スタートラインを越えて
《AI Level.05 Clear》
《AI Level.06 Clear》
《AI Level.07 Clear》
一戦、また一戦。
ECOは着実に勝ち星を重ねていく。
無駄のない、静かな剣。
焦りも、無理な攻めもない。
必要最小限の動きだけで相手を制していく。
「……なんだ、あの動き。」
「本当にあの"ガラクタのECO"か?」
「いや……なんか…別人みたいだよな?」
「な~んか懐かしい感じの技だよな??」
いつしか会場は、次の試合ではなく、
ECOの一挙手一投足を見つめるようになっていた。
《AI Level.08 Clear》
ここまでは想定内、
「よし、そろそろ休憩だ!次からは俺が出る」
『いいえ、まだ戦えます。』
「まぁそう焦んな!確実に勝ちに行くぞ!
ガード態勢でリペア使っとけ」
『……了解です。』
ECOは巨大なシールドを四方へ展開する。
ガシャン――
身体を覆うほどの盾が砂地へ突き立てられた。
同時にバックパックが展開。
四機のビットが射出される。
キィィィン……
青白い軌跡を描きながら頭上を旋回し、周囲を警戒する。
シールドの内側では、淡い光がECOの身体を包み始めた。
『リペア、開始します。』
「おう!リアルTDゲーじゃん!」
《AI Level.09》
《AI Level.09》は、これまでの相手とは明らかに違っていた。
パンッ!!
一発の銃声。
だが、相手は前へ出ない。
一定の距離を保ったまま、ECOのシールドを観察している。
「ラッキー!なんか知らんが近づいてこないな!」
シンが安堵した、その瞬間。
パンッ!!
空へ向かって砲弾が撃ち上がる。
「……え。」
砲弾は上空で炸裂した。
「うげっ!? 三式弾だ!!」
無数の破片が雨のように降り注ぐ。
シンは慌ててビットを操作する。
「回避ー!右だ!いや右左右右ッわからん!」
キィンッ!!
カンッ!!
一機が被弾。
火花を散らしながら錐揉み回転し、そのまま砂へ墜落する。
「くっ……!」
防衛網が、一瞬だけ途切れた。
その瞬間だった。
《AI Level.09》が地面を蹴る。
砂煙を巻き上げ、一気に距離を詰めてくる。
「うわっ!? 来た来た来たッ!!」
シンは必死に残る三機を操る。
弾幕。
回避。
迎撃。
頭の中は一瞬で情報に埋め尽くされた。
『マスター。回復率81%を超えました。』
『出撃可能です。』
「まだだ!」
ビットが一機、二機と敵を牽制する。
しかし相手は止まらない。
『マスター。』
「待て待て!」
シンは笑った。
「ヒーローってのは遅れてくるもんだろ?」
親指を立てる。
「ここは少し、俺にカッコつけさせてくれよ?な!」
ECOは数秒だけ沈黙した。
『……了解です。』
シンは残る三機のビットを操り、《AI Level.09》を迎え撃った。
一機で牽制。
一機で射線を塞ぎ。
最後の一機で死角を突く。
「今だッ!」
光弾が《AI Level.09》を貫く。
敵の姿が光となって砕け散った。
『《AI Level.09》――CLEAR』
シンは大きく息を吐く。
「ふぅ……何とか凌いだな!」
ECOの周囲を包んでいた修復光が、ゆっくりと消えていく。
『リペア率97%。戦闘継続に支障ありません。』
ECOは静かに立ち上がり、再び刀を握る。
「よし。」
シンは肩を回しながら笑う。
「ここからは二人で行こうぜ。」
『了解しました。』
シンは表示されたステータスへ目を向ける。
「次は《AI Level.10》か……あと、何体だっけ?」
ECOの視線にも、空中へ浮かぶ大会データが映る。
『今回のボーダーは――《AI Level.12》です。』
「……あと三戦か。」
その戦いを見ていた会場の空気が、わずかに変わった。
観客席からもざわめきが起こる。
「おい……あいつらがLevel.10まで来たぞ。」
「今年の《AI Level》弱いんじゃねぇのか?」
「ここまで――はな」
誰かが息を呑む。
「本番は、ここからだ。」
白い砂漠を、乾いた風が吹き抜ける。
《AI Level.10》
転送ゲートが、ゆっくりと輝き始めた。




