第42話
翌朝早くに目が覚めた。
隣でスティアは静かに寝ている。
置き手紙には少し出てくるが、朝ごはんの前には戻ると書いてエル兄さんの部屋に来た。
コンコンコン
ガチャ
返事を待たずに部屋にはいる。
「朝早い時間に申し訳ないが、急ぎ話がしたくて兄さんの部屋に来た。最近夜に集会があるとか騒がしい集まりがあるとかって噂を聞いたことある?」
少し眠そうだが起きてはいたらしい
「どこからかそのような話は聞いたことがあるな。わざわざ行こうとは思わないから特に気にしてはいないが…それがどうした?」
「単刀直入にいうと、そこにキールとドークス兄さんが深く関わっている。すでに潰れた商店街の店舗の地下を使って危ない薬を売っている酒場を開いていた。」
「ドークス兄さんまで?」
「キールははっきり背後にはドークス兄さんがついてるぞって脅してきたくらいだからね。」
「それでその酒場で何をしてきたんだ?」
「まぁ…キールを黙らせてきた…かな。このまま放っておいて俺のまわりに手が伸びてきたら困るし、そんな危ない薬がが近くにあるなんて健全とは言えないよ。」
「殺したのか?」
「いやいや!そこまではしてないさ。お店としてやっていけない程度にぶっ壊してきたし、薬も全部処分してきた。証拠を残した方が話の説得力があるんだろうけど、間違って誰かの手に渡ると大変だからさ。それでさ、ドークス兄さんに一言伝えてほしい。今回のことはなかったことにしておいてやる。無事卒業したいなら静かにしておけ、と。」
「大きくでたな。その言い方なら余計に兄さんの火がつくけどいいのか?」
「兄さんからキールへの納品書じみた直筆の手紙がある。もし俺を含めてまわりの人間に何かあるならこれを学校にだす。強制退学だけでは済まないんじゃないかな?牢屋に入る可能性だってある。さすがに本物を渡すわけにはいかないから見せるまでにさせてくれ。これだ。」
渡された手紙を読み進めるとエルレイン顔がみるみる青ざめる。
「テミス家を考えたらこれは世に出るとまずいのは誰だってわかるようなもんだ。正直な話もうテミス家は俺にとってもうどうでもいいんだ。犯罪者がいようと、家が崩壊しようと。あの手紙は直接俺からじゃなくても世に出す方法は幾らでもあるから契約書に触れずにどうにかできてしまうんだよ…」
「わかった。俺から兄さんにもキールにも伝えておく。証拠隠滅感謝する。隠れた酒場程度なら学校もそこまで大きな話にはしないだろうが、それ以外の話となってくるとな…」
「頼んだよ。エル兄さん。」
兄さんの部屋をあとにして自室に戻る。
これでテミス家がらみのことが終わるといいな。
「おかえりマァト。さぁごはん行こうよ。」
「あぁ。待たせたね。」
いつものメンバーで朝ごはんをいただく。
そこで昨晩の話とそれを兄さんにしてきたことをみんなに伝えた。
フラウが心配なのかスティアはずっと手をつないだまま話を聞いていた。
「報復がないといいのだけれど、とんでもないことをしてたのね」
スティアの手にさらに手をさかねてフラウが言った。
「ハルや姉さん、フラウが何かの手段で連れて行かれてしまってたらと思うと本当に怖いよ。」
「キールの狙いはなんだったのかしらね?入学当初の変なアピールとは違うでしょうし、私へのものってよりマァトへの何か嫌がらせの為の作戦のうちの何かかしらね…」
「うーん…何だろうかわからないけど、俺への何かなんだろうと思う。ただ、その影響で巻き込まれる近くの人がいたらたぶん今回の程度では済んでないと思う。商店街全部ブッ壊すくらいのことになってたかもね」
「マァトが言うと冗談に聞こえないのよ」
「そんなにすごいんだね!僕達はクラス違うから実習の姿をみられないけど、本当にすごいんだろうね。」
「スティアの実家に行った時には一緒に素材採取に行こうよ!そしたら見られるかもよ〜」
「おもしろそうだね!」
「い〜な〜楽しそうで。私はお硬い話をお上品に延々と聞かされてオホホホって愛想笑いをするお茶会を何度もしなきゃならないと思うと気が重いわよ。」
「ハルはお嬢様なんだもんね。俺も遊びに行ったらお茶出してもらえるの?」
「ん〜事前に知らせてくれてたら大丈夫かもね。いきなり来てもたぶん怪しい奴ってことで門前払いね。スティアのところ行ってからイメリアに来るのはかなり厳しいんじゃないかしら?」
学校からイメリアまで船で5日、学校からドワーフ王国まで船で1週間かかると言われている。
夏休みは30日間なのでドワーフ王国の滞在期間をかなりしぼらないとならないはずだが、俺には転移がある。ただし、転移ができるという話はした記憶がないんだよな…
「お茶頂きたいから連絡するね!」
「あなたが言うから何か手段があるのよね?まぁくるかこないかわからないけど待ってるわね。」
………………………
〜数日後〜
夏休みに入った。
「マァト準備はいいかい?」
「あぁ!さぁ行こう!」
船の予約を夏休みの初日にしてじっくり堪能する予定だ。
船着場にはフラウもいた。
「少し早めに戻る予定だから先に学校で待ってるわね。」
「フラウに会いたいから僕も少し早く戻ってくる予定だよ!また学校でね。手紙書くよ!」
お幸せそうでなによりです
あ、足音近づいてくる…
これは…
ダダダダダダダ…
ガっッ!
「マァぐぅ〜ん!」
姉さんタックルだ。
「ぢゃんどぉがっごぅに、もどっでごないどだめだがらねぇぇぇぇ」
グシャグシャに泣きながら抱きついてきた。
「姉さん。大丈夫だよ。あなたのマァトはちゃんと学校に帰ってきます。あの時みたいに危ない所に行くわけじゃないから、心配しないで。」
追放された時のことが少しトラウマのようになっているようだ。
「たぶん俺からの手紙だと姉さんに届く前に捨てられそうだからスティアかフラウの名前を借りて送るから待っててね。」
「わかった。待ってるから絶対送ってよね!」
「うん。待ってて。」
さぁ夏休みの始まりだ!!!




