第27話
「俺は聖教国教主の私生児なんだ。一応兄弟の末弟として育ててくれた。そして家の裏側の部分に触れてしまう事があってからは悲惨なものだったよ…」
「裏側?悲惨?」
「裏側については他の兄弟もいるから折を見て話すからここでは割愛させてもらうよ。裏取引をあえて失敗させるように働いたことがきっかけで…折檻を受けていた。」
「それからジョブ判別の儀で…うーん…ここからの話は本当に誰にも言えない話だから心に留めておいてほしい。」
目を合わせて力強く頷く。
「俺は『七つの大罪』というジョブが判別された。そこで教主は誰も知らない、聞いたことのないジョブで大罪なんてかいてあるもんだから俺を放逐したのさ。もともとこの家には俺はいなかったとも言ってたはずだよ。対外的にはそういう話で、兄弟や内輪の人間には神罰がくだって死んだことになっている。それで俺は北の魔族領に捨てられた。」
スティアは怒りと悲しみの入り混じった顔をしている。合いの手を入れずにしっかり聞いてくれている。
「魔族領ではあれこれ世話してくれた師匠にあたる魔族がいてそこで本当の親に出会ったと思ってる。教主の家から出されてどう生きるか迷っていた中で世界を見て知ってくるって、生きる目標を見つけた。だからそのためにこの学校にきた。」
「実家への恨みや怒りはないのかい?」
「なくはないけど、どちらかと言えばあの腐りきった家からでられてよかったと思ってる。ただ…」
「ただ…?」
「さっき食堂に行った時に姉とすれ違った。学校にきたら会うという可能性をすっかり忘れていたのさ。改名したり偽名を使うのを忘れていたよ…」
「それは大きな失敗だね。…でも実際に何か罪を犯したわけでもないし、放逐されて家としての処置も終わってるなら気にしないでもいいんじゃない?」
「一応裏側を知っている人間だからどうにかして俺を亡き者にしようとするんじゃないかと思ってね。それさえ気にしなくていいなら姉さんにはあの家で唯一の頼れる信じられる人だから元気な姿を見せたいさ。」
「たとえ広い学校といえど、いつかバレる時は来ると思う。名前がダメなら何か防衛手段を増やすのが手っ取り早そうだね。実家に使えそうな魔道具がないか聞いてみるよ!」
「ありがとう。ここまで聞いて分かる通り俺に関わるとリスクがある。だから…」
「だから!?同じルームメイトの時点でもう避けようのない立ち位置なんだよ。別に怒ってもないし、面倒くさいとも思わない。ジョブが何だよ!名前が危なかしいからってその人が危ないわけじゃないんだ!ジョブだってスキルだってどんな能力かも大事だけど、それ以上に誰が使うかが大事なんだよ。言葉を選ばず言えば君の父親はクソだね!マァトの言う通り家を出られて幸せだと思うよ。」
急に激昂してビックリしたが予想通り本当にいい人なんだな
今日知り合ったばっかりなのにこんなに言ってくれるなんて…
「スティアありがとう。本当にクソなんだよ。アイツは。俺も罪を犯してないのに大罪なんて言われても…って思ったから魔族領で出会った師匠と旅をした2年間でスキルもジョブも使い方次第ってことには気づけたんだ。だから今は気にしてないけど、名前がひっかかるから積極的にはジョブは見せないようにしてる。」
「そういえばその七つの大罪ってユニークジョブなんじゃないのかな?」
「ユニークジョブ?極稀に発生するってやつ?数があまりにも少ないから歴史書やジョブ一覧に載ってないってこと?」
「もしかしたらってさ。ユニークジョブは遺伝もしないから発現したとて歴史の都合でねじ曲げられることもあるだろうし、資料もほとんどない。知らない人だらけでも説明がつくよ。まぁ良い方に解釈すればだけども…」
「いや、だいぶ救われるよ。そしてこの不明なジョブの解明の糸口がすこし見えた気がする。ここは学校なんだし図書館で探せば何か見つかるかも!ありがとうスティア。でもユニークジョブなんてどこで知ったの?」
「それは僕が『魔石彫金師』というユニークジョブ持ちだからだよ。」
「へ?」
そっちもかーい!
「ドワーフ族には数百年に一度、金属や鉱石、加工に関わるユニークジョブ持ちが産まれるんだ。でも後にでてくることは二度とないんだよ。だから偉業を達成してもみんなの聞き馴染みのいい言葉に書き換えられてしまうんだそうだ。だからユニークジョブに関しては理解があるんだよ。」
「え?じゃあ今までの歴史書の偉業を達成した者の伝記とかにも実はユニークジョブ持ちがいたかもしれないけど、歴史の圧力に潰されたってことか…でも種族特性か…歴史を紐解いて研究するのも面白そうだ!世界各地の歴史や伝記の真実を探る!冒険っぽくていいなぁ」
「その冒険の途中に僕の家にも寄ってくれるんだよね?」
「お邪魔でなければぜひ寄らせてよ!」
「まぁまずは学校卒業してからだろうけど、その時は是非接待させてほしい。」
「楽しみにしてるよ!マァトの大冒険を色々聞かせてあげられるんではないかな。あースッキリした!」
「初日にここまで打ち解けられるのはありがたいけど、ここまでの話はちゃんと相手選ばないと危ない目に遭うよ!マァト大丈夫かな?」
「俺割と直感信じると悪いこと起きないから大丈夫さ!」
「ハハハハ!いやいや、それが危ないんだって。」
初日からしっかり腹を割って話せる友達になるとは思わなかった。
初日の夜は思ったよりもだいぶ長い夜となった




