ツケ完済 ②
家へ戻り、シンは箱をテーブルへ置いた。
「……開けるか。」
封緘シールを剥がし、ゆっくりと蓋を持ち上げる。
中には一本の刀。
そして、小さな紙が一枚。
そこには、たった一言だけ。
『空(SORA)』
「……空?」
シンが首を傾げる。
ECOが紙を受け取り、解析する。
「名称以外の情報はありません。」
「説明書くらい入れとけよ……」
その時だった。
仁さんが刀を見て眉をひそめる。
「……そら…どっかで聞いた気がするな。」
資さんも腕を組む。
「あぁ俺もなんだ。」
マサさんが刀を覗き込む。
「たしかに、なんだっけなぁ……。」
しばらく沈黙。
そして資さんが勢いよく指を鳴らした。
「あ、思い出したッ!!」
全員が振り向く。
「『空かける』だ!!」
「あぁぁぁ!!それだそれだ!!」
店内が一気に盛り上がる。
「ガキん頃、御子なんか持ってなかったけど、コレ欲しかったよなぁ!」
「応募券欲しさに本何冊も買ったわ!」
「まじで!当たらんかったけどな!」
昔話に花が咲く常連たち。
シンは、手にした刀と紙を交互に見つめる。
ゆっくり顔を上げる。
もう一度、刀を見る。
「……これ、漫画の景品なん?」
資さん達は楽しそうに語る。
「そうそう!主人公が使ってた同じモデルのやつ!」
「話が進むにつれてよ、すげ~能力が解放されていく話だったよな!熱かったなぁ〜」
「あぁたしか…雨、雷、嵐、曇、雪……あと何があったっけ?」
「霧……だったかな?いや、霧?霞?どっちだっけか?!」
「うわぁ~!また読みたくなってきた! ちょっと実家帰って探してくるわ!」
「俺、最終話読んでねぇんだ!!」
「たしか、轟絶眼を倒したら……」
「やめろ!!読みなおすからッ!!」
「懐かしいなぁ~!」
店内は完全に思い出話で盛り上がっていた。
シンは、刀と紙を交互に見つめる。
「…………。」
もう一度、紙を見る。
『空(Sora)』
ゆっくり顔を上げる。
資さんが笑う。
「そうそう!当時めちゃくちゃ人気でな!」
「抽選一名だったっけ?」
「俺、50通送ったぞ!」
「俺なんか100通だ!」
「いや~、オカンにめちゃくちゃ怒られたなぁ。 『ハガキの無駄や!』ってさ!」
「当たった奴なんか都市伝説だろ!」
シンは刀を眺めながら呟く。
「じゃあ…なんで福ちゃんが持ってんだよ。」
店内が、一瞬だけ静かになる。
全員の視線が、刀へ集まった。
「……も、もしかして。」
資さんがゆっくり口を開く。
「当選者って……」
仁さんも息を呑む。
「まさか……」
マサさんが額を押さえる。
「アイツ……」
全員の声が揃った。
「「福ちゃんかよォォォォッ!!!!」」
少しの沈黙。
「…………けどよ、シン。すげ~貴重な物を貰ったなッ!」
「……確かに。これじゃ文句言えねぇや、ツケは完済だな!」
「それで本当によかったのですか?」
「おう!ある意味、福ちゃんの形見だ!文句はない!だろ?」
「……はい」




