第62話
鞭に足が取られすっ転んだところに鉤爪をつけたウリエルが絶妙な連係で迫ってくる。
矢も飛んできている。
すべてがスローモーションだ。
俺、死ぬのか?
嫌だ!こんなとこで死んでたまるか!
あれ?空中で迫っているウリエルが止まっている…?
矢が止まっている?
死の間際の認知機能ってこんな感じなのかな?
世界が止まったようだ…
「おっめでとうございまぁす!」
「え?」
「え?」
「だから試練合格したんで・す・よ!」
「あ!止まって見えるほどスローなんじゃなくて本当に止まってたのか!」
鉤爪の延長線上には俺の心臓、矢の先には脳天に向かっている。首の皮一枚ってやつだな。
「ここまでよくがんばりました!それでは予告通りご褒美です。これをどうぞ。これほどの回避能力があれば必要になる場面は少ないと思いますが、それでもあればあなたの助けになるはずです。」
真っ白な外套だ。
「これは?」
「見ての通り外套です。でもただの外套ではありません。無刃:ヘラクレスと言います。あらゆる武器攻撃を防ぎます。注意してください!武器攻撃だけですよ!魔法や裸拳、投げ等の組み技は防げません。魔法が付与されていてもそれが武器による攻撃ならば防げます!地上に戻ったら色々お試しください。そもそもの防御性能もかなり高いのでお試ししたところで大した攻撃じゃなければ傷一つつかないはずです。」
「すんごい性能だ!そんなのいただけるなんて…」
「これであなたは2つ目の天使の試練を超えることができました。あなたならきっと他の試練も超えていくのでしょう。他の天使にもよろしくお伝えください。最後に…あなた自身は人間なのです。脆く弱い存在なのです。それは物理的なところだけではなく精神的にもね。だから決してあなた自身を信じることだけは諦めないで下さい。心の炎を自ら消すことだけはしないように願います。あなたのこれからの旅路に幸多からんことを願っています。」
「はい!ありがとうございます!」
光に包まれるとさっきの盃の間に戻った。
炎の雫は本物の炎となって燃えている。
そこから炎の雫が俺の胸に向かって入ってきた。
《スキル:ワールドマップを入手しました。あなたにしか見えない世界地図で探している物や人の居場所がわかるようになります。》
「すごい!人探しや探し物に苦労しないなんて最高じゃないか!」
炎に包まれる…
「熱く…ない」
ダンジョン最奥に戻ってきた。
「はぁ〜疲れた!もう動きたくない!今日はここで休んでまた明日にしようかな。」
〜6日目〜
さぁ!後は戻るだけだ!
また猿やらゴリラを駆逐して蹴散らして進んでいく。降りる時にも少しずつレベルが上がったからか帰り道の方が戦闘が楽になっていった。
50層→40層は粛々と進んでいけた。
どうせ強欲も使える階層では欲しい能力もないから30層で転移して離脱だな。
〜7日目〜
40層→30層の虫パーティーで俺は少し探し物をしていた。
蜂のモンスター:キラービーである。
種々の毒を操る蜂のモンスター。
こいつがいれば小さくなって情報収集したりできそうだからなー
「はっちさ〜ん、はっちさ〜んでておいで〜」
ブ〜ン!
キター!!
重力魔法で抑えつけて…プチっ
あ…
調節ミスだ。潰してしまった。
ブ〜ン
今度こそ!
重力魔法の調節しながら…
ブブブブブブ…
羽ばたいているのに地面に抑えつけられている。
テイム!
[キラービーをテイムしました。名付けをしてください。]
よしっ!ゲットだぜ!
「どうしよ…ビークでいこう!」
[テイムモンスターとのつながりが強固になったため、キラービーからアサシンビーに進化しました。]
「アサシン?なんか物騒だけど強そうでいいね!これからよろしくな!ビーク!」
そこからはハチさんと共に30階層手前の安全地帯に到着した。
あ!そういえば神獣達呼べたのに忘れてた!
「みんな、ごめんよ〜。さぁここからなら転移が可能だから、さっさと帰ってフカフカのベッドに包まれたい。」
…………………
「あ!マァトだ!おかえり!10日いっぱい潜ってるのかと思ったよ。」
「ただいま。俺がいないからってフラウを連れ込んでるんじゃないだろうな?」
「ここは男子寮なんだから無理に決まってるだろう。できるならしたいけど…」
「そりゃそうだよな…もう夜だし報告は明日先生にしたらあとはもうゆっくりできるから勉強手伝うよ!」
「ありがとう!まぁまずはそのドロドロに汚れてる服やら体をどうにかするのが先だね…」
「あ!ごめん!行ってくる!」
……………………
〜翌朝〜
食堂にて
「マァトおかえり!帰ってきたなら知らせてくれたらよかったのに…」
「ハル…俺に女子寮に入ってただいまって言いに来いと?」
「あ…ごめんなさい。それは別な問題がおきちゃうわね。」
「たった1週間だけど、ハルは毎日マァトの心配してたのよ」
「ちょっ!フラウ何言ってるのよ!」
「ありがとう。みんなありがとう。今日先生に報告したら一段落つくからそれからは5級が始まるまではみんなとゆっくり過ごせそうだよ。ゆっくりって言っても俺は厳しいからね!ビシバシ行くよ!」
「マァトの厳しいは本当に厳しいからなぁ…僕に至っては部屋までその厳しいの続きそう」
やはりみんなと一緒に笑いながら食べる朝食が一番楽しい。
「先生!10日いらなかったよ!」
「いらなかった?何階層までいけたんだ?」
「え?全部」
「全部?踏破したってか!?」
「そう。全部。」
「お前は規格外なやつだとは思っていたけど、そこまでとは…記録では20層までしかって言ってたけど、最下層は何層なんだ?」
「50層だった。記録は20層なのかもしれないけど、記録に残ってない挑戦者が過去にいて踏破した人居るっぽいよ?」
「そうなのか?まぁ過去には記録に残らない猛者もいたのだろう…それにしても無事戻って何よりだ。」
「ありがとう。」
「それで最後に財宝とかはなかったのか?」
「あ!最後の部屋探すの忘れてた!!!」
「おまっ!バカか!?まぁお前ならまた行けるんだろ?そのうち見に行ってこい。どうせ誰も行けやしない階層だから取られる心配はないだろうさ。」
「そりゃそうか。そのうち行ってきます!」




