【師走萬神楽編】 初戦①
ガラポンによる組み合わせ抽選。
一人。また一人。
枠が埋まるたびに、歓声が上がる。
大型モニターのトーナメント表が、少しずつ埋まっていく。
そして――
粗大ご……いや、憶形 彰の番が来た。
彰は壇上へ上がり、ガラポンを回す。
ガラガラガラ――。
、
カランッ。
一つの玉が転がり落ち、司会者が拾い上げる。
「憶形 彰選手――――B2!」
シンは大型モニターへ視線を向ける。
残る空席は――二つ。
B1とD2。
「…………」
「マスター……」
「どした?」
「顔がニヤけてますよ」
「そりゃーそーだろ! あの時のリベンジができるんだ。嬉しいに決まってんだろ?」
「ですが、残るのは二席。初戦か――互いに勝ち進めば、決勝でしか当たりませんよ?」
「ま、どっちにしても今の目標は優勝だからな!」
シンは大型モニターを見上げる。
「粗大ご……彰との試合は、オマケってことで!」
シンの口角は――完全に上がっていた。
「シン選手、壇上へどうぞ!」
「よし……!」
一度、深呼吸。
壇上へと向かい、ゆっくりとガラポンへ手を伸ばす。
ガラガラガラ――。
「…………」
一回転。
二回転。
ガラガラガラ――。
カランッ。
一つの玉が落ちる。
トンッ。
トントントン……。
会場の視線が、その小さな玉へ集まった。
司会者が拾い上げる。
「…………」
ゆっくりと番号を確認した。
「シン選手――――B1!」
「…………」
大型モニターが更新される。
【Bブロック】
B1 ECO/シン
B2 オイ/憶形 彰
「…………へへっ」
シンが笑った。
「引いちゃった(テヘ)」
ECOも大型モニターを見上げる。
「初戦は粗大ごみのようですね」
「お前、もう完全にインプットされてんじゃん……」
「そのような事実はありません」
「じゃあ彰って呼んでみ」
「粗大ごみの彰」
「悪化した!?」
シンは再び大型モニターを見る。
そして――ある名前に目が止まった。
「ってか、アイツの御子……『オイ』って名前なのか?」
「そのようですね」
「…………変わった名前だな」
「あ?」
聞こえていたのか。
少し離れた場所にいた彰が振り返る。
「文句あるんか? 名前なんざ、いちいち呼ぶの面倒くせぇだろ?」
彰は隣に立つ御子を親指で示した。
「『オイ』って呼んでたら、そのまま定着しただけや」
「…………」
シンの眉が動く。
「ふざけんなよ!」
「なにがや?」
「もっとちゃんとした名前つけてやれよ!」
「はぁ?」
彰が眉をひそめる。
「お前らも俺のこと『粗大ごみ』呼ばわりしとるやろが! いちいちやかましいんや!」
「…………」
「…………」
シンとECOは顔を見合わせた。
何も言えない。
正論だった。
「……ECO」
「はい」
「どうしよう」
「不利です」
「んーーーーーーーっ!!」
シンは頭を抱えた。
「反論できねぇぇぇぇ!!」
「はい。事実ですので」
「くそぉぉぉぉ!!」
彰がニヤニヤと笑う。
「ほれ見ろ」
「ぐぬぬぬぬ……!」
「マスター」
「なんだよ!」
「既に敗北です」
「んーーーーーっ!!」
シンは勢いよく彰を指差した。
「バーカ!!」
彰の眉がピクリと動く。
「あ?」
「バーカバーカバーカ!!」
「テメェは小学生かッ!!」
「正論しか言えねぇヤツはモテねぇぞ!!」
「何の話や!?」
「だいたいなぁ!」
シンはオイを指差す。
「御子は家族だろ!?」
「…………は?」
彰は、本気で意味が分からないという顔をした。
そして――
「いや、道具だろ??俺のために働く道具やろ?」
シンの表情が止まる。
「…………」
一瞬だけ。
先ほどまでのふざけた空気が消えた。
シンは彰を睨む。
だが――
「…………っ」
結局。
シンの口から出てきたのは――
「粗大ごみのバァァァーカッ!!!」
「結局それかいッ!!」
シンはそのまま走り去っていく。
「なんやアイツ……」
彰は呆れたように、その背中を見送った。
「チッ……行くぞ、オイ」
隣に立っていた御子が、静かに彰の後ろへ続く。
「了解しました」
オイは――それ以上、何も言わなかった。




