第36話
安全地帯だし、洞窟なので雨風も気にする必要もないのでみんな床にそれぞれ毛布やマットを敷いて寝ることになる。
ご飯は戦闘班ごと、製作系は数人で班をつくり食事をしている。
「ちょっといいかな?」
青い瞳にスラリと長い銀髪。なんてったってスタイルいいし何より可愛いんだ!クラスの他の人はそんなに興味持てないけど、彼女は別格。まさに別格。
名前はハルマーナ・ダルク。彼女はランキング2位の文武両道なエルフさん。イメリア魔導皇国出身だそうだ。
「ん?どうした?」
「君の強さはどこからきてるの?あんなに落ち着いて誰より早く敵を見つけて的確に射抜くなんて…私も弓矢を使うけど狙おうと思ったらあそこまで早くは射れないよ。本当に98位なのか疑わしいよね」
「よく知ってるねぇ!どこから…修行の成果かな!」
(本当は強欲でもらった弓術スキルの恩恵とアルテミスのおかげだなんて絶対に言えない)
「そりゃあ入学と同時に3級になったなんて人は聞いたことがないもの!勉強できて武器も使えて…魔法もいけるの?」
「まぁそれなりに…ね。」
「私イメリア魔導皇国出身なのだけれど、エルフだからと魔法と弓矢どちらも昔から鍛えられてきたのよ。弓矢に関してはそこそこ自信あったけど、あなたには今のままならどうがんばっても勝てなさそうだわ。フフフ。」
不敵な笑みをしているのは何故??
「俺なんかに構っててもいいことないよ。何人かは目の敵にしてきてるし…」
「強さへの妬みは仕方ないのよ。みんな2級の時に強さを磨いてきて少しは自信ある中で圧倒的に強い年下がいたらそう見てしまうわ。」
「褒められてる…んだよね?」
「そうよ!べた褒めよ!素直に受け取りなさい。ごはんの邪魔じゃなかったらこのままご一緒していいかしら?」
「よろこんで。」
「そういえばちゃんと話ししたの初めてよね?せっかく同じクラスなのだしこれからもよろしくね。私のことはハルと呼んでくれるとありがたいわ。」
「こちらこそよろしく!俺のことはマァトと呼び捨てていいから気にしないで呼んでほしい。」
「マァトってテミス家ってところの人間なのよね?最初の頃名簿で名前を見た覚えがあるんだけど…」
「その家からは出されたんだ。だから今はただのマァトだよ。もうテミスは名乗っていないんだ。実家…じゃないけど、テミス家がどうかしたの?」
「あぁ…そうなのね。…Bクラスにもテミスとつく方がいるの知ってる?」
ハルの表情が少し暗くなる
「キール?」
「そう。」
「何があったか聞いても大丈夫そうかな?何か俺で力になれるなら言ってよ。」
「う〜ん…なんて言うかなぁ…彼からよくアピールされているような気がするのだけど、そんなに興味わかないのね。直接的なことはないからどうでもいいんだけど…う〜んと…」
「要するに迷惑だからやめてもらえるとありがたいってところか?」
「…うん。ありがとう。でももう家から出たなら関係はなくなったのよね?それならお願いするのも筋違いな…かな」
「まぁ…事情があってこちらから直接いきにくいところがあるから少し俺に任せてもらえないかな?」
「ありがとう。」
「ひとまず、今回の実習で俺等の最終日にBクラスとすれ違う時があるはずだからその時に俺とすごく仲のいいフリしてくれないかな?」
「仲のいいフリ?」
「俺のかなり近くで仲良く話ししたり笑っていてくれたらそれでいいよ。たぶん簡単に火がつくはずだからターゲットが俺にすり替えられるよ。」
「それではマァトが面倒なことにならない?」
「うん!予定通りならもうそろそろ噴火直前な時だから最後のダメ押しようと思って!」
「あなたは怖いもの知らずなところもあるのね。」
「…どうかね…俺に危害を加えようとしても正直キールくらいどうとでもなるさ。全然怖くないどころか少し楽しみなくらいだよ。」
「そういうところよ」
さっきまでの暗い表情から一気に反転して満面の笑みに変わった。美人な彼女は笑っている方が何倍も可愛いのだ。
「ハハハハハハっ!もし何かあってもマァトだけは敵に回さない方がよさそうね。信じるわ。」
(こんな美人の笑顔をキールなんかに向けさせてたまるかっ!)
「ちょっ!そういうことは心の中にだけにしてよ!面と向かってそんなこと言われるとさすがに恥ずかしいわ。」
ハルが頬を押さえて真っ赤になっている。
「え?あっ!え〜と…心の声が漏れてたみたい。キールみたいなアピールのつもりではないけど、君が美人なのは事実だ。それでそんな美人の笑顔を向けられることはどんな男にとっても幸せなことなんだよ。まぁ眼福ってことさ!」
あーーーーっ!!
なんで口からでるかなーー!!
恥ずかしいのはこっちの方だよ!!
「美人とか可愛いとかは正直何度も言われるけど、あなたの言葉はなぜか響くものがあった。いつもならふふ〜んって受け流せるんだけどなんか恥ずかしさが…もうっ!」
これは本当に事故だ。
でも彼女のこんな顔や態度を見られたのはよかった。
「ハルは卒業したらどうするの?」
「国に帰って…それで…たぶんどこかに嫁入りさせられるんじゃないかな…」
「貴族というかそういう位のある家なんだね。」
「まぁ…そんなとこよ。あなたのように自由に生きられるのならどんなによかったか…」
目が潤んで小さな涙が頬を伝った
「俺はもうそういうしがらみからは抜け出れた。卒業しても家の仕事とか引き継ぐものは何もない。ただ一介の冒険者となるだけだ。過酷なこともたくさん待ってるかもしれないけどそれでいいなら一緒に行くか?」
さらに涙の勢いは増すばかり
「ほぼ初めて話したようなあなたから誘われるとは思わなかった。とっても魅力的な話だけど、すんなり頷けない。あなたのその心意気には本当に感謝する。あなたの言葉にすがりたいのが本心。でも産まれてからもう私の運命は決まっているの…」
「運命は他人に決められるもんじゃないよ。自分で切り開いた先にあるのが運命だ。と俺は思っている。ハルの実力は実習の前線で見ていた上での勧誘だ。冗談で言っているつもりはないから考えておいて。まぁまだ卒業まで時間あるし、気が変わったら教えてね!」
ハルはマァトの手を握りそこにお辞儀をするように額に重ねる。
「ありがとう。私に踏み出す勇気が持てるようになったら拾ってくださる?私の王子様?」
「えぇ。姫からのお声がかかれば火の中海の中どこへでも参上いたします。」
顔を見合わせて笑えた。冗談めいて明るく話が締められたならよかった。
「明日からもがんばろう!」
「えぇ。あなたと話せて本当によかった。ごはん一緒にしてくれてありがとう。」




