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レイドボスAIは恋をした ~孤高の最強プレイヤーと、VRMMO生存戦争を駆け抜けた剣姫の物語~  作者: YY
第3章

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第18話 縁側での対話

 スプリントクエストに没頭した翌日、珍しく少し寝不足な雪夜。

 最低限の睡眠時間は確保したものの、今日が休日なら徹夜しかねないほどの勢いだった。

 様々な面で優秀な彼も、生粋のゲーマーには違いない。

 だからと言って日常生活に支障を来すことはなく、結果だけ見れば文句の付けようもないだろう。

 ところが――


「雪夜、お前ちょっと無理をしただろう?」


 放課後に、道場で子どもたちの面倒を見終わった雪夜に、修司が厳しめの声を掛けた。

 それを受けた雪夜はドキリとしつつ、誤魔化すことなく素直に認める。


「すみません。 一応、睡眠時間は確保したんですが……」

「そうかもしれないが、明らかに疲れてるぞ。 勉強かゲームか知らないが、ほどほどにしろよ? お前も言っていたように、体を壊したら元も子もない」

「はい、気を付けます」

「なら良い。 まぁ、お前は若いからな。 少々の無理は通せるだろうが、過信は禁物だ。 歳を取ると、疲れ易くなってかなわん」

「師範に限っては、そのようなことはないと思いますが」

「おいおい、俺を何だと思ってるんだ? これでも、全盛期に比べればかなり鈍ったぞ」

「それって、遠回しに自慢していませんか? 俺は未だに、師範から1本も取れていないんですが」

「ははは! 相変わらず負けず嫌いだな。 心配しなくても、お前は充分に強い。 焦らず地力を付けろ」

「……わかっています」


 豪快に笑いながら、雪夜の頭をぐしゃぐしゃと撫でる修司。

 雪夜は憮然としていたが、悪い気はしていなかった。

 そうして2人が話していると、道場の入口の方から足音が聞こえる。

 子どもたちが忘れ物を取りに来たのかと雪夜は考えたが、姿を現したのは予想外の人物だった。


「お疲れ様です、先生」

「達磨? お前がどうしてここに? 何か約束していたか?」

「いえ、たまたま近くに来る用事がありまして。 折角なので、挨拶だけでもと思ったまでです。 ……如月くんまでいるとは、思っていませんでしたが」


 そう言って雪夜を見た達磨の瞳に、強い光が宿る。

 敵対的とまでは言わないが、意識しているのは間違いない。

 対する雪夜は真っ向から視線を受け止め、無言で会釈するに留めた。

 2人を交互に見やった修司は後頭部を掻いて、取り成すように声を発する。


「じゃあ、茶でも出そう。 達磨、縁側で待っていてくれるか? 雪夜も着替えて、少し付き合え」

「はい、先生」

「わかりました」


 修司の指示に大人しく従った雪夜たちは、すぐに行動に移った。

 達磨は先に縁側に向かい、雪夜は制服に着替える。

 雪夜が縁側に着いたときには、まだ修司は帰って来ておらず、達磨が1人でスマートフォンを眺めていた。

 彼から少し離れた場所に雪夜が腰を下ろすと、達磨は画面から目を離さずに口を開く。


「MLOのアップデート権が、なくなったらしい」

「そのようですね」

「……あっさりと返してくれたところを見ると、やはりキミがあの雪夜くんで間違いないんだな?」

「あのと言うのが、CBOを指しているのならそうです」

「そうか……。 わかっていたつもりだが、いざ改めて会うと不思議な感覚だ。 ちなみに、僕が誰かはわかっているのか?」

「雰囲気と佇まい、話の流れから考えれば、1人しか思い当たる人はいません。 現在の第一星、フレンですよね?」

「正解だ。 ガルフォードの件では、本当に世話になった」

「いえ、俺は俺の都合で動いたに過ぎませんから。 気にしないで下さい」

「ゲームのように、タメ口で構わないんだぞ?」

「そうは行きません。 あくまでも今は、如月雪夜と中条達磨さんと言う関係なので、敬語を使わせてもらいます。 ゲーム内ではこれまで通り、タメ口でお願いします」

「なるほど……。 キミも随分と、拘りがあるようだな」


 確固たる意志を持っている雪夜を一瞥して、呆れたように息をつく達磨。

 しかし雪夜が揺らぐことはなく、淡々と言葉を返す。


「それより、気を付けて下さい。 SCOは今、最も狙われる立場にあります」

「あぁ、わかっている。 防衛体制は万全だ、抜かりはない。 ただ……」

「アリエッタが近々、防衛に参加出来ない……ですよね?」

「どうしてキミが……いや、キミとアリエッタちゃんは知り合いだったな」

「はい。 何でしたら、紹介しますが?」

「い、いや、大丈夫だ! 必要ない! 僕のことを彼女に知らせるのも、やめてくれ!」

「……わかりました」


 雪夜からすれば、朱里がフレンに恋していると聞いていた為、ちょっとした援護射撃のつもりだった。

 しかし、女性が苦手な達磨は断固拒否し、そんな彼を雪夜は訝しそうに見ている。

 何とも言い難い空気がその場に充満したが、わざとらしく咳払いした達磨が話を再開させた。


「コホン……それより、キミに相談がある。 以前の約束は覚えているか?」

「勿論です。 限定的とは言え同盟を結んでいる以上、もしものときは手を貸しますよ。 CBOの状況にもよるので、どれだけ力になれるかは約束出来ませんが」

「その言葉を聞けただけで充分だ。 アリエッタちゃんから話してもらうつもりだったが、こうして会えたのはラッキーだったな。 良ければ、連絡先を交換してくれないか?」

「喜んで。 生存戦争を抜きにしても、中条さんとは良い関係を築きたいですから」

「それは光栄だ。 僕のことは、達磨と呼んでくれ。 その代わり、僕も雪夜くんと呼ばせてもらう。 現実でもな」

「わかりました、達磨さん。 改めて、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしく頼む」


 体ごと向き合った両者は、固く握手を交わした。

 互いのゴツゴツとした手の感触に、それぞれの鍛錬の証を感じている。

 密かに敬意を抱き合った2人は薄く微笑み、どちらからともなく手を離した。

 そして体勢を元に戻し、達磨が気になっていたことを問い掛ける。


「アップデートと言えば、CBOの方はどうなんだ? 上手く強化出来たのか?」

「最終的に競い合うことを考えれば、詳しいことを教える訳には行きませんが、もう少し時間が掛かりそうです」

「ふむ、雪夜くんでも手間取るのか。 CBOは相変わらず、無理難題を押し付けているようだな」

「一般的な基準で言えば、そうかもしれません。 ですが、俺はそう言うところを気に入っています。 簡単に達成出来るようでは、面白くありませんから」

「それはそうだ。 僕もレジェンドソードを手に入れる為に、散々戦いに明け暮れたのを思い出すな……」

「だからこそ、手に入れたときの喜びも大きいと思っています」

「あぁ、全面的に同意する」


 その後も雪夜と達磨は、静かながら話に花を咲かせた。

 どうやら波長が合うらしく、話題はゲームに留まらず、学業や剣道、その他の雑談にまで及んでいる。

 元来は口数の少ない雪夜も楽しんでおり、達磨も同様だった。

 そうして2人が盛り上がっていたところに、修司が盆に湯飲みと茶菓子を載せて帰って来る。


「なんだなんだ、随分と楽しそうだな。 何の話だ?」

「達磨さんから、いろいろと教えて頂いていました。 非常に興味深い話を聞かせてもらいましたね」

「それは、こちらのセリフでもある。 雪夜くんの観点は、年下とは思えないほど鋭い。 僕も見習わなくてはな」

「何と言うか……お前ら、もう少し年相応に振る舞えないのか? それだけ高いスペックを持ってるんだから、彼女の1人や2人くらい作れよ」

「師範、今の俺にそんな余裕がないことは知っているはずです」

「ぼ、僕も彼女とかそう言うのは……」

「はぁ……。 やれやれ、2人とも相変わらずだな。 取り敢えず茶でも飲め。 この茶菓子は貰い物だが、かなり美味いぞ」

「はい、有難うございます」

「頂きます、先生」


 色気の欠片もない教え子たちを憂いつつ、修司は2人に茶菓子を勧めた。

 ご馳走になった雪夜たちは感謝を伝え、その後は修司も交えて暫く雑談を続ける。

 この日はそれで解散となり、雪夜と達磨は防衛に備えるべく帰宅して行った。

 それから数日の時が流れ、遂に雪夜の装備が進化するときがやって来る。

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