甘い怪物 ①
『Cブロックを勝ち進めたロロロ選手ッ!
しかし次の相手は――大神楽常連、シュガー☆選手ッ!!
ロロロ選手、この壁を越えられるのかァァァッ?!』
大型モニターに映し出された二人。
シン達は、決勝でどちらかとぶつかるロロロかシュガー☆の試合を眺めていた。
「長距離VS接近戦オンリーか……」
シンは腕を組む。
「今後の対策として、ちゃんと見ておくべきだよな!」
『対策も考えず、先ほどまで駄弁っていたのはマスターくらいですよ』
「いや、話しかけてくる粗大ごみが悪い」
ピロンッ。
「ん?」
端末にメッセージが届いた。
『誰が粗大ごみや?』
「…………」
シンは、ゆっくりと顔を上げた。
右。
左。
後ろ。
――いない。
「いや、こえーよ」
「マスター」
「なんだ?」
「集中してください」
「いやいや、こんなの無理だろッ?!」
ピロンッ。
再びメッセージ。
『試合見ろや、小学生』
「お前も見てんじゃねぇか!!」
◇ ◇ ◇
『ロロロ選手! 撃つ! 撃つ! 撃ち続けるゥゥゥゥ!!』
無数の閃光が、舞台を駆け抜ける。
その中心を――
シュガー☆は走っていた。
右へ。
左へ。
身を翻し。
飛来するビームを、紙一重で躱していく。
「……すげぇ」
シンがモニターへ身を乗り出す。
「全部避けてるぞ……」
次々と飛来するビーム。
そのすべてを、シュガー☆は紙一重で躱していく。
「…………ん?」
ふと。
シンが眉を寄せた。
「なぁ、ECO」
「はい」
「アイツ……」
モニターの中。
ビームの雨を駆け抜けるシュガー☆を見つめる。
「楽しそうじゃないよな?」
「…………?」
ECOが、シュガー☆の表情を解析する。
「たしかに、先ほどまでの態度とは違いますね」
「だよな……」
シュガー☆は――
笑っていなかった。
先ほどECOへ抱きついてきた時の、あの弾けるような笑顔はどこにもない。
ただ。
ひどく――つまらなそうだった。
ピロンッ
『よう見とけ、小学生』
「?」
『あれが第三期甲級12位、シュガー☆キャラメル☆ニッパーや』
シュガー☆が、ぽつりと呟く。
「……そっか」
また一発。
首を傾けるだけで躱す。
「君――」
シュガー☆の瞳から、興味が消えた。
「シュガー☆のこと、“ビター”なんだね……」
ロロロは答えない。
距離を保ったまま――さらに射撃。
シュガー☆は、それすら躱した。
「なら――」
手にしていた刀が変形する。
刃が伸びる。
柄が展開し――
一振りの槍へ。
「シュガー☆も君のこと――」
構える。
「と~~~~っても、“ビター”だよ」
――投擲。
ドッッッ!!
「――ッ!?」
一本の線が、戦場を貫いた。
躱す暇すらない。
槍はロロロの飛行ユニットへ――直撃。
バギィッ!!
『飛行ユニット破損ッ!!』
「なっ――」
ロロロの身体が墜ちる。
ドゴォォンッ!!
地面へ叩きつけられ――
砂煙が舞った。
「…………ッ」
ロロロが顔を上げる。
その瞬間。
目の前に――
足。
「――え?」
いつの間に。
シュガー☆が立っていた。
先ほどまで離れていたはずなのに。
笑っていない。
怒ってもいない。
ただ――興味がない。
シュガー☆は刀を振り上げる。
「バイバイ」
そして。
「君はもう――いらないよ」
斬ッ――!!
ブゥゥゥゥゥゥ――――ッ!!
『決着ゥゥゥゥゥゥ!!!』
大型モニターに――
《WINNER シュガー☆キャラメル☆ニッパー》
「…………」
シンは、しばらく画面を見つめていた。
「…………なるほどね」
「マスター?」
「なんとなく分かったよ、アイツ」
シンはモニターを見つめたまま、腕を組む。
「小学生のときな、チャンバラして遊んでたのに、エアーガン使ってくるやついてさ」
「はい」
「なんか……面白くなくなったッてか、冷めた」
「…………」
「こっちは剣で遊びたいのに、遠くからパンパン撃たれてさ。いや、そうじゃねぇだろって」
「なるほど」
ECOが小さく頷く。
「つまり――“同じ土俵”の相手と戦いたいのですね」
「たぶんな」
ピロンッ。
『やっぱお前、小学生やんけ』
「昔の話だよッ!!」
ピロンッ。
『精神年齢の話や』
「ぶっ飛ばすぞ粗大ごみ!!」




