第29話
「ディケ姉さん…だね?」
目が潤んでいて視界がぼやける。
「そうよっ!あなただけのディケ姉さんだよ。…マァぐ〜ん!うわ〜ん!いぎででよがっだぁぁぁぁぁ」
ぐしゃぐしゃになりながらも相変わらずタックルしてくる。
スティアにアイコンタクトをして先に行ってもらった。
2年で姉さんはかなりオトナっぽくなった。
今までになかった感触が…ふふふ
「姉さん時間あるなら少し座ろうか?」
「うんっ!いてくれるのは嬉しいんだけど、なんで12歳のマァ君がここにいるの?」
「う〜ん…あれから魔族領に行っていい師匠に出会って、それから龍神国に入ってそこから受験したんだ。俺は優秀だったみたいだよ。入学試験うけたらいきなり飛び級で3級からの入学になったのさ。おかげで姉さんにも会えたからよかったよ。」
「生きてるのは父様の私兵の方から聞いていたんだ。あの日判別の儀のあと父様からはマァ君は死んだと聞いたけど、何日かしたあとに教えてくれた。父様がしてた裏の仕事も、マァ君へのひどい仕打ちも。でも無事になんとか2年を過ごせててよかった。」
「あいつ余計なことまで…生きてることは頼んだけどさ…」
得意げに頷く
「父様を諌めようとしたけど、ダメだった。私にはもうやらないからって口止めしてきたけど、たぶんやめてないと思うんだ。あんな家出ていきたいよ。もうマァ君もいないんだし、いる理由ないもの!」
「胸糞悪いな…あのクソタヌキ!姉さん!たぶん俺が生きてることが知られたら暗殺者が送られてきたり、兄さん達を使って嫌がらせしてくると思うんだ。だから、兄さん達や父様には知らせないでほしいんだ。」
「マァ君何か悪いことした?してないよね!?それなのにそんなのを恐れてずっと生きていかなきゃならないなんて間違ってる!一応聞くけど、実家への報復とか考えてる?」
「あの裏商売は本当に気に食わないけど、今の俺に危害を加えないならこちらから何かをしようとは思わないよ。あの家から出られただけでもう十分。」
「わかった。父様黙らせるから少し時間をちょうだい。一人娘だから嫁ぎ先を見据えてか多少のわがままは通してくれるのよ。」
「でも、それじゃあ姉さんはどこぞの貴族に対して政治的利用をされるだけなんじゃ…?」
「大丈夫。あんな腐った家に利用されるくらいなら自分から出るつもりだから!冒険者になるか大好きな弟くんのお嫁さんになるのも悪くないかな〜フフフ。今は利用価値のある一人娘の立ち位置を演じておくよ。」
「ありがとう。そういえば他の兄さん達もみんな学校にいるんだよね?本人には会ってないけどエル兄さんの部屋の前は通ったんだ。」
「みんないるよ。ドークスは7級、エルは6級、キールは3級、サバト2級。キールとは同級生になるからバレて父様に伝わるのは時間の問題だから先手を打つよ。」
「あっ!そうだルームメイトを紹介するよ!彼がスティアだ。」
少し離れたところでご飯を食べてるスティアの元へ。
「弟がお世話になっております。姉のディケと申します。よろしくお願いしますね。」
「はいっ!もちろん!こんなにキレイなお姉さんがいるとは…やっぱり僕はラッキーだ。」
「あら!お上手なのね。ありがとう。少し急ぎの用事ができたからここで失礼しますがまたお邪魔しますね。」
「是非またお待ちしてます!」
スティアのべた褒め女性がその人だったのだからラッキーと思ったり緊張したりするよねー
姉さんは足早に寮の方へ戻っていった。
「…いつかは会うと思ってたけど、こうも早いといろんな感情がわいてくるよ。」
「あの感じならマァトのお姉さんは心配しなくてよさそうだね。」
「あー落ち着いたらお腹余計に空いたわー」
…………
1週間後姉さんから渡された手紙には魔法契約書が入っていた。魔法契約書とは指定した人間以外書き込めないし、違約した場合には死ぬかそれに準じる呪いがかかるようになっている。
契約書にはこうあった。
1、マァトはテミス家の秘密を故意に公表しない
2、マァトはテミス家に対して積極的な敵対行為を行わない
3、テミス家はマァトをテミス家の人間として扱わない
4、テミス家はマァトへの暗殺、拉致、脅迫、妨害、傷害を行わない
5、テミス家は第三者を利用してマァトに対する同様の行為を行わせない
6、マァトとテミス家は互いの人生に干渉しない
以上を守れない場合マァトもしくはファルノールの命を奪う。最後にマァトとファルノールの連名のサインで締められる。
「姉さん本当にありがとう!これで自由だ。本当に自由だ。ちなみに兄さん達からちょっかいかけられたのに対抗するのは敵対行為?」
「頼りになる姉さんでいられてよかったわ。たぶんそれはテミス家ってことじゃなくて一個人に対するものだから大丈夫じゃないかな。」
「よかった。やられっぱなしでやり返せないのはちょっとね…」
「これからはもう一人じゃないから、私もいるからしっかり甘えなさい!マァ君には2年分甘えられてないし!」
「こんなキレイな姉さんなら色んなところからお誘い多いんじゃない?」
「マァ君以外の男は別に何とも思わないから誘われても適当にいなして終わりよ。」
この人本気で結婚とか考えてるのかな…
キレイな人なのは間違いないし、腹違いの兄弟だから色々問題はなさそうだし…って受け入れる方に思考が…
契約書の話をスティアにも教えよう。
たぶん喜んでくれるだろう。
これからはキールや兄さん達といかに距離をとるかだな…




