第26話
「あれ?マァトじゃないか?先に行ったはずだけど、早食いなのかな?」
「あぁスティア!いや…そうじゃ…なくて…建物いっぱいありすぎてどれが食堂かわからなくなったら自分の現在地もわからなくて戻るに戻れなかった」
「広いし、建物いっぱいあるから迷っちゃうよねぇ。僕も一段落ついてご飯に向かうところだったから一緒に行こうよ!」
「ありがとう!助かった〜。スティアはだいたいの地理は把握してるの?」
学内地図を持たずに迷うことなく進むスティアに羨望の眼差しを向けてしまう。
「僕には兄がいてね。学内の地図はもともと情報をもらっていたのさ!どうせ授業が始まれば学内の案内はあるんだろうからとりあえず着いてすぐ必要になる所だけはおさえてあるよ。」
「あとで時間のある時でいいから教えてもらってもいいかな?」
「もちろん!でもマァトはどこにいきたいの?商店街かな?」
「そう!どんな品揃えのお店があるか気になっちゃって…」
少し気まずそうな顔で
「あー…先に言って申し訳ないけど、楽しめるような変わったものはないみたいだよ。兄から聞いた話ではあるけど、実習や製作に必要な材料や物資しか置いてないんだって。外から入ってくる珍しい物は学園都市じゃなくて隣の貿易都市の方に行かないとお目にかかれないと思うよ。」
明日1日の予定が…残念。
「そっか…それなら時間あるしあてもなく自分でマッピングしようかな。」
「おもしろそう!僕も一緒に行っていいかな?」
「もちろん!当てもなく歩くからどこまで行くかわからないけど、それでいい?」
スティアはキラッキラの笑顔で大きく頷くと足を止める。
「さぁついた。ここが食堂だよ!」
入口ですれ違った。時が止まったように感じた。
忘れるわけもない。たった2年だけど、前よりもっともっとキレイになっててビックリしたけど…
「ディケ姉さんだ。」
意識して口に出したわけでもないのに思わず言葉があふれ出た。
食堂はガヤガヤしていて大盛況。
俺の独り言なんてかき消される。
もちろんスティアも気づいていない。
「マァト!こっちこっち!」
んんんん!呼ぶなー!!!俺は死んだことになってるんだからっ!!
……って何で改名したり偽名使ったりしなかったんだろうか…今になって後悔している。
「待ってよ〜」
振り返る感じでもないし、たぶん気づいていない!そのまま外へ行ってしまった…
そもそも俺がここにいるとも思ってないだろうから気に留めることもないだろう…
考えてみれば姉さんや兄さん達がいることを忘れていた。飛び級したから余計に近づいているだろう。
兄さん達が飛び級していてくれれば会うこともないんだろうけど…
スティアは信用してもいい人に見える。見えるだけだ。まだ分からない人にどこまで話ししていいのかまったくわからないけど、自分の平穏のためには味方を作らないと。中途半端に話してもダメだから今までの全部話さないとならない。
いずれバレる。姉さんなのか、兄さんなのかはたまた名前で誰かに…後手後手に回るよりは思いっきりいこう!
「食堂広いね〜マァトは何にするの?ほとんどタダか少し払えば食べられるなんて…迷って決められないよ。」
スティアから話しかけられているのに動悸が激しく落ち着かない。驚きと迷いと嬉しさとほんの少しの安堵感が入り混じって今どんな表情をしているのだろう…
「マァト聞いてる?そんなにお腹空いてるの?大丈夫?」
「…っあぁ。ごめんごめん。そうじゃないんだ。部屋に戻ってから話せる時間…あるかな?」
「今じゃなくてってことだよね?…わかった。それでメニューは決まったの!?」
「ん〜とりあえず肉が食べたいな。」
ここは中央大陸でまわりがぐるっと海なため海産物が有名だし、すべての大陸の交易路なため色々なもので溢れている。世界中の食材もここの国で揃わないものはないくらいだ。
「僕は兄さんオススメの魚のスープにしてみようかな!」
………
とっても美味しい!!
ご飯食べるために学校に通っていたいくらいだ
「他のメニューも期待度あがるなぁ」
「そうだね!そういえばスティアのお兄さんは今何級なの?」
それに加えて何人兄弟なの?って言葉は飲み込んだ。
「今は5級だね。僕もだけど、製作は得意だからスイスイいけるんだけと、勉強がどうしても…ね。来年には妹が初級に入学するよ。」
「実家は工房か何か?」
「そうだよ。武器防具から魔道具まで何でも作ってるんだよ。どちらかといえば兄さんが魔道具作りの錬金術師で僕が武器防具とかの鍛冶師って感じかな。」
「マァトはどこの出身なの?」
「聖教国だよ。そこら辺についてはちょっと込み入った事情があるから後で話させてもらっていいかな。」
「…わかったよ。さっきのだね。」
……
「あ〜お腹いっぱい!こんなになったのにタダだなんて…昇級試験ギリギリまでひっぱったっていいいな。なんも用事ないなら部屋に戻ろうか。」
「そうだね。僕は部屋に戻ってすこし荷解きすれば落ち着くところかな。」
食堂を出た時少し周りを警戒してキョロキョロしたが、誰も見知った顔はなかった。
姉さんには会いたいが、どんな顔して会えばいいのか…
部屋に戻るとスティアは温かいお茶を入れてくれた。まだ片付けてない大きなカバンを椅子がわりにして聞く態勢は万全の様子
「気になるから作業するより先に聞きたいんだけど、いいかな?」
「わかった。どこから話ししていいかわからないから俺の産まれてから今までを話すね。」




