第66話
その後少しの授業と冬休みを経て今日から俺は5級にあがる。
一人部屋への引越しは昨日済ませた。
今日の朝食からは姉さんもメンバー入りして一緒に食べることになった。
姉さんによるとドークスは卒業し、エルレインは7級、サバト(四男)は2級にそれぞれ昇級したようだ。
「マァ君と一緒なの嬉しいな〜!!」
「そうですね!これからよろしくね!それにしてもスティアと寮じゃなくてここで顔を合わせるってのは新鮮だよ。」
「そうだね。結局僕も1人部屋になったしね。」
俺がいなくなった分は誰も入ってこなかったためスティアは二人部屋にいながら独り占めすることとなった。
「もう心配は少ないけど、ちゃんと起きるんだよ?」
「ありがとう。もう大丈夫なはずさ!フラウの試作中の魔道具のお陰もあるしね。」
「試作中?どんな魔道具を作ったの?」
「試作品2号機ができたらみんなにも渡すから待っててね。作ったのは遠くにいる人とお話したりする魔道具よ。」
「それならすでに通信水晶があるじゃないの?」
遠距離の相手同士が通信するための水晶で魔力を通すと望む相手とつながる。ただ、製作する高価な材料も作り手の技量も必要で出来上がった水晶には莫大な金額が必要となる。そのため基本的には国に1つずつくらいしかないのだ。
「ディケさん!そんな高価なものじゃなくてもっと庶民派なものを。誰にでも使えそうな物を作りたくて今試作中なのよ。だから安価で誰でも使えるってのが私のテーマなの。」
「安価で誰でも…かぁ…それはとっても素敵ね!私もマァ君といつでもお喋りできるならすぐにでも欲しいもの!」
「フラウ!わ、わ、私の分もちゃんと準備してよね!」
「わかったわかった!ちゃんとハルの分もディケさんの分も、もちろんマァトの分も準備するから少し待っててね。」
「それがあればみんなで話せそうでいいね。これなら1人部屋にいても寂しくないけど、うるさくて隣の部屋の人から苦情はいらないように気をつけなきゃ!」
「みんな…か…!そうだ!みんなで話すのよ!」
「え?どうしたのフラウ?」
「マァトあなたのおかけで、この魔道具の唯一性と進化の先が見えた気がするわ!ありがとうね!」
「ん?何が何だかさっぱりだけど、いい刺激が入ったのならよかったよ。」
…………………………………
5級は前期に世界政治と経済、そこで試験合格すれば後期で遠方実習の構成だ。もし試験に落ちれば後期も座学である。後期の遠方実習は試験はなく無事に後期を過ごせれば6級に上がれる仕組みになっている。
「そう言えばディケ姉さんは勉強得意なの?」
「お姉さんだからそれくらいは楽勝よ!」
「お姉さんなのはわかるけど、それとこれは関係なくない?」
「マァ君のお姉さんってことは私もできる女ってことよ!」
「そ…そうなんだ。楽しみに見させてもらうよ。あ!あそこ3つ席空いてるから行こうか」
さすがに王族レベルの2人には政治も経済もかなり簡単なようで初日の授業が終わる頃には2人でコソコソ話して授業を聞いていなかった。
「二人とも半分くらいからほとんど聞いてなかったようだけど、大丈夫なの?」
「「え?あれ聞く必要ないわよ」」
「え?」
「え?」
「いやいや、授業だし試験あるんだよ?」
「いや、あんなの聞かなくても小さい頃に習ってるから今更の話よ。」
「ハルはそういうことを習っていたんだ…」
「マァ君!私も習っているからあれくらいは聞かなくても全然余裕よ。」
「姉さんもなの?」
「俺も図書室で読んでた本の内容をなぞってるだけだから新たな話は何もなかったとは感じていたけどさ…」
「なぁんだ、マァトも同じじゃないの。たぶん貴族育ちの人なら、大抵は通る道だからわかってるはずよ。」
「じゃあ5級って何なの?」
「貴族育ちにはただの休憩というか…う〜ん…まぁそんな感じ。後期の実習も試験がないでしょ?一応各国から出資を受けているから露骨ではないけどほんの少し優遇されてるって感じかな?」
実際に平民育ちの生徒にはしっかり勉強すれば合格できるし、貴族に至ってはいきなり試験を受けても合格できるような内容なのである。
「はぁ〜時間の無駄だ…」
「まぁそうとも言えるけど、少しゆっくりした時間の過ごし方してもいいんじゃない?」
「後期の実習までが長いよ〜」
…………………
後期にじっくり実習があるため前期はしっかり座学だった。
淡々と過ぎゆく退屈な日々はとても長く感じたが、俺にとってもハルや姉さんにとっても簡単な試験も終わり夏休みがやって来た。
「マァトは今回どうするの?」
「う〜ん。東に行くか、南に行くか迷ってるとこ。」
「東ってまたイメリア来てくれるの??」
「行きたいところだけど、今回はさらに奥の獣人自治区に行ってみようかなって。もしくは南のノバルビア大砂漠かね。」
「あなたらしいけど、もう少しマァトは日々をゆっくり過ごす幸せっていうものを噛み締める余裕が必要ね。」
「せっかくの休みだもの!大冒険がしたいじゃないか!」
「あなたは卒業したら冒険するのでしょう?それなら今は冒険する前に伝承とか事前情報を各地で拾い集めるのが先決じゃないの?」
「うぅ…たしかに。座学ばっかりで体がうずうずしているんだよ。たぶん。」
「それならウチにいらっしゃいな!」
「どうしてそうなる?」
「私のお母様と一回模擬戦でもしてみたらいいわよ。あなたは確かに強いけど、お母様もなかなかのものよ。気が向いたらおいでなさいな。」
「ハルのお母さんと?強いのはいいけど、俺と戦って大丈夫?」
「おそらくね。まぁ無理強いはしないから。あなたに任せるわ。」
「南大陸のクート王国だからな…移動に時間かかるしな…情報収集終わったらそっち行くよ!待ってて!」
「うん!待ってる!」




