第21話
「ようこそ対戦者よ。ノブナガから言われるくらいだから期待していいのだろう?」
石畳の正方形の闘技場
そして
「わぁー!!やれやれー!」
「俺は領主様に財布の中身全部突っ込んだぞー勝ってくれー」
「俺は大穴狙いなんだー挑戦者ーがんばれー!!」
圧倒的観客。
さっき決まったばっかりなのに何故こんなにたくさんの観客が…
「壮観じゃな。ここの民は皆戦いを見るのも、やるのも大好きなんじゃよ。」
「戦闘民族かよ」
「お主に大枚張ってくるかのぉ。だが見誤るなよ。あやつは強者じゃ。単純な肉体の強さではお主に敵うものなどはおらんじゃろうが、戦いにおいて強さとはそれだけではないぞ。心しておけ。」
「はいっ!プライドとグリードは中に入っててね。」
元来スキルな二匹はマァトの体に戻っていった。
「これより領主フォルダム様対挑戦者マァトの対戦を始める。魔法、武器は何でもあり。ルールはどちらかがリング場外になるかダウン10カウント、降参のどれかで勝敗を決します。致命的なケガ、場合によっては死んでも恨みっこなしの一本勝負……始めぇぇぇっっ!」
「うぉぉぉっ!」
猪突猛進。
でも単純な突進ではない。
スピードも兼ね備えたステップワーク。
強者特有の圧をかけながらフォルダムは迫ってくる。
…速いけどまだ追える。
…慢心はナシだ!
「まぁずは力比べといこうか!」
身長差ありすぎて手を合わせられないが相撲のように組合う。
「うぉおぉぉぉおおりゃぁぁいい!……ん?こりゃあなかなかの大物だな!」
体格差を覆して微動だにしない。
「それではこちらからいきます!」
組んでいる手を払って背後へ回った。
「そりゃそっちくるよな」
「んなっ!」
ガンッ
背後を取れたはずなのに正拳突きで飛ばされる。
速さではこちらが上だ。
スラッシュビートもどきっ!
タタタタッ!
シュッ!
今度は下から懐に…
入れない。
「クソっ!」
「まだまだ若造には負けてられんな!」
近づいたところをカウンターで蹴り飛ばされた。
なぜだ…
速さでは間に合っていないはずなのに後の先をとられる。
「我との経験の差だろうよ。次にどこに攻撃したいのか、どこにいきたいのかお前からプンプン匂ってる。たとえ速さで間に合わなくともお前の攻撃はあたらんよ。」
落ち着け。
考えろ…視るんだ。
「考え事か?余裕だな!」
ガードが間に合ってるのでほぼノーダメージ。
「もう!埒が明かんな」
本当にそうだ。こっちの攻撃は読まれるし、あっちの攻撃は当たらないか、あたっても大したことはない。
フォルダムが何か力を溜めている……?
「ロックジェイル!」
今の感覚は…!
下から何かくるっ!
ガンッガン!
間一髪!
「磔にできれば少しは楽なんだがな」
何故か下から何かくるのがわかった。
殺気のような攻撃意識の気配が伝わってきた。というか見えた。
視るんだ…視るんだ…
フォルダムが大きく振りかぶって地面に一発。闘技場の一部が割れて煙幕のようになる。
轟音と煙に目を取られたが、
今度は左だ。
「お?これも避けるか。」
確実に見えた。
これが気配か。
攻撃する意識が体に向かってくるのがわかる。
これがわかれば相手の攻撃も読める!
逆手にとれば…
煙の向こうに戻ったフォルダムを追う。
攻撃意識を向けてから一瞬でその反対へ
背後を取ったうえで首を絞めるところになった。
「うぉぉぉ!」
肘打ち、背中から地面への叩きつけ
直接つかんで振り払おうともした…
フォルダムの力では俺を振り払えないし、俺が力をいれれば一瞬で首を折ることも可能だ。
「どうですか?」
「うむ……降参だ。」
「領主様がまけたーぁぁぁあだ??」
「挑戦者すげーぞー!!」
「高い見物料払っちまったなぁ」
「お主のおかげで懐がだいぶ温まったぞ。ヤツの強さがわかったならお主にしばらく敵らしい敵は現れんじゃろう。だが、慢心するなよ。気を抜けば強者とて路傍の草と同じよ。」
「はい。師匠のお友達のおかけでまた一段階強くなれた気がします。」
スキルやジョブに頼らない戦い方は多いに越したことはない。
「カーッカッカッカ!強かった強かった!ノブナガなんかよりずーっと強かろう!我に勝った強さを見込んで一つ仕事を頼まれてくれんか?」
「仕事ですか?俺たちでできることですか?」
「お前ら二人だからこそだ。」
「して何を?」
「ここより北に行くとフェンリル達の住まう冬山があるのだが、最近イエティのやつらが数を増やしてフェンリルの奴らが困ってるそうなのだ。全滅とは言わないが数を減らして脅威をなくしてほしい。」
「フェンリルとイエティは対立しないとならないのですか?共存はできないんですか?」
「うーん…あいつら血の気が多いからな…自分から仕掛けるんだよ…強さとしたらほぼ同格。一対一なら勝率も同じくらいだろう。だから同数くらいまで削ってくれないか?さすがに種の絶滅の可能性は避けたいのだ。」
「…なんか釈然としないけど、わかりました。お受けいたします。」
「先にお主がその狼どもを躾けてやればいいんじゃなかろうか?助けを聞くくらいなのだろう?」
「それはそうなんだが、あいつら聞いた話を理解しても本能で争うんだよ…」
狼系は脳筋ファイターばっかりってことか…
「師匠はイエティと戦ったことあるの?」
「あの肉ダルマはなかなかの美味じゃぞ!明日の朝にでも出発しようかの」
「はいっ!」




