第47話
メイドさんや城内の誰かにバレることなく帰ってこれた。
「本当に転移だったわね。」
「まぁね。ハルが本当にお姫様なのはみんなに黙ってた方がいいんだよね?フラウにも言ってないの?」
「うん。いつか折を見て言うつもりだったんだけど、なかなかタイミングがなくてね。同級生との距離感が難しい人になりたくなかったの。それでお父様からもらう報奨は何か決めたの?」
「本当に何もらったらいいかわからなくて…別にお金もらっても助かるけど、なんか違う気がするし…わからないんだよね」
「それならまだ夏休みもあるし、ここにいて少しイメリア観光でもしていったら?図書館もそうだけど、お父様に言えばお城の禁書庫だってはいれるんじゃないかしら?」
「それだ!!禁書庫への入室を報奨にしてもらおうかな。それなら一般の図書館にない色々なものを見られるはず。」
メイドさんを通じて禁書庫への入室許可が欲しいと願い出た。すぐに許可証になる王家のメダリオンが授与された。ジョブやスキル、各地の伝承に関わる書物の閲覧のみを許可された。
「これで色々読めるぞ!明日から籠ろう。」
さすがに晩餐まで王族とご一緒はできないから部屋に運ばれてきた豪華な食事をいただいた。
食事を下げに来たメイドさんが含み笑いをしながらバルコニーからの夜景も綺麗だから是非どうぞ。今の時間が街の明かりもあっていい時間ですとのこと。
言われるがままバルコニーにでてみる。
本当に綺麗だ。前世で見たイルミネーションみたいな灯りとは違うが満天の星空に街の生活が見える温かい光。
とってもいい眺めだ。
夜景を見回してみると隣の部屋の人も見惚れているようでぼーっと見ている。
「お姫様と同じ景色を拝見できて恐悦至極にございます。」
「へ?マァトも見てたのね…いいわよね。この景色。この中に色々な人がいてそれぞれの家庭があってそれぞれの生活があって…」
「そうだね。今回はたまたまここにいるだけで俺はいつもはあっち側だしな。豪華な食事も何をするにも動いてくれるメイドさんも俺の日常にはないから戸惑うけど、たまにはいいね。」
「たまには…ね。不自由ない生活も安全の確保された生活も…進む未来の道が決まっていることも…はぁっ…あなたの生活がうらやましい限りだわ。」
「もう婚約かなんかしてるの?」
「…うん。夏休みで帰って早々に顔合わせをしたわ。小さい頃に何度か顔合わせをしたことがある侯爵家の長男。まぁお父様の地盤固めの一環よね。婚約自体はもっと小さい頃からしていたの。今回で本格的に将来を見据えて顔合わせって感じかな。」
「王侯貴族ってのは自由で不自由なわけだ。」
「なにその皮肉めいた言い方。まぁ…その通りなんだけどさ。どこかに颯爽と連れ去って違う国にでも連れて行ってくれる怪盗様はいらっしゃらないかしら?」
「だから、前に言ったじゃないか。俺は学校卒業すれば根無し草の生活しながら冒険の旅に出るって。ハルの力を俺は信じてるから来れるなら一緒に来てほしいって。卒業までの時間はあるけど、ハルの時間がないなら、俺についてきてくれるなら、俺は何としてでもそのしがらみを今すぐにでもぶっ壊す!そもそも第三王女なんだし継承問題に関わりにくいなら自由に旅くらいさせて欲しいよな〜」
「やっぱりマァトは王子様だね。怪盗さんにはなれないかもだけど…別にお父様が悪い人なわけじゃないの。慣例というか、固定観念なだけなの。」
「わかるよ。でもそれは今までがよくてもこれからがいいわけじゃない。俺はハルが第一王女でも同じように誘うし、同じように動くと思う。だから手を取りたい気持ちがあるなら、人生を自分の想いで歩きたいなら俺の手を取れ!俺を相手にして勝てる軍隊なんてないでしょ?ゲイルも神獣達もいるからね!」
「確かにあなたに刃を向けて無事でいられる人は居ないわね。あなたの手を取れば幸せになれるのはわかってる。でもなぜか足が動かないの。」
「俺は、人生は自分の力でのみ切り開くものだと思ってる。誰かに背中を押してもらったり、助けてもらったりもあるけど、決断だけは自分のものでなければならないと思う。だからいくらでも助けるし、支える。でも決めるのは自分だ。だからいくらでも頼っていいんだよ。」
「ありがとう。マァトとここで話せたのはよかったわ。私は先にお休みさせてもらうわね。」
「うん。おやすみ。」
バタン。
ハルはどんな顔してたんだろう…
ハルのために何ができるのだろうか…
婚約相手ぶっ飛ばすわけにもいかないしな…
あぁ政治って難しい…
翌朝宰相が部屋までやってきた。
「マァト殿少しお話の時間をいただけるだろうか?」
「えぇ。もちろん。」
「実は市中で最近事件が起きているのです。人攫いが横行しているのです。一貫性があるとしたら被害者が女性なことくらいで手口もバラバラ。場合によっては家族のところに無理矢理押し入って奪っていく強引なやり方から闇夜に紛れて攫う者まで…街の平穏の為にご助力願えないだろうか?」
「人攫いか…攫われた人たちはどこに連れて行かれているかの足取りは掴めているんですか?」
「いいえ。おそらく人身売買されているのでしょう。国内なのか他国なのかもわかりません。衛兵や警備隊を使って調べさせていても人が攫われているということ以外何も手がかりがなくて…」
「誰が何のためにしているのかもわからないか…もし、貴族さらには王族が関わっていても実力行使や無礼にあたることをしても罪に問われないことを約束してくださるのであれば。」
「王族ですと?そんなことが?」
「あり得なくはないですよ。俺が知っている国では王侯貴族が人攫いや人身売買の中核をなしていたっていう話を聞いています。そこでは昏倒薬を使って運び屋が連れ出しているとのことです。」
「あぁ…そんなことが…わかりました。皇帝には話を通しておきます。私の名のもとに権利を確約致しましょう。」
「ありがとうございます。それではさっそく調査にでてまいります。できたら市中の闇に詳しい情報屋みたいな者がおりましたらご紹介願えませんか?」
「そちらの線も探ったのですが、何も知らぬの一点張りで…金銭をチラつかせてもなびかない所をみると本当に知らぬのではないかと…」
「本当にそうなのかな?一応俺の方でも当たってみますから一度紹介してください。」
「この時間なら酒場『花の蜜』のカウンターで飲んだくれてるはずなので行ってみてください。」
探索クエストはっせ〜い!!
禁書庫の情報収集とは違うけど、こっちの方が俄然やる気出るわ!




