第38話
「まずはこれからだろう!」
腕をあげて勢いよくヘカトンケイルが襲いかかる。
それに合わせて俺も腕をあげてお互い組み合うかたちになった。
ググググ…
筋力の差はあるが、どうしたってこっちは腕が2本。この組んでいる間に横からパンチが来れば手での対処はできない。
「うむ…腕力では勝てぬか…これならどうする?」
予定通りの手を組んだままでの横からパンチ!
両サイドから挟むように打ち込んでくる。
「よっと」
手を離せないままだったが地面を蹴り、手の高さまで飛び上がる。
地に足がついてないところでその勢いのままヘカトンケイルは後ろにのけぞり俺を背中から強く打ちつけた。向こうの方が一枚上手のようだ。
ドンッ
「うっ…」
遠くでガヤガヤ聞こえる。応援してくれているのか心配してくれているのか…
先生が守ってくれるなら心配しないでおこう。
投げられた勢いで距離を取ると途端にヘカトンケイルの手には風が圧縮された風玉と火球がそれぞれ準備されている。
「2属性同時かよっ!」
目が合ったらどんどん投げてくる。
風玉はかすったり近くで避けても吸い込まれるように巻き込まれる。巻き込まれるとズタズタに切り裂かれる。
たまに2つが合体する。そうすると爆発が起きるので避けてもダメージが…
「クソっ!このままじゃらちがあかねぇ!」
スピードを上げて近づく。魔法のスピードよりも上回るから避けるのも近づくのも難なく進んだ。
「ここだっ!」
「そこは見えている。」
心眼のスキルで見透かされているらしい。
それなら見えてても間に合わない速さなら?
「これならどうだっ!」
……消えた。
バンッ!
ヘカトンケイルの腕が一本体からはじけ飛ぶ。
「なっ…!何が起こった!?」
「俺が速いだけ。心眼とやらでも見えなきゃ、見えても体が間に合わなきゃ見えてないのと同じだよ。」
「なぜ!?ワシのスキルを…だが、腕を落とされたならまた出せばよい。多腕!」
千切れたところから腕が生えてきた。
「再生できるのか…それなら!」
またスピードを上げたままヘカトンケイルの真下へ、そこから上へ蹴り上げる。
みんなからは急にヘカトンケイルが浮き上がったようにしか見えないだろう。
空中に浮き上がった体へ上下左右色々な角度から高速ラッシュ。マァトが速すぎてヘカトンケイルの体が右へ左へ空中で残像を残しながら細かい動きをしているようにしか見えない。
「これでどうだぁぁぁあ!」
最後に真下へ空中かかと落とし。
地面にめり込むほどの強烈な一撃。
「死ぬまで…負け…は認めん…ぞ」
ボロボロになって足もフラフラ、立っているのもやっとなはずだ。
「もう終わりだ。これ以上は…もう…」
「今…言ったで…あろ…う。死なぬ限…りワシは負けてはおらぬのだ。勝ち鬨をあげたいならばワシの命を奪うしか選択肢はない。さぁ死合おう!」
マァトは息を呑む。
目を瞑る。
クラウチングスタートの構えからまた姿を消すと次の瞬間ヘカトンケイルの首を折っていた。轟音とともに猛スピードのひざ蹴り。命を奪った。
その瞬間。
《強欲》
対象のスキルとステータスのすべてを奪いますか?
お前のすべてを俺によこせ!
[ヘカトンケイルのスキル、ステータスの奪取に成功しました]
よっしゃー!!
多腕も心眼もゲットだ!
動かない巨体は砂のようにさらさらと砕けた。
その中にはガラス玉のような物と球根のような種のようなものが落ちていた。
《鑑定》
炎の雫
%@$#&*℃№£€※への鍵
ステータスの種
ステータス向上するかもしれない実がなる
!!!
この鍵だけはもらわないといけない気がする。
こっそりアイテムボックスへ入れた。
「マァト…お前は本当に人間…なのか?」
先生は恐る恐る近づくも残りの生徒たちを制している。
「いやいや、人間だし。尻尾も角も羽も生えてないよ。ただの人間。ちょっと強いだけの人間だよ。」
「ちょっとの範疇は超えているが人間なのは信じていいんだな?」
「あぁ。」
「ボスが強かったのかは少しわからんが、お前の素早さや力が尋常ではないのはわかった。困った時は頼らせてもらうよ。」
お互い差し出す手はそれぞれ意味は違ったのかもしれない。疑いを恐る恐る信用に変えたい手と大きな力を見せて嫌われるを恐れる手だ。
「さぁお前たち!5層踏破だ。これからは帰り道となる。予定より時間が食ったから4層手前で野営して明日の朝早々にボス部屋を通過すればまだ再生しないから問題ないはずだ。明日はBクラスが入ってくる。彼らのためにもボスは保存せねばならないから3層を通過してくるのを確認してから脱出とする。帰りは遅くなるが、彼らが安全地帯にくるまでは休憩とするからじっくり英気を養ってくれ。」
先生はみんなに向けて話をすると飛び上がり生徒を先導する。
5層のモンスターもボス部屋までのは倒したが違う道にいたやつは生存しているためまだ完全に安全な道とは言えない。だがかなり進みは早い。
野営地に到着した頃には地上では夕食の頃。
「あぁ〜腹減った〜」
「今日の英雄さんは食欲旺盛なのね」
暗がりからハルがやってくる。
「おっ!ハルじゃないか。正直に答えてほしいんだけど、俺のこと怖いか?」
「うん…少しね。でも話せば、目を見ればマァトなのはわかるから大丈夫。私はあなたを信じてる。困った時は助けに来てくれる強力な王子様なんだもんね?」
「えぇ。お姫様のためならどこへでも伺いましょう!……ってこの流れまたかよっ」
「へへへ。あなたにお姫様って言われるのは悪くない気分よ。」
「明日Bクラス…キールが来る。」
「大丈夫。あなたがいるならなんとかなる。今はそんな気がしてる。頼りにしてるわ王子様っ」
「俺は大真面目なんだが!…できるならAクラスの後方に陣取っていたい。クラス同士の接触が伝われば準備もできるしな。」
「ごめんなさい。でも白馬には乗ってこないかもしれないけれど、あなたは私にとって救世の王子様なの。恥じらいを冗談に紛れさせてるけど本当に感謝してるの。確実に面倒事になるのに助けてくれるんだもの。」
「それは俺も利害の一致があったからだよ。一発わからせないと、いつまでも続くしね。」
明日はいきなり殴りかかられたりしないだろうか、誰も傷つけないなんて綺麗事はありえない。それなら俺の周りが傷つかないようにしないと。
明日はまた違う決戦の日になるわけだ…
はぁ…しょーもない




