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時代遅れの戦い方 ①

シールドの陰に身を潜め、二人は静かに敵の出方を窺う。


シンは大きく息を吐いた。


「……すまん。 この判断が正しかったのか、正直わからねぇ。」


少しだけ目を伏せる。


「あの時、攻めてたら勝ててたかもしれんな……」


ECOは静かに首を横へ振る。


『いえ。私も、少し判断を誤りました。

 私の行動も合理的ではありませんでした。』


ECOは苦笑いをする。


『……流石に《打つ手無し》って事ですかね?実力差がありすぎますね。

 ここで諦めるのが、合理的かも知れませんね』


シンは苦笑した。


「合理的、ねぇ……。」


モニター上の〚現在《AI Level.10》〛を見つめる。


「確かに、ECOの言う通りかもな…」


ECOは少し目線が下がる。


『……はい。ここまで来れただけでも____』


「あのさ!俺達のやり方は"時代遅れ"って散々馬鹿にされてきたし、お前は"ガラクタ"だって言われてきた。」


『…………はい。そうですね。』


「だからさ。」


シンは笑う。


「みんな"無理だ"って言うんだよ。『合理的に考えろ。』『現実を見ろ。』『諦めろ』って…」


肩をすくめる。


『はい……その通りでしたね。』


「……でもさ!………俺たちが主役の物語が、一つくらいあってもいいじゃねぇか。」


『………』


『いえ、私達は物語でもなんでもありません。ピンチになっても奇跡は起きません。都合良く、助けなんか現れません………これは現実です。』


「ああ!そうだぜ、現実。ってんならさぁ、俺たちで作ろうぜ。」


ECOは視線を上げる。


「ガラクタと呼ばれた御子と、時代遅れと笑われた奴らがさ、日本一を目指す物語を。」


シンは照れくさそうに頭をかく。


「タイトルを付けるなら……そうだな。」


少し考え、にやりと笑う。


「――《ガラクタ御子と時代遅れの者達》ってのはどうだ!」


ECOの瞳が、ほんの僅かに揺れた。


『まったく……あなたという人は……』


「最高だろ?」


『いいえ、嫌いではありません。』


シンは聞き返す。


「"最高”で“カッコイイ”だろ?!」


『……センスに欠けます。』


「おい!」


シンは頭をかきながら笑った。


「……さて。」


モニターの向こう、《AI Level.10》を見据える。


「時代遅れなりの戦い方、やってみますかね。」


ECOも静かに視線を向ける。


『次の作戦は、考えていますか?』


シンはニヤリと笑った。


「おうよ。」


「かなりベタだけどな。」


ーーーーーーー


霧が、少しずつ薄れていく。

《AI Level.10》は警戒レベルを一段階下げた。


対象:1期A型 ECO


武装

・近接武器 ×1

・遠距離武器 なし


支援

・ビット 全損

・シールド 残存


戦術傾向

・接近戦主体

・霧による退避を確認

・霧を利用した奇襲なし


脅威評価 更新


遠距離脅威:0%

近距離脅威:高

総合脅威:低下


推奨行動

・現位置維持

・接近時に狙撃


演算、完了。

導き出された結論は、一つ。


――脅威なし。


接近した瞬間を撃ち抜けばいい。

それだけだった。



ーーーーーーー


『では、行きます。』


シンが合図を送る。


「行くぜECO! 出し惜しみなしだぁぁぁッ!!」


転送光が次々と戦場へ走る。

ガシャン。

ドサッ。

ゴトン。

ハンマー。

槍。

ハリセン。

達磨。

鍋。

脚立。

用途不明の装備品が、次々と砂漠へ降り注いだ。


《AI Level.10》は即座に演算を開始する。

未知の装備を複数確認。

用途、判別不能。

新戦術の可能性を検証。

警戒レベル、上昇。

その隙にECOが駆ける。

落下した装備品を拾い上げる。


そして――


ブンッ!!


《AI Level.10》へ向かって、全力で投げつけた。


ハンマー。

槍。

ハリセン。

達磨。

シールド。

ビット。

工具箱に鍋、脚立、達磨。


ありとあらゆる物が宙を舞う。

やがて、《AI Level.10》の足元はガラクタで埋め尽くされていた。


ECOは敵を中心に大きく旋回する。


そして、一気に距離を詰めた。


《AI Level.10》は静かに照準を合わせる。


接近速度。

移動軌道。

射撃成功率──98.7%。

適正射程まで、あと一歩。


その瞬間。


黒煙を噴き上げた一機のビットが、ふらふらと《AI Level.10》の眼前へ飛び込んだ。

シンが笑う。

「よっ、《AI Level.10》。まだ一機、残ってんだぜ。」

《AI Level.10》は脅威評価を更新。

至近距離に飛行物体を確認。

自爆攻撃の可能性──排除不可。

回避行動を選択。

一歩、後退。


──ガッ。


踵が、散乱したシールドの縁に引っ掛かる。

砂が大きく崩れた。


照準、誤差発生。

キィィィン……


放たれたレーザーは、ECOの肩をかすめることなく、遥か後方の砂丘を焼き裂いた。


シンが拳を突き上げる。


「いっけぇぇぇぇーーーッ!!」


ECOは地を蹴る。


一気に間合いを詰める。


《AI Level.10》が再照準を開始。


だが──

間に合わない。


ECOは静かに刀を抜いた。


『――雪ノ太刀【細雪】。』


一閃。


白い軌跡だけが砂漠を走る。


一拍遅れて、《AI Level.10》の身体に光の亀裂が走った。


パリン……


ガラスが砕けるような音を残し、《AI Level.10》は光の粒となって消えていく。


静寂。



そして次の瞬間。


「《AI Level.10》――CLEAR!!」


歓声が、白い砂漠を揺らした。

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