第74話
「どこから話したもんかな…」
「そんな壮大な話なの?」
「ハルだから話すけど、この話はスティアにもしていないことを、姉さんですら知らないこの話は他言無用で頼むね。」
「わかった」
「今までの生い立ちについては前に話したと思うんだけど、実はその話にはさらに前の話があるんだ。」
「さらに前?生まれる前ってこと?」
「まぁそうなるかな。俺は前世の記憶がはっきりとあるんだ。言い換えると違う世界から今のマァトの体に転生したんだ。前世で死んだはずなのに目が覚めるとマァトとして産まれてきたんだ。」
「死んだのに産まれてきた?なんか理解が追いつかないけど、違う世界から来たってことなのね?」
「そう。そこでは魔法もないし、モンスターもダンジョンもない世界だよ。魔法がない分、科学が進歩してここにはない色々なものがあったよ。例えば…馬のいらない馬車のようなものとか、遠くの人とお話ができるものとか、大勢の人が一度に空を渡って移動する乗り物とかね。あげればキリがないほどたくさんの物があったよ。」
「遠くの人とお話ってフラウが試作してるってやつだ!」
「そう。前世ではたくさんの人がその道具を持っていたよ。電話といってあちこちでみんなが使っていた。逆に魔法なんかは本の中でのおとぎ話のようなものだった。」
「違う世界があるということ自体が理解の範疇を超えるのだけど、そういうものがあるということね。……ってあなた今何歳なの?」
「13だけど?」
「いや、そうじゃなくて前世も生きていたなら合わせていくつって聞いてるの。」
「あぁ。んと前世は28で死んだから合わせて41歳ってことになるのかな…」
「ニンゲン族なら13と41だとかなり変わるけど、エルフから見ればそんなの誤差の範囲ね。少しオトナっぽいとは最初っから思ってたけどそれが理由なのね。」
「たしかにそこらへんの13歳よりはしっかりしてるんじゃないかな?」
「そこらへんの13歳どころか学校卒業する年齢の子らよりずっとオトナよ。」
「まぁ、それで前世の世界では歴史の教科書にジャンヌ・ダルクという人がでてくるんだよね…」
「お母様もそうなの!?」
「そうみたい。でも俺のいた頃よりも数百年昔の時代だから俺の言ってた科学の進歩はそれ程ではなかったと思う。」
「だからお母様はあまり昔のことをお話にならないんだわ。」
「俺はその異世界からの転生のことと、七つの大罪って俺のジョブについてお話してきたんだ。その七つの大罪ってのも前世にあった宗教の聖書に書かれていることだったからさ。」
「お母様は何か知ってたの?」
「いや、その聖書に書いてあることくらいで、俺のジョブについては全然さ。」
「お母様も違う世界から来てたなんて!後でお話しないとならないわ!本当に今まで大変だったでしょう?だって言葉の通じない国に1人取り残されたようなものよね?よくここまでがんばったわ。」
向かいのソファに掛けていたハルが俺の隣に来て抱きしめた。強く強く。
「あなたには頼りなく見えるかもしれないけれど、私はあなたの隣に立っていたいと本当に思うの。だから些細なことでも構わないから頼ってほしいな。力になれなくても話を聞くくらいならできるわ。話するだけで楽になることもあるでしょう?」
「ありがとう。ハル。俺さ、ハルと一緒にいたいよ。できるだけずっと一緒に。エルフだから俺よりずっと長生きするだろうし、俺の方が早く老化してヨボヨボの爺さんになってしまうんだけど、それでも俺と一緒にいてくれるか?」
「ええ。あなたと一緒にいたいと思ってる。」
「いきなり結婚とは言えないけど、恋人としてよろしく頼むね。」
「ええ。」
パッと離すと、横に座ったまま顔をのぞきながら
「もう秘密や隠し事はない?」
「ないよ。これで全部。本当に洗いざらい晒したよ。」
「本当かしら?」
「自覚してる範囲ではもう隠していないよ?」
「無自覚で隠してる方が余計にたちが悪いわよ。」
「これからもちゃんと話す。俺にはハルが大切な人だからすべてを知っていてほしい。」
「ありがとう。これからもよろしくね。」
翌日の朝食後にジャンヌ様が訪ねてきた。
「昨日の今日でもう進んだのね!ビックリしちゃったわ!」
ニヤニヤしながらこちらを見ている。ハルからおおよその話を聞いたのだろう。
「俺もビックリしてます。流れといいますか…」
「我が子の幸せを祈るのが親の務めだからこれからは間違った道に行かないこと見守るだけよ。」
「俺もそうならないように精進します。」
「お幸せにね〜」
颯爽と去っていった。
さてあと少しの夏休み獣人自治区に行って帰ってこれるだろうか…と考えながら歩いていると。宰相さんと出会った。
「あっ!こんにちは!宰相さん。聞きたいんですがお時間よろしいですか?」
「マァト殿!少しならば。」
「ありがとうございます。夏休みの期間が残り10日程なのですが、獣人自治区へ行って色々伝承やら調べて帰って学校へ行く準備まで余裕あるでしょうか?」
「う〜ん…ギリギリか下手すれば足りないかもしれませんね。彼らに気に入られると長いからなぁ…もう少し余裕を持った方がよいかと。」
「そうですか…ありがとうございます!」
「では。」
クートみたいなことになっても嫌だし、今回は見送ってまた今度来よう。
少し早めだけど、学校戻ろうかな…
あ!1日くらいハルとお出かけでもしようかな。それ終わったら早めだけど、学校に戻ろう。




