第64話
俺が寮に戻って少ししてからスティアも戻ってきた。
「おデートですか?」
「まぁそんなとこかな。」
「マァトはさ〜ハルのことどう思ってるの?」
「いきなりどうした?どうって言われてもな…いい奴だと思ってるよ。一生懸命だし、一緒にいて楽しいし、人として素敵な人だと思って尊敬してるよ。」
「そこまでいえるなら…」
(もうくっついちゃえよ!)
「ん?どうした?俺達をくっつけようとしてるのか?異性としても確かに素敵な女性だとは思うけどさ、なんか…う〜ん…わかんないや」
「はたから見ればいい雰囲気の時はよく見るよ。そしてお互いがお互いを想い合っているようにも見えるし。お似合いじゃないかな?って思うよ。」
「じゃあさ、もしものことだけど、ハルが誰かしらない男性と結婚することになったらどう思う?」
「おめでたい…けど、いやお祝いしなきゃならないんだけど、心からは言えないかもしれない。想像するとなんかとってもモヤモヤするな…」
「好きの定義は僕にもわからないけど、大切な人ってことで間違いないんじゃないかな?マァトがモヤモヤするっていうのがいい証拠だと思う。1回自分の中の自分と向き合って話し合っておいでよ。知ってる?ハルのファンは学校中いっぱいいるんだよ?確かに僕らは仲がいいけど、それでも違う誰かが現れないとはいいきれないだろ?しっかり考えるべきだと僕は思う。」
「あぁ。ちょっと一人で散歩してくるよ。」
…………………………………
女子寮のとある部屋にて
「ハルはマァトとお付き合いしないの?」
「なによいきなり!?」
「そういう想いがあるのは確かでしょう?」
「フラウ…いつも言ってるでしょ!マァトは異性なのは確かだけど、いい友達よ。強いし、勉強もできるし、人として尊敬もできる。」
(いないと少し不安になるけど…)
「ん?最後のゴニョゴニョは何を言ったのかなぁ?」
「もう!からかわないで!確かに異性のなかではいい人だと思うけど、お付き合いとかは私にはわからないわ」
「次から5級に上がって、周りからは13歳で5級ってことでチヤホヤされるだろうし、放っておかないかもよ。たしかに今は貴族の名家の人ではないから結婚して即安泰な生活とはいかないけど、そんなのスグよ。例えば誰かとお付き合いしているマァトを想像してみて。それであなたは彼の近くにいられるの?」
「そうなったらおめでとうって…言え…ないかもしれない。なんかモヤモヤして何も言えなさそう。たぶんマァトを避けてしまうかもしれない…」
「1回ちゃんと自分の気持ちに素直になることをおすすめするわ。気晴らしに夜風にあたってくるのもいいんじゃない?」
「うん。ちょっと歩いてくる。」
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商店街に続く道を歩く。日中の喧騒がないとかなり静かなもんだ。
「夜風が気持ちいいなぁ…ハルが誰かのになる…か…」
想像すると悔しさと焦りがわいてくる。
逆に隣にいる想像はとってもしやすいんだよな…
しっくりくるというか。
「あれっ?マァト?こんな時間に何してるのよ?」
「ハル!?」
「何よ?私がいたらまずいことでもあるの?」
「いや、別にそんなんじゃない。ただ、この時間にばったり会うことにびっくりしただけだよ。」
「たしかにそうね。それで何してたの?」
「何もしてないよ。ただ散歩してるだけ。何か意味を持たせるなら『何もしない』をしているってところかな。ハルはこんな時間にどうしたの?」
「ずいぶん詩的な表現するのね。私も同じようなもんよ。『何もしない』をしにきたのよ。ただボーっと歩いてただけ。」
「この時間にボーっと歩くのは墓場のゾンビくらいじゃないか?」
「こら!バカにしないでよ!私だって考え事ぐらいするわよ!」
「今日みたいにキレイな月が出てる時は夜の散歩日和だし、色々とごちゃごちゃしている考えがスッキリすることもあるよね。そういえばあれから婚約者がどうとかそういう話はでてないの?」
「えぇ。あなたのおかげで私の未来は私で切り開いていくことが許されているもの。継承権も下位な私に国としての期待はないもの。伴侶探しも自分でするわ。別に今誰かいるってわけでもないけどね。どうしたの?急に。」
「いや、ただ聞いてみただけ。あの時あぁは言ってたけど、国の大事なお姫様をどこぞの馬の骨とも知らぬ輩にはわたせないでしょ?って思うわけですよ。たとえ説明したって皇帝陛下が信じたり認めてくれる人って大変だろうなって。それなら陛下の知っている誰かと結婚した方が諸々よさそうだなって。」
「諸々ってなによ?お父様があぁ言ったからには守ってもらうわ。私の伴侶は私が決める。そして私がどう生きていくかも私が決める。それだけは譲れない!あなたも証人の一人なんだからしっかりしてよね!」
「あぁ。そうだったね。」
「私子どもの頃からキレイなドレスを着て結婚式をするのが夢だったの。でも隣にいる予定なのがあんなのだったから夢を持てずにいた。でも今は違う。ちゃんと隣にいる人を、心から愛する人と共に歩める人生を自分の選択で決めることができるから幸せよ。これからもっと幸せになる予定なんだから!」
「幸せって?」
「う〜ん…なんだろ。美味しいご飯と、楽しい友達と、ちょっとハラハラする冒険と、何だろ?」
「それもうすでに今あるやつじゃん。ハルは幸せな毎日で素晴らしいじゃない!」
「そう言われてみればそうね。でも今あるのが幸せだとしても学校卒業すれば終わってしまう。ずっとみんなと一緒とはいかないもの。」
「だから言ったじゃないか。卒業したら一緒に旅しないか?って。少なくとも俺はハルとずっと一緒にいたいよ?……あっ違う!違くないけど、プロポーズみたくなったけど、そうじゃなくてさ!」
「アハハハハハ!マァト私にプロポーズしてくれたのかと思ったわ。お父様からのお許しも出てるし、人生の選択肢としてそれも考えてる。ありがとう。」
「夜風に長くあたると風邪ひいちゃうとマズイからそろそろ戻ろうか?」
「そうね。みんなでワイワイするのもいいけど、こういうのもたまにはいいわね。」
「そうだね。またお散歩するのもいいね」
それぞれの寮に帰るスピードは少しもったいぶってゆっくり歩いた。
この時間をもう少し味わいたくて…
もったいなくて…
俺はハルと一緒に居たいんだな。
隣にいてほしいんだな。
今は俺はそう思ってるんだと感じる。
ハルが好きなんだな…




