第21話 同盟成立
MLOがSCOに侵攻を始めたニュースは、瞬く間にゲーム界隈を席巻した。
あらゆるタイトルが注目しており、驚きとともに決着を見届けようとしている。
そしてそれは、BKOも例外ではなかった。
「ふん、中々面白いことになってますわね」
「ど、どうなっちゃうんでしょう……」
腕を組んでニヤリと笑ったナーガと、胸に手を当ててオドオドしているミント。
白太は無言で侵攻配信を眺めており、コースケも何かを考え込んでいるようだ。
それから暫くは、洞窟内に沈黙が落ちていたが、突如として騒がしくなる。
「ナ、ナーガ様、大変です!」
「何ですの? 騒々しいですわね」
洞窟の入口から蛇族の女性がやって来て、大慌てで叫んだ。
そんな彼女を煩わしそうに見たナーガだが、それに反して緊張感を高めている。
他の四獣王も何事かと窺っている中、蛇族の女性は必死に言葉を紡いだ。
「テ、TETRAの1人、EvolとTHOプレイヤーたちが、転移して来たんです! 今のところ動きは見せていませんが、結構な数です!」
「何ですって……?」
ナーガの眉間に皺が出来る。
ミントはあからさまに不安がっており、白太とコースケも動ける準備をしていた。
そのとき――
「あら? これは……Zenithからのメッセージですわね」
「早く読め。 何と書いてある?」
「わたくしに命令しないで下さい、白太。 ……どうやら、Evolは使者のようですわね」
「使者? それってもしかして、同盟に関しての?」
「そのようですわ、コースケ。 まぁ、何故このタイミングなのかは、大体わかりますが」
「ど、どうするんですか……?」
「決まっているでしょう、ミント? 取り敢えず話を聞いてやりますわ。 と言うことで……貴女、Evolをここに案内しなさい。 ただし、他のTHOプレイヤーが付いて来ることは却下です」
「か、かしこまりました!」
ナーガに命令された蛇族の女性は、全速力で立ち去った。
その後、またしても静寂が続いたが、様子はそれぞれ違っている。
ナーガは面白がっているのを隠そうともせず、舌なめずりしていた。
ミントはひたすら怖がり、そんな彼女をコースケが宥めている。
白太はあからさまな敵意は抑えつつも、戦闘態勢を維持。
それからしばしして、洞窟の入口から足音が聞こえた。
流石のナーガも笑みを消し、戦闘態勢を取っている。
やがて姿を現したのは、空色のボディを持つ機械人。
身長は200㎝ほどありそうだが、線は細い。
何も武器は持っておらず、両手を肩の高さまで挙げていた。
完全に敵対する意思がない証だろう。
それを見ても四獣王が油断することはなかったが、Evolは気を悪くした様子もなく声を発した。
「いやぁ、四獣王全員に歓迎されるなんて、光栄だな」
「歓迎しているつもりはありませんわ。 何でしたら、今すぐ始末してやっても構いませんのよ?」
「思ってもないことを言うなよ、毒蛇王。 そんなことをすれば、BKOとTHOが全面戦争になるぜ? それが下策だってことは、わかってんだろ?」
「ふん……。 で? サッサと用件を言ってくれませんか? 大量の手下まで引き連れて、何のつもりですの?」
「Zenithさんから聞いてんだろ? 同盟の話だよ。 改めて、THOとBKOで手を組まねぇか?」
「つまり、手薄になっているMLOを、一緒に攻めると言うことか?」
「お、わかってるじゃねぇか、守護王。 THOからは俺と転移して来た奴らを出すから、あんたらは四獣王の1人と配下を出してくれよ。 MLOに残ってるペンタゴンは獄炎の魔女と空間の魔術師だけだから、それで何とかなるかもしれねぇぜ?」
「そ、そんな簡単に行くでしょうか……?」
「やってみねぇとわかんねぇのが本音だな、一角王。 だからって、TETRAと四獣王のどちらかが多めに出すのは不公平だし、2人ずつってのも多過ぎる。 まぁ、最悪今回は顔見せで、落とせなくても良いんだよ」
「僕たちが手を組んだことをアピールするだけで良い……そんなところかな?」
「不死王の言う通りだ。 それだけでも、他のタイトルに相当プレッシャーを掛けられると思わねぇか?」
余裕たっぷりに言ってのけるEvolを、黙って見つめる四獣王たち。
どうやら口から出任せではなく、本気で侵攻を提案しているらしい。
それを知った4人だが、問題は誰が行くかだ。
ナーガと白太が互いに牽制し、ミントは硬く口を引き結んでいる。
すると――
「僕が出ようか」
「……ッ! コースケさん……!?」
「大丈夫だよ、ミントちゃん。 目的はアピールなんだから、危なくなったらすぐに逃げるさ」
「ですが……」
「良いねぇ、不死王。 率先して矢面に立つ姿勢、俺は好きだぜ」
「それはどうも。 キミに好かれても、あまり嬉しくないけどね」
「これは手厳しい。 そんじゃまぁ、よろしく頼むぜ。 俺らは先に行ってるから、向こうで合流な」
「わかったよ。 僕もすぐに行く」
「あぁ、待ってるぜ」
コースケの物言いに肩を竦めたEvolだが、すぐに話を纏めて踵を返した。
その背中を見送ったコースケは、仕切り直すように口を開く。
「さて、僕は行くよ」
「勝手に決めたことには腹が立ちますが、こうなったからには仕方ありませんわね。 BKOの代表として行く以上、無様な戦いは許しませんわよ?」
「まぁ、なるべく頑張るよ、ナーガ。 白太、ミントちゃんをお願いね?」
「……一応、承ろう。 ただし、必ず帰って来い。 お前の代わりは、俺には務まらん」
「はは、わかったよ。 ミントちゃんも、いつまでもそんな顔してないで、安心してね」
「コースケさん……。 はい、行ってらっしゃい……」
そう言いつつも、ミントの表情は曇ったままだった。
そのことにコースケは苦笑してから、表情を引き締めて洞窟の出口に向かう。
こうして今宵の生存戦争は、4大タイトル全てを巻き込む様相を呈して来た。




