第68話
「よしっ!一番乗りっと。」
スタートダッシュは出遅れたけど、さすがに大きな龍に乗っているのであれば一番乗りなのは当然だろう。
他にも空路で向かっているものもいるがその比ではない。
「主よ、先ほども言ったが、海上のヤツは主とて気は抜けんぞ。心してくれ。」
「わかった。ご忠告感謝するよ。あいつも喋れるのだろうか?」
「おそらくな。何か言いたいことがあるなら代わりに伝えようか?」
「あぁ。頼む。何が原因で近づいてきているのか?攻撃の意思はあるのか?和解案はないか?ってとこかな?」
「ふむ…まず和解はなさそうだ。邪魔な者をすべて破壊すると言っておる。そもそもはあやつの縄張りで漁をしとった船があったとのことで、食い物を奪う者に慈悲などないとのことだ。もうカンカンでまともな話になる相手ではないぞ。」
「わかった。それならこちらにも大義名分があるということか。海に関わって生きている者を放ってはおけないなぁ…」
「主よ、今顔は見えんがおそらく悪い顔してるんではないか?」
「いやいや、何言ってんだよ〜向こうさんが戦いの狼煙を上げたんだ。それには応えないと男がすたるってもんよ!でもやるなら徹底的にだよ。」
あきらめ半分のゲイルは少し高度を上げながら海龍に近づいていく。
「ゲイル!まずは一発頼むわ!」
「承知!落雷!」
ズドドドドォォォン!
海龍を避雷針代わりにして、大きな雷を落とした。
港に意識を向けていた海龍もさすがにこちらを先に倒さないとならないと感じたらしい。
「ニンゲン風情が高々と見下ろしおってからに!不敬じゃ!平伏せよっ!」
「おっ!喋れんじゃねぇか!」
海龍のまわりに複数の海水の竜巻が立ち昇っていく。
「海流竜巻!」
立ち昇ってきた竜巻が1つに合わさってこちらに迫ってくる。
「ゲイルがんばれー!逃げないとみんなズタボロだぞー!」
「主よ…ふざけておるな。危機感がまったくないぞ。あれ食らったら主も腕の一本は持っていかれるのではないかな?」
「ハハハ!逃げても無駄じゃ!海上にいる限りいくらでも竜巻は作れるぞ。どこまででも追いかけてやるわ!」
ゲイルの飛行速度には追いつかないが、ずっと追いかけてくるのも邪魔くさいな…
「どうせなら水魔法で止めてやろうか。」
魔力を凝縮した水球を大きめにゲイルの後ろに設置した。
海龍の魔法は、その水球ですべて受け切った。
「その程度か?海龍の名が泣くぞ?」
「小癪な!ニンゲン風情が調子に乗るなよ!」
海龍が遠吠えをするとさきほどの竜巻や荒れた波が静かになった。
「ん?何だ?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
海の青が濃く見える気がする…
波?いや、津波だ!しかも超特大の。
壁が迫ってくる!しかも両側から。
このまま波同士がぶつかればちょうど町の前の位置だ。波にはのまれないが、海水が大量に流れ込むのは間違いない。もしかしたら王都にも被害が届いてしまうかもしれない。
どうしたら…
波がぶつからなければいいんだ!
「ゲイル!あっちの波に突っ込んでくれ!」
翡翠をだして風魔法でうちわのように大きく剣身を広げる。そして…
バァン!!
波を平手打ちの要領で打ち消した。
「グアァァァァァ!!次から次へと!」
海龍は口にエネルギーを溜めてブレスを出す準備をしているので
「え?これ待つ必要ある?ないよね?ゲイル!しっかり拾ってよ!」
龍の大きく開けた口を下からドーン!!
下顎を強烈に蹴り上げた。
ブレスは口の中で爆発してしまい龍はもう戦意喪失しているようだ…
「ここまでやるとは…もう勝てる未来が見えん。負けを認めよう。」
「じゃあ町を襲わない?」
「それが望みとあればそうしよう。」
「そうしてくれるならこれ以上は手を出さないから去ってくれるとありがたい。」
「わかった。ひとつよろしいか?」
「ん?なに?」
「もし…もしだが、よければあなたの仲間にいれてもらえないだろうか…?」
「俺はお前をやっつけた側なんだが?恨みというか悔しさとかそういうんじゃないの?」
「いや、ここまで徹底的に差を見せつけられるともう何も言えまい。平伏するのはこちらの方だったと今なら思っている。これからどのように生きていくのか見てみたいのじゃ。」
「わかった。ついてこい。テイムだ!!」
[海龍をテイムしました。名付けをしてください。]
「う〜ん…今日から君はシラナだ!」
[テイムモンスターとのつながりが強固になったため進化します。進化先が海王龍と水神龍の2種類が提示されます。]
(①海王龍:海にいればとんでもない力を発揮する。海の中の魔物もすべて管理下におくことができる。)
(②水神龍:水や液体に関する魔法や能力を使いこなす。)
「いやぁ…神がはいってるなら選ぶっきゃないしょ!」
[水神龍となりました。]
「今日から妾は水神龍:シラナじゃ。ご主人様よろしく頼むぞ。」
「ん?もしかしてシラナはメスというか、女性なのか?それならゲイルは?」
「そうじゃ。妾は女子じゃぞ。」
「我はオスだ。主よ。気づかなかったか?」
「うすうすは気づいていたけど、一応聞いてみた。ちなみに君たち2体で番になって子を成すことはできるの?」
「いや、できんな。龍とは昔から自らの命尽きる時に卵になりまた育っていくもの故、新たに卵を産むことがない。そういう器官はもっていないのだ。もし子をなすとしても腹に魔力の凝集体を作るような事だろうな…」
「そうなんだ…」
《色欲のレベルがあがり、神獣化が解放されました。始祖ヴァンパイアですが、まだレベルが低いのでジャイアントバットとして顕現します。》
「おぉっ!どさくさに紛れて…まぁ流れでいけば名前はラーストだね!」
振り返ると空路で向かってきた冒険者が間もなく港に着く頃のようだ。
「さぁ解決したことだし、町やギルドに報告してご褒美もらいに行こうか!」




