第50話
アゼル侯爵家の裏の小屋
勝手口は施錠されておらず、小屋に潜入することができた。
侯爵家の誰が黒幕なのか、もしくはさらに後ろに誰かいるのか落ち着いて情報を集めよう。
ガチャ
「ん?今日は仕入れの日だよな?あの運び屋何を手間取っている?ただ運ぶだけなのにそれすらできんのか!」
空の部屋をみて苛立つ様子の男がいる。コイツがたぶんパイプ役の家来なんだろう。見た感じだとそこそこの役職も持っていそうな雰囲気だ。
「はぁ…使えないヤツだ。ジャン様になんと報告すればよいのか…」
そのジャン様がとりあえずここの家でまず探すべき人間なのだろう。
気配を消して後をつける。
屋敷に入り右へ左へ上へ。
広すぎだろっ!この屋敷。
コンコンコン
「失礼致します。」
「どうした?仕入れの時間だろ。もう確認が終わったのか?」
「いいえ!ジャン様!それが今日はまだ未入荷なのです。たまたま遅くなってるだけならいいのですが…」
言葉を遮って机を強打する。
バン!
「時間は絶対厳守と伝えてあるんだろうな?私は予定からズレることが大っ嫌いなのだよ。知っているだろう?」
「私自ら教会に行ってまいります。しばしお待ちを。」
おそらく使われるというよりこの家来は人を使う側の立場だろうになぜ自分で確認するんだ…?
今教会に行けばもぬけの殻をみるだけだ。
家来が帰ってくるまでにジャン様との決着はつけないとな。
家来が外に出ていったのを確認
タイミングはバッチリだ。今しかない。
「声を出すな。助けを求めるな。状況はわかるな?」
背後からジャン様の喉元にナイフを突きつけて制圧する。
何もないはずのところからいきなり脅迫されていてパニックになるも声を出してはいけないことだけは理解しているため目を見開いて脂汗がダラダラの状態である。
「人攫いの件はお前の後ろに誰かついているのか?」
ナイフを気にしてか微動だにしない
「お前が黒幕ってことでいいんだな?」
「何のことだか?最近巷でそういう噂があるのは聞いたことがあるが、なぜこのような状況なのかご説明いただきたいところだ。」
「今日の入荷は…どうだったんだ?」
悔しさの滲む顔でこちらをにらむ
「に、入荷とは何を仕入れる話をしている?人攫いがどうとか言って入荷とは何なんだ?」
「はずれの教会で捕まえたチンピラと運び屋とはもう衛兵に捕まっている。だからここまでたどり着いたんだよ。いい加減認めろよ。」
喉元のナイフを一段と強く当てる。
「くっ。…証拠もなしにどう捕らえるというのだ?私は知らぬ存ぜぬで通るようにしてあるのだよ。そして私の父は侯爵だ。多少の罪はいくらでも握りつぶせるさ。」
「わかった。俺は宰相から貴族であろうと検める権利をもっているんだよっ!証拠見つけりゃあいいんだろ?」
ドンっ!
ジャンを壁へ突き飛ばすと氷魔法で壁へ縛り付ける十字架を作り出す
「貴様!私を誰だと思ってるんだ!?いい加減にしろ!誰か!誰かいないか!侵入者だ!」
部屋の扉に極厚の氷魔法を使って固めた。
「さぁ。競争だ!俺が証拠を見つけるのが先か俺が私兵たちに捕まるのが先か…」
外からは扉を叩くドンドンという音と坊ちゃまと呼ぶ声が壁越しに響いてくる。
時間はあまりない。さっさと見つけて終わらせないと。
おそらく先程の時間通りを望むところや切り捨てるのを見越した人員配備を考えれば今目の前にある机や書棚、引き出しの中にはないだろう。
手間をかけて確実に隠す方法をとるはずだ。
部屋には数個の引き出しのある机、書棚、ベッド、ソファとテーブルくらいしかないシンプルな部屋だ。アイツの隠した証拠はどこにある。あれ?弱み…
《弱点看破》
ジャンの胸に光が灯る。
そりゃもちろんそうだ。エルフと言えど人の形をなしている以上心臓はあるだろう。
部屋を見渡すと机の下にほのかに光が…
このスキル有能〜!
身体的な弱点以外にも社会的な弱点も見つけてくれるだなんて!あいつの弱みに反応してくれたんだな。
さて、引き出しの裏か?
下段の引き出しを出して机内部をみるも何もない。取り出した引き出しの箱にも何も変哲もない。
うーん…
「そ、そ、そんな変なとこ探したって何もないだろう!あ、あ、諦めるんだな!」
露骨に動揺しすぎだよジャ・ン・さ・ま!
「ここなんだよな〜。ん?ここだけ絨毯がツギハギになってるね?日頃からメイドさん達が丁寧に仕事してるから汚れで隠したりできてないよ?」
「やっ、やめろ!そこをあけるな!そこを開けば…くっ!」
ガコッ
加工された床板を抜くと書類が見つかった。
「これはジャン様の大好きな予定調和じゃないですかぁ〜。罪を犯せば罰が下る。当然ですよね?」
書類には顧客リスト、販売記録、要望リスト、一連の犯行に携わった者のリストがあった。
「アンタ…今まで何人攫って売ったんだよ!?」
「いちいち覚えていられるか!そこに書いてあるだろう!」
一枚一枚びっしり数字や履歴が書いてある。ちゃんと顧客ごとになっていてとっても見やすい資料だ。この能力をもって文官でもやってたら有能だったろうに…
資料をめくる手が止まる。
手が震え、顔が紅潮してるのがわかるくらい熱くなっている。
「アイツら…こんなとこにまでっ!おいっ!このドークスって客はどこからつながっている」
「あぁ?ドークスぅ?アイツは学校時代の2級後輩だ。3年くらい前に私が卒業後に今のビジネスを始める予定と話をしたらすぐのっかってきたぞ。新たな仕入れ先が欲しいところなのだと。アイツはいい客だよなぁ。学生なのにいっぱい買ってくれる。あぁ、財布は父上殿が持ってくれているのだろうか…」
あの下らないようなことまだ続けてたのか…?
「どうやって運んでたんだ?」
「我が家の打ち捨てられた小屋に集めてから夜間に出る密航船で客先に運ぶんだよ」
「人攫い、不当な人身売買、密航、密輸まだ明るみに出てない何かもあるのかもな…とんだ重罪人の貴族様だな。それにしても随分と饒舌じゃないか?」
「証拠がでた以上黙ってたって牢屋にいくなら拷問されて情報を引き出そうとされるよりさっさと吐いたほうが合理的なだけだ。」
そんだけ合理性を唱えるのなら犯罪を犯して捕まる、刑罰をくらう合理性を考えなかったのかねぇ…金か権力に踊らせられたのだろうか…
「最初にも聞いたが、アンタが黒幕で背後には誰もいないってことでいいんだな?」
「あぁ。それで相違ない。私の代でこの家を大成させようと思ったのだがな…」
外に待機している衛兵に向けて突入を知らせる火魔法を放った
俺はドークスの部分の資料だけ抜き取った。
いつかテミス家と対峙する時が来る時があると困るから。イメリアの国にには申し訳ないがここは我を通させてもらう。




