第63話
「なぁハル、今日授業のあと時間ある?」
「えぇ…いいけど、何があるの?」
「ちょっと実験を…ね。実習区でお願いしたいことがある。」
…………………
「マァト〜何するの?実技試験の練習?」
「あ…あぁ。それでもいいけど、ダンジョンで手に入れたアイテムの性能を調べたくて。」
「そういうことね。それでなにすればいいの?」
「色んなパターンの攻撃をして欲しい。手に入れたのは防具なんだ。弓矢、魔法、打撃、剣撃、投げ技。そんなところかな。」
「わかったわ。じゃあまず遠距離のからいくね。」
シュッ
カラン…
勢いよく飛んできた矢は外套に当たった途端にその勢いを忘れその場で落としたようになった。
「おぉ!すごい!本当に無効だ!当たった感覚程度しかない。」
「ちょっと!大丈夫なの?ってどこにあたったかわからないくらいね。キレイな外套だけどキレイすぎて逆に目立ちそう。じゃあ次は魔法ね!」
「魔法には効果ないの言わなくてよかったかな…」
手を挙げたハルから火球が飛んでくるも外套に当たった途端に衝撃もなく消失した。
「あれ?魔法効くんじゃなかった?」
魔法が無効にならないとは言ったけど、防げないとは言ってなかったな…
とてつもない防御力のある防具なのかも…
「だいじょーぶー?」
「大丈夫ー!!あとは近接攻撃おねがーい!」
距離のある勢いのまま走って飛び蹴りをしてきた
「とぉー!」
ガンッ!
「うぉっと!」
勢いが強く、フラついたもののダメージは皆無だった。
ハルの方はというと…
「この外套、岩か硬い鉱石からでもできてるの?硬すぎてこっちがケガしちゃいそうよ」
「そんなにか!?」
「そんなによ!」
ハルが修練場の木剣を持ってきていたのでアイテムボックスからちゃんと刃のあるショートソードをだした。
「せっかくの性能試験だからこの剣使ってくれないか?おそらく効かないはずだから。」
おそるおそる持ち上げるハルは怪訝な顔でこちらを見ている。
「本当だってば!さっきの矢とかみてるでしょ?大丈夫だよ!」
「本当に?私加害者になりたくないんだけど…」
「大丈夫だよ!信じて。」
「わかった。」
大きく振り被って振り下ろす。俺も反射で手を出してしまった。
「あっ!」
ガキーン!
激しい金属音を立ててハルが持っていた剣は弾き飛ばされた。
「え?今外套の生地のない素手なのに…もしかしてこれって装備してると露出部分にも効果が適用されるのか?だとしたらとんでもないぞ!」
「あなたの体が何か硬い鉱物でできてるわけじゃないわよね??」
「れっきとしたニンゲン族だよ!仮にドワーフだとしてもちゃんと剣で斬れば指くらいは容易に落とせるよ。」
「まだ…やるの?」
「うん。投げ技はいいからもう一度火球を投げてくれない?」
少し離れてハルから火球が飛んできた。
それを額で受けてみる。
「ちょっと!何やってんのよ!生身の体で受けたらただの火傷じゃすまないわよ!……って何もない。火傷すら?」
「うん。そうみたい。この外套は着ていれば手でも頭でも露出部分にも効果が及ぶんだ!すごいぞこれは!ハル手伝ってくれてありがとう!」
「それで実技の練習は?」
「あ…あぁ。俺が受けたのは素質の測定と模擬戦だよ。模擬戦はまた今度やるとして、素質の訓練では走って目的地に向かうってのが少し厄介だったかな。森林の中を上下左右に動きながら、攻撃を避けながらだからね…」
「なにそれ?そんな難易度なの?やっぱり早い受験受けなくてよかった。正規の時期で受けるよりかなり難しくなるって聞いたからさ。私そこまではできる自信ないよ。」
「とりあえず森林エリアで、俺についてきて走るってのでどう?ちゃんと加減はするよ。」
「加減するのは当たり前よ!あなたが本気でやったら動かないで待っていた方が早いもの。」
「それはさすがに…」
「言い過ぎじゃない!練習としてお願いね。」
「わかったよ。さぁ行こう!」
……………………
「こっちだ!ついておいで!」
「待ってよ〜!速いってば!」
ハルがついてこれるギリギリのスピードで木の間を飛んだり走ったりしている。
「っハァハァハァ…」
「もう1本いくか?」
「ちょっと待って。少し息を整えたらもう1本お願い。それで今日は限界かも」
「…よしっ!じゃああと2本だな。」
「いやいや、一本って言ったじゃないの!」
「限界だと感じてからのもう1本が大事なんだよ。ちゃんと加減はするからさ。」
「本当にあなたの訓練は厳しいのね…スティアの言う通りだったわ。」
「…よしっ。行くぞ!」
そこから限界と言うハルとおかわりのもう一本走って実習区を後にした。
「今日はありがとうね。」
「こちらこそ。体はとてもキツいけどいい訓練にはなったわ。おかげで今日はぐっすり眠れそう。今度は筆記の方もお願いね。」
「もちろん!みんなを昇級させるのが俺の残りの時間の使い方だからね。」
「頼もしい先生だこと。よろしくねマァト。」
「あぁ!まかせろ!」
このやり取りをひっそり隠れて聞いていたスティアとフラウであった。
「マァトとハルは両想いなんだよねぇ?」
「私もそう思うけど、なんでだか自分の気持ちを認めようとしないのよ。部屋に戻って誰もいない時でもね。」
「なんだか見てるこっちがやきもきしちゃうよ。この勉強期間で何かできないかなぁ?」
「できないこともないけど…面白そうね!」
「勉強や戦闘力ではかなわないけど、こういうことなら僕の方がマァトより上手なはずだ!」
「まぁ試験もあるから程々にね…」
「フラウが悪い顔してるー」
「スティアだって!」
そうして平和な一日は終わりを告げたのである。




