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吠えろ!ガラクタ~塵芥戦術~  作者: 堀尾 朗
第14章「大宴会」
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—1—「和奏の珍事件」

 駿河が乗り込んだ電車は、池袋へ向かう彼にとって、まったく逆方向だった。

とはいえ、上野へ引き返すのも気が引けるため、いくつか乗り継ぎを重ね、ようやく池袋駅に降り立った。


そのまま足を向けたのは、飯島教の教会がある、あの映画館だ。


正面入口に立った駿河は、思わず足を止めた。


【本日は休館日です】

看板が掲げられ、扉には鍵がかかっている。


――おかしい。

駿河はこの映画館の常連だ。

ここに定休日など存在しないことも、今の時間帯で営業が終わるはずがないことも、よく知っている。


胸の奥に、わずかな違和感が広がる。だが、ここで立ち止まって考えていても仕方がない。


駿河は建物の脇へ回り込み、裏口へと向かった。

インターホンを押す。

すると、わずかな間のあと――中から応答があった。


インターフォン越しに、かすかなノイズが混じる。

「どちらさんですか?」

聞き慣れた声――和奏だ。


「駿河です」

一拍の間。


「あっ、駿河さんですか!」

途端に声が弾む。

「どうでした? うまく行きましたか? 他の方もご一緒ですか?」


矢継ぎ早の質問に、駿河は小さく息をついた。

「いや、まず中に入れてくんない?」

「あっ、そうですよね。失礼しました。すぐに開けに行きます」

通話が切れる。


しばらくして、内側から鍵の外れる音が響いた。金属が擦れる乾いた音が、静かな裏路地にやけに大きく響いた。


やがて扉が開き、和奏が顔を覗かせた。

「お疲れ様です。どうでした? うまく行きましたか?」

「ん? あ~なんとか。最後は逃げ切るのに必死だったけど…」


駿河はそう言いながら、自然な流れで中に入ろうとする。

だが――和奏はその場から動こうとしない。

結果、扉の前で立ち止まる形になった。


「他の方は一緒じゃないんですか?」

「そう。追手を振り切るために分かれたんだ。それで、ここで待ち合わせってことにしてる」

「そうなんですか。他の人も無事に逃げ切れていればいいですね」


和奏は頷きながら、なぜかその場で話を続ける。

「わたし、今日は大学が午前中だけだったんですよ。そしたら甲斐さんが――」

「このまま玄関先で話すの? 中に入れてくれよ」

堪らず、駿河が不満を口にした。


和奏は一瞬ぽかんとしたかと思うと、次の瞬間には慌てふためきながら扉の取っ手に手を伸ばした。

「あっ、そ、そうですよね。失礼しました」

指摘されて、ようやく状況に気づいたらしい。

そして――急に思い出したかのように、勢いよく扉を引き開ける。


――その瞬間。会話するため顔を近づけていた駿河の額に、扉の角が綺麗に直撃した。鈍い音が、小さく響く。

「いたっ! なんで?」


思わず額を押さえ、顔をしかめる駿河。

和奏は一瞬ぽかんと固まり、状況を理解した直後――


「あっ、ご、ごめんなさいっ!」

慌てて手を動かしたかと思えば、今度は勢いよく扉を閉めてしまう。


バンッ、と乾いた音が辺りに虚しく響いた。

取り残された駿河は、しばし呆然と立ち尽くす。

やがて、深いため息をひとつ。


「……あいつは、何がしたいんだ?」

お読みいただきありがとうございます。

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