祭りの後の祭り×2
騒ぎが続く中――
ピッ。
時計の日付が変わった。
《12月26日 00:00》
その瞬間。
ガラッガラッガラッガラッ!!!
勢いよく戸が開いた。
「ECOッちゃぁぁぁぁん♡」
「いらっしゃ…………えぇ?」
シンの声が止まる。
「…………」
『…………』
入口に立っていたのは。
ボロボロのドレス。
満面の笑顔。
そして――
「来ちゃった♡」
「…………お前」
シュガー☆キャラメル☆ニッパーだった。
「どしたん?」
「え?♡」
シュガー☆は不思議そうに首を傾げる。
「だってぇ――」
店の時計を指差した。
《00:01》
そして。
ぱぁぁぁぁっ♡
「後日だよ☆」
「…………は?」
「『後日な』って言われたから――」
にこっ♡
「日をまたいだから来ちゃった♡」
「…………」
シンの脳裏に蘇る。
『もっと遊びたいのにぃ♡ じゃあ延長する?♡』
そして――
自分が言った。
『……いや、後日な!』
「…………」
「約束したよね♡」
『……はい。マスターはしましたね』
「ECO!?」
シュガー☆がECOへ駆け寄る。
「遊ぼ♡」
『そうですね。何をして遊びますか?』
「ECOまで乗るな!!」
「えぇ~?」
「ていうか待て」
シンは時計を見る。
《00:02》
そして。
シュガー☆を見る。
「…………お前」
「ん?♡」
「いつから店の前にいた?」
「う~~~ん?」
「…………」
「忘れちゃった♡」
「おい」
シュガー☆が人差し指を頬に当てる。
「だってぇ♡」
シュガー☆は満面の笑みで答える。
「昨日来たら、“後日”じゃないもん♡」
「一休さんかよ!!」
「ガッハハハハハ!!」
酔っぱらいたちが爆笑する。
「いいじゃねぇかシンさん!」
「約束は守らんとなぁ!」
「お前ら他人事だと思って!!」
「ねぇねぇECOちゃん♡」
シュガー☆がECOの手を握る。
「さっきドンパチしてたよね♡シュガー☆店の前で我慢してたんだよー♡」
「めっちゃ前からいるじゃねぇか!!!」
「ねぇねぇ早くやろうよ☆果たし合い?ステゴロ?」
「言葉が可愛くないんだよ!」
「じゃあ☆ チャンバラ☆か組手☆」
「……なぁシュガー☆もしかして他の遊びを知らないのか?」
「え?」
シュガー☆が首を傾げる。
「遊ぶって――戦うことでしょ?」
「…………」
『…………』
シンはECOを見る。
ECOもシンを見る。
「……ECO」
『はい』
シュガー☆が頬を膨らませる。
「斬り合いでしょ☆ 殴り合いでしょ☆ あとねぇ――」
指を折って数える。
「戦争♡ 乱取り♡ 決闘♡」
「それはもう……殺し合いなんよ」
「じゃぁ遊ぶってどんな意味なの?」
「俺?」
シンは店内を見渡す。
酒。
肴。
酔っぱらい。
騒ぎ。
そして――
まだまだ終わる気配のない祝勝会。
「…………」
ニヤリ。
「よし」
シンは空いている席を指差した。
「座れ」
「?」
「今日は俺が――」
ドンッ。
「大人の遊びってやつを教えてやる」
『マスター』
「なんだ?」
『この作品は全年齢対象です。その発言は非常に誤解を招きます』
「酒だよ!!」
「お酒?シュガー☆、飲めないよ?」
「知ってるわ! ジュース出してやる!」
「わぁ♡」
シュガー☆が椅子へ飛び乗る。
「それで何するの?」
「何って……」
シンはシュガー☆の前にジュースを置く。
「飲んで、食って、喋って――」
周囲を見る。
「くだらねぇことで笑う」
「…………?」
「それだけ」
「…………」
シュガー☆は目の前のグラスを見る。
「…………楽しいの?」
「知らん」
「えぇ~?」
「楽しいかどうかは――」
シンは笑った。
「自分で決めろ」
「…………」
シュガー☆はグラスを持つ。
じぃぃぃぃぃ。
そして。
ごくっ。
「…………」
ごくごく。
「…………!」
ぱぁぁぁぁっ♡
「なにこれ甘ぁぁぁぁぁい♡」
「俺とシュウが作り出したオリジナルブレンドジュースだ!!」
「シュガー☆これ好き♡甘くて☆~美味しい♡」
「お嬢ちゃん! こっちの唐揚げも食え!」
常連たちが皿を持ってきた。
「わぁ♡」
「こっちは刺身だ!」
「食べるぅ♡」
「ほれ、枝豆もあるぞ!」
「これなぁに?♡」
「枝豆知らんのか!?」
「お嬢ちゃん、こっちの玉子焼きも美味いぞ!」
「わぁぁぁ♡」
次から次へと――
シュガー☆の前に皿が並んでいく。
「どうだい、お嬢ちゃん。美味しいだろ?」
「うん☆ うん♡」
もぐもぐ。
「おい! 俺が持ってきた唐揚げ食ったぞ!」
「次はワシの刺身じゃ!」
「いやいや、玉子焼きだろ!」
「お前ら餌付けすんな!!」
「餌付けじゃねぇ! おもてなしだ!」
「同じだろ!!」
「これ美味しい♡」
「ほら見ろ! 喜んどるじゃねぇか!」
「もっと持ってこい!」
「おお!」
「だから餌付けすんなって!!」
「シンさぁん♡」
「ん?」
シュガー☆が空になった皿を持ち上げる。
「おかわり♡」
「…………」
シンは常連たちを見る。
常連たちもシンを見る。
「……はいよ!」
「わぁぁぁぁい♡」
シュガー☆は――笑った。
戦っていない。
刀も握っていない。
誰かを倒したわけでもない。
ただ。
みんなと同じ場所に座って。
食べて。
喋って。
笑っている。
それだけなのに。
「…………♡」
シュガー☆は自分でも不思議そうに――
ぽつりと呟いた。
「楽しい♡」
『…………』
ECOは、その横顔を見つめていた。
「ほらシュガー☆! 乾杯するぞ!」
「かんぱい?」
「知らんの!?」
「知らなぁい♡」
「よし、グラス持て!」
「こう?♡」
「そうそう」
店中のグラスが持ち上がる。
「んじゃ改めて――」
「ECOの優勝と!!」
「大神楽出場に!!」
「あと新入りのお嬢ちゃんにぃ!!」
「かんぱぁぁぁぁぁい!!」




