小さな革命 ③
戦う御子の誰もが憧れる夢の舞台『大神楽』
しかし、今年の『大神楽』は異様な空気に包まれていた。
誰もがスマホを開きニュースを確認する。
《有名サイトのトピック》
『大神楽出場予定だった甲級選手二名が、直前で出場辞退?!』
ラジオやニュース、
アナウンサー達も困惑を隠せない。
「繰り返します。本日開催予定の大神楽ですが――」
「甲級ランキング3位、『月影の魔女』アリス・ゲートのマスター・流門寺選手。」
「そして、“直感主義者”として絶大な人気を誇る天草選手が、出場を辞退しました。」
「事件事故の可能性は無いと公式から発表がありましたが……理由は公表されておりません。」
ーーーーー
SNSは瞬く間に炎上した。
『流門寺ィィィィッッ!!』
『大神楽ボイコット!?』
『運営と揉めたってマジ?』
『今年終わった……』
誰も理由を知らない。
本人たちも姿を見せない。
そして翌日。
神楽協会から正式発表が行われた。
【神楽協会公式発表】
『大会規定第十四条に基づき、大神楽当日に正当な理由なく出場を辞退したため――』
『流門寺選手、天草選手の甲級資格を剥奪。』
『両名を乙級へ降格処分とします。』
日本中が騒然となった。
「甲級が……降格?」
「流門寺まで?」
「天草はいつもの遅刻だろ!」
「…………はぁ?」
「もう二人とも大神楽には戻れないだろ……」
誰もがそう思った。誰もが。
ただ二人だけを除いて。
ーーーーー
数日後。流門寺邸。
縁側で湯飲みを片手に座る二人。
天草はスマホを見ながら、くすくす笑っている。
「いや~、すごいねぇ~SNS、大炎上だよ~♪」
流門寺は静かに茶を啜った。
「まぁ当然でござる」
「しかし、予定通りでもある」
天草が悪戯っぽく笑う。
「ねぇねぇ〜流門寺くん。僕たちさぁ____乙級になったんだよね?」
「そうでござる。」
「じゃあさ〜、甲級限定の《年一回しか『萬神楽』へ出場できない》って規則、もう関係ないよね?」
流門寺は口元を緩めた。
「……その通り」
二人は顔を見合わせる。
「つまり――」
天草が指を一本立てた。
「一月。」
流門寺が指を折る。
「二月。」
「三月。」
「四月。」
「五月。」
「六月。」
「七月。」
「八月。」
「九月。」
「十月。」
「十一月。」
二人の声が重なる。
「「全部、出られる」」
天草は満面の笑みで立ち上がった。
「やったぁ♪」
「これで全部取れるね♪」
流門寺も立ち上がる。
「一月は拙者が担当」
「じゃぁ二月は僕が〜」
「三月以降は相談でござるな!」
「十二月。」
その言葉だけは、二人とも同時に口を閉ざした。
やがて天草が静かに笑う。
「そこだけは。」
「シン君――君の番だからね。」
風が吹く。静かな縁側。世間はまだ、
"甲級二人が失墜した"
そう思っている。
誰も知らない。これは失敗ではない。
誰にも気付かれないように始まった、
神楽史上、“最も馬鹿で、最も本気な作戦”
たった三人の大神楽を実現するための――
小さな革命。




