたいと思ってる。キレイな人だとも思うよ。もしそうなったなら自慢のお嫁さんって言えると思う。でも俺には今恋人がいるからお嫁さんってのは…」
「え?別にお嫁さんは1人じゃないといけないことないじゃない!そこまで言ってくれるのなら1人と言わず、私も娶ってよ〜……っていうか、恋人って話聞いてないんだけど!ハルなんでしょ?まぁ今更ではあるけど、嫉妬しちゃうな〜」
「そうだよ。今更か…そう見えてたんだね。でも姉さんの事も大切なのは本当だよ。だから困ってるなら助けたいんだ。それが家に反抗することであっても、俺はそれ以上に姉さんが大切だよ。それで行く当てがなくなるなら一緒に旅に出よう。」
「ありがとう。私愛されてるなぁ…でもそれ、ハルは知ってるの?後で聞いて喧嘩したりしないでよ?」
「旅の仲間は多い方が楽しいだろうから大丈夫じゃないかな?」
「本当にぃ?後で揉めても知らないわよ。もう私を誘った言質はとったからね!私、卒業すると同時に家から逃げる。2番目でもいいからお嫁さんにするのも考えておいて!」
「率先して2番目って…もしそうだとしても姉さんはそれでいいの?」
「マァ君は2番目だとしても私をちゃんと見てくれるって知ってるから心配してないよ。」
「それについてはもう少し考えさせて。ちゃんと答えを出すから。」
食事を終えて寮に戻る。
姉さんとの未来か…
本当にいい人だし、俺にはもったいない人だ。テミス家に害を成す訳じゃないからいいとは思うけど、いつもの冗談めいた感じとは違うんだよな…
ハルが学校に来たらしっかり話そう。




