【師走萬神楽編】 初戦②
大型モニターに、抽選を終えた8名の名が映し出される。
【師走萬神楽 組み合わせ】
【Aブロック】
A1 サクラ
A2 マミー・マミー
【Bブロック】
B1 オイ
B2 ECO
【Cブロック】
C1 ハッちゃん
C2 ロロロ
【Dブロック】
D1 ハローデイズ
D2 シュガー☆キャラメル☆ニッパー
「…………」
シンは大型モニターを見上げる。
ここまで来た。
幾千神楽を突破した――僅か8名。
その中に。
ECOの名前がある。
「…………へへっ」
シンは端末を取り出した。
「なぁECO!記念に一枚、撮っとこうぜ」
「記念……ですか?」
「おう!」
大型モニターへ端末を向ける。
パシャリッ。
「…よし!カウンターにでも飾ろっかなぁ〜
♪」
「ですが、マスター」
「ん?」
「【記念を壊す者】が、すぐ隣にいますので注意を」
「…………」
シンはゆっくりと憶形を確認し、
サッ。
素早く端末を隠した。
「テメェら、大概にしとけよ!!!」
「だって【記念を壊す者】だもんなぁ。写真に写り込んでくるかと思った~」
「小学生か?!そろそろぶん殴るぞッ?!」
『間もなく、Aブロックの試合が始まりまーす! 出場選手以外の方は、控え室へ移動をお願いしまーす!』
「…………」
「…………」
シンと彰が顔を見合わせる。
さっきまでふざけていた二人の表情が――変わった。
「続きは試合で決めようや」
彰がニヤリと笑う。
「覚悟しとけよ――」
「粗大ごみ!」
「ガキがッ!!」
◇ ◇ ◇
控え室。
大型モニターには、Aブロック――
サクラ対マミー・マミー。
二人の戦いが映し出されていた。
『攻める! 攻める! 春の花、サクラ選手ッ!! まさに桜花乱舞!!』
モニターの中を、無数の斬撃が駆け巡る。
『止まらない! 止まらないッ!! サクラ選手、怒涛の猛攻ォォォ!!』
白い斬撃がステージを覆う。
『だが、マミー・マミーも倒れないッ!! 何度散らされようとも蘇る! これぞ不死身のミイラ戦法だァァァッ!!』
『春が先か!? 黄泉が先か!?』
『季節も生死も関係ねぇぇぇ!! これが萬神楽だァァァァ!!』
実況の声は、さらに熱を帯びていく。
『マミー・マミーは、この春を越えることができるのかァァァッ!!』
誰もが息を呑み、Aブロックの戦いを見つめていた。
「…………」
「…………」
シンも。彰も。
真剣な表情で、モニターを見つめている。
「…………」
「…………」
「粗大ゴ――」
「聞こえとんねん!」
「まだ何も言ってねぇだろ!?」
「言いかけたやろが!」
「はぁ?『巨大ゴーレムみたいだな』って言おうとしたんだよ!」
「んな訳あるかッ!!どこが『巨大ゴーレム』や?!」
「静かにしてください」
ECOが二人を見る。
「「すみません」」
「…………」
再び静かになる。
二人の視線がモニターへ戻った。
『サクラ選手ッ!! さらに畳み掛けるゥゥゥ!!』
「…………」
「…………」
「粗――」
「マジで殴るぞ」
「まだ一文字だろ!」
ほんの一瞬。
二人がモニターから目を離した――
その時だった。
ドォォォンッ!!
「――ッ!?」
慌ててモニターへ視線を戻す。
控え室が静まり返った。
先ほどまでそこにいたはずの――
マミー・マミーが、いない。
「…………は?」
シンの口から、間の抜けた声が漏れる。
『き、決まったァァァァァ!!』
実況者の絶叫が、静寂を吹き飛ばした。
『咲いた! 咲いたぞォォォ!! 冬の大舞台に桜が満開ッ!!』
『マミー・マミーを散らし――勝者、サクラ選手ゥゥゥゥッ!!』
『師走萬神楽に、一足早い春の訪れ!!春は――すぐそこだァァァァァッ!!』
ワァァァァァァァァッ!!
大歓声が会場を揺らす。
控え室にまで、その熱気が伝わってくる。
「…………」
シンは大型モニターを見つめていた。
「いや、肝心な必殺技、見損ねた?!」
「人をおちょくるからや!」
「粗大ごみのせいで……次、アイツと当たるのに」
「なんや? 俺に勝てるつもりか? あ?」
「??? 当たり前だが???」
「…………」
彰の眉がピクリと動く。
シンはもう一度、モニターを見る。
そこには――
勝者として立つ、サクラの姿。
「対策が……」
ほんの一瞬だった。
彰とくだらない口喧嘩をして、目を離した。
――ただ、それだけ。
それだけで。
試合は終わっていた。
ECOもサクラを見つめる。
シンは小さく息を吐く。
ここにいるのは――僅か8名。
だが、その8名全員が。
あの《AI Level.12》を越えて、ここにいる。
『それでは続きまして――』
会場に、再び実況が響き渡る。
『Bブロック!!』
「――!」
シンの表情が変わった。
『オイ選手、対、ECO選手!』
ワァァァァァァァァッ!!
『両選手――準備をお願いしまァァァァす!!』
「…………」
シンが立ち上がる。
「さ、行こうか?!」




