第32話
「……久しぶり…だね」
「父様かおおよその話は聞いている。」
兄エルレインは聖教の敬虔な信者でテミス家に産まれたことをとても誇りに思っている。こういう人こそ教主となるべきであると常々思う。ただ、テミス家の人間はこうあるべきってとても強い思想があるからそれから外れるととっても冷たい視線を送られる。
…今のように…
「そう…なんだね。死んだって聞いてたのが生きてたんだから気にはなるよね。」
「家から放り出された人間だからもう家族とは思わないが、これからのテミス家を率いるうちの一人であるキールの邪魔だけはするな。それだけ言いに来た。もちろん何もなしに私からお前を害する行動は取らない。何もしないのであればな!」
「あぁ。憎さで言えば父様にはあったけど、それももうどうでもいい。俺の人生の邪魔さえしなければ。そう思っている。わざわざこちらからけしかけることはないさ。兄さんなら公平に見てくれるだろうから言っておく。キールからは入学以来とても醜悪な視線を日々送られている。何か起こるとしたら彼からの行動に対しての反撃だと思う。たぶん兄弟みんなに父様から連絡きているんでしょう?それならキールにそれてなく止めておいてもらわないと、こちらだけやられっぱなしって道理は通らないよ。個人的な害意は契約書の範囲外だろうからね」
エルレインの眉がクイッとあがり、頬が引きつる。おろしている手は強く握られている。
聖教の家で大罪というジョブ持ちは認められないのだ。それを粛清できたかと思えば血筋の弟よりもいい成績で自分の前にいるんだから認められないのだろう。
「わかった。気に留めておこう。あと家のために言うが、ドークス兄さんには気をつけろ。あの手紙をもらった時の怒り震える表情は何かあってもおかしくないように感じた。個室寮と神聖学の研究室には近づかない方がいい。それではこれで。」
「わかった。気をつけるよ。」
俺の返事を聞く前に踵を返し去っていった。
「スティアに関係ないのになんか嫌な気分にさせちゃったね。すまないね。」
「いやいや、ここは第三者の証人を得たと思ってもらえればいいよ。自分から害をもたらさないと言っていたね。」
「ありがとう。ルームメイトが君のような人で本当によかったよ。」
「でもドークスさん?には気をつけないとならなさそうだね。長男さんだっけ?」
「そう。さっききたエルレインは次男、話にでていたキールが三男だね。キールはBクラスにいるんだ。ランキング的にはギリギリだったから俺がいなかったらAに入れてたはずなんだ。」
「それで嫌な視線をもらってるんだね。今考えうる最悪のパターンは?」
「ドークス兄さんの直接もしくは間接的にダンジョンに俺が入ってる時に強力なモンスターや罠で俺に致命的なダメージを狙うって感じかな?そうなると俺だけじゃなくて他の人も巻き込んだりしてしまうからね。俺だけに絶対狙いをつけて他の人を巻き込まないならなんとでもなるんだけどさ…」
「たぶんそういう手合いは証拠は残らないんでしょ?」
「おそらく圧力かけるなり金を握らせるなりをして証拠はでないようになると思う。兄さんはそういう人だよ。まぁ俺から手を出せない以上最悪のパターンを想定しながらいるしかないよ。こなきゃラッキーってね」
「マァトはそんな強いモンスターよりも強いってことなんだね?」
「そうだね。これは強さにあぐらをかいているんではなくて本当に昔にいた魔王みたいな存在でようやく本気だせるかなってところだよ。冗談抜きに全力を出して5分もあれば学校全部を壊滅できると思ってる。」
あ…やべっ
これドン引きするやつだ。
俺は恐怖の大魔王かなんかになってしまったかな。
「実際に見てない以上どこまで信じていいのかわからないけど、マァトにはとんでもない力が秘められてるんだね。魔族領を2年も生き抜いてきたってこともあるだろうし…」
「君には秘密をたくさん強いることになって申し訳ない。これから見せるものを見てもまず、大声を出さない。逃げない、焦らないそれを約束してほしい。危害は絶対に加えない。信じてほしい。」
スティアは俺の目を見て頷いた。
みんなでておいで!
「きゅう〜ん」
「ぐぉぉぉ」
「わぉん」
スティアは口に手を当てて後方へ小さくジャンプした。
「!!!…ちょっと真剣な君の顔を見ててもさすがにここまでのことが起こると体が反応しちゃうよ。足が震えてる。」
「そうだよね…ちなみにここの部屋のサイズに合わせて小さくなってもらってるだけで、本当はもっと大きくなるんだよね。俺のスキルの話はしたよね。そのスキルの神獣化ということがあって俺と一緒に戦ってくれる心強い仲間なんだ。」
久しぶりに外に出せてあげられて良かった。
みんな喉を鳴らしながらすり寄ってくる。
撫でたりギュッとしてあげられてよかった。
たぶんスティアなら大丈夫だ。
「信じていいんだよね?」
「あぁ。もちろんだ。なんなら撫でてみる?」
3匹ともスティアの顔をうかがっている。
それに対してスティアは冷や汗まみれだ。
「う〜ん。それは遠慮しておこうかな。でもマァトに懐いていて安心していい存在なのはわかったよ。ただ、学校でだしたら想像通りの大変なことが起こるから絶対にやめてほしい。僕も誰にも言わない。これは家族にすら言えないね。」
「敵意さえ見せなければかわいいもんだよ。」
「今は無理だけど、回数を重ねれば慣れると思うよ。誰も来ない時なら出してくれて構わないよ。」
「ありがとう。俺のスキルだから中に入っているのも全然問題ないんだけど、出してあげられるなら外で自由にさせてあげあいんだ。今日は一緒に寝ような〜」
3匹は久しぶりに外に出られたからか俺から離れない。中にいた方が距離的に近いのでは?って思うんだが…
……
翌日教室につくまでにキールの視線を感じることはなかった。
このまま平穏な学生生活できることを祈ろう




