第55話
ピィーっと指笛を鳴らすと念話が届く。
「主よ、どうかしたのか?」
「少し面倒な相手をしなくちゃならなくてさ、ゲイルにお手伝いをお願いしようかな〜って。」
「承知したが、どのように手伝えばいいのだ?」
「まず今戦っているのは大きな木のモンスターなんだ、おそらく俺に対して意識が向いているはずだから死角から一発強めに雷を落としてやってほしい。高さがあるから狙うのは楽にいくはずだよ。」
「すぐ出してよろしいのか?」
「あぁ。俺はそれにあわせる。」
ゴゴゴゴゴゴ
急に暗くなり暗雲がたちこめる
ズガガガガガガガーン
雷は背の高いものに優先的に落ちるのは常識だもんね。
雷はまっすぐ大木に落ちた。
表面は黒く焦げているが、まだ生命力を感じる。
「これで終わりだ!」
アルテミスで土魔法で岩のドリルを生成して、拡大、螺旋の付与を与えてど真ん中に射った。
射出されたドリルは高速回転をしながら木を撃ち抜く。すっぽりと真ん中に大穴が開いて今にも折れそうだ。
「ホントにこれで終わりだぁぁぁぁ!」
バキッ!
グラグラしてる上半分に力を込めた飛び蹴りを放つと下半分とは離断されて上空へ
「業火球」
黒い炎の大きな火球がそれを追い掛けて空中で燃やし尽くす。
「よしっ!討伐完了!ゲイル。ありがとな!…ってキールはどこにいるんだ?」
残った木の残骸は枯れていって亀裂が無数に入りパキパキと割れていった。
……………………
逃げてへたり込んでいたディケは時間の経過とともに落ち着きを取り戻していった。
「あ!あなた!キールの取り巻きの!」
「げっ!キールのお姉さん?」
「そうよ。あれはいったいどういうこなの!?」
「いやいや、俺は悪くない!俺は悪くない!」
「どういうこと?そんなんじゃわからないわ!」
「あの木になる実を食べると一次的に強くなれるからそれを使ってマァトをボコボコにしてやろうとしてただけなのに、なんであんなことに…」
「なんでマァ君を目の敵にしてるのかしら?」
「そりゃあ俺たちの邪魔をしてるし…そもそもアイツのことが気に食わないんだよ!」
「気に食わないでやっていいことと悪いことの差もわからないの?あれは…もう…キールが…」
「あんなモンスターになるなんて知らなかったんだ。ただ肉体強化をするだけ以外のことは知らなかったんだ。」
「知らなかったらなんでもしていいの?そんなことはないでしょう?あなたには先生にすべてを話してもらいますからね!心してなさい!」
「俺は知らなかったんだよぉぉぉぉ」
取り巻きは走って逃げていった。
「キールのところにマァ君がいるなら大丈夫なんだろうけど、う〜ん…あれ?」
上空に木のようなものが飛んだと思ったら火球が飛んできて燃え尽きた。
「あぁぁ…キール…」
燃え尽きたと思ってたらそこからナニカが飛んできた。近くに落ちたようなのでディケは確認しに走る。
「あぁ…キール。」
モンスターと化したキールから元のキールに戻ったが、上半身だけなのだ。ちぎれた部分は折れた枝のようにトゲトゲしくなっている。しかも左肩から下、右肘から下はなくなっている。
「姉…さ…ん」
ディケはキールだったものを抱き上げると、笑顔で語りかける。
「キール…ちょっとやりすぎたわね。あなたは昔っからしっかり努力してきたじゃない。確かにマァ君はぶっ飛んでるけど、あなたはあなたなりにやっていけばよかったと私は思うわ。あなたの努力は私はみていたもの。」
「…………」
震える唇からは声はでない。
ただ、涙が頬を伝っていった。
「おやすみ。ゆっくりやすみなさいな。」
キールは目を閉じるとパキパキと音を立てて割れて粉々になっていった。
形見になるようなものは残さず逝ってしまった。
ディケは買い物をするために商店街に来てたことを思い出して歩き出した。
………………………
マァトはキールもステータスの木の植木鉢も見つけられないままあたりを探すが、何も見つからないため自分が地図を見間違えたかと場所を変えてあちこち探しても一向に見つけられないため寮に引き返すことにした。
「おかえり。早かったね。」
「まぁね。時間としては予定通りなんだけど、キールに会えなかった。木も見つからなかった。ビビって引き下がったのならいいんだけど、あの木はまた改めて探さないとならないね。」
その晩、キールは寮に戻らなかったという話で少しザワついたがなぜかその話もすぐに鎮火した。
「キールどこに行ったんだろ?」
「マァト呼びつけたはいいけど、あがったステータスでも足りないって気づいたんじゃない?」
「だとしたらなんで寮にもいないのか…何かケガでもして呼びつけたのに治療院に入院してるのかな?」
「そうかもね。それにしても学校にモンスターが出てきたってのもビックリだよね。」
「そうそう。先生には報告したけど、不思議がってたよ。そんな危ないモンスターどこからきたのかって。」
「キールの仕業じゃない?木をネタに呼び出してそのモンスターでマァトに危害を加えようとしたってことじゃない?それならキールがその場にいなくても辻褄があうよ!」
「あぁ!確かに!」
後日キールの取り巻きから、あの木はマァトとスティアで大切にしていたのを見て意地悪をするために盗んだと言われた。だが、実を食べても一定時間しか効果がないから使えないと苛立ったキールがバキバキにして薪にして燃やした。だからもうどこにも無いのだと言う。謝罪をしに来たが、とても何かに怯えているようだった。
「まぁあの木は危険性がある部分もあったからどこか分からないところにあるくらいならなくなったほうが安全だね。」
「せっかくスティアが研究する予定だったのにね…どこかの誰かが間違って実を食べて大暴れすることになるよりはマシか。」
入学してからテミス家から家族に対する速達が届いたのはモンスターが討伐されて5日後の事だった。ファルノールから学校にいる家族への速達はこれで2度目だ。
キールが謎の植物に取り込まれてモンスター化した。誰がやったかは不明だが、討伐されて大事にはならなかった。その後ディケがたまたま死の間際のキールを発見し、最期を看取ったという内容だった。
「俺に似てはいたが、足りなかった。届かなかった。まだまだだったなキールよ。そのどっかの誰かはたぶんアイツなんだろ?あの世で見てろ!俺もアイツが大っ嫌いなんだよ。」
ドークスは推測でしかないが、マァトが討伐したのだと感づいている。
討伐した本人は知らないままだが…




