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レイドボスAIは恋をした ~孤高の最強プレイヤーと、VRMMO生存戦争を駆け抜けた剣姫の物語~  作者: YY
第3章

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第15話 次期生徒会長

 翌日の朝、素振りを終えた雪夜は、朱里とともに朝食を食べていた。

 作ったのは朱里であり、やはり雪夜から駄目出しを受けつつも、確実に進歩を見せている。

 また、雑談交じりではあるが、内容に少しばかりの変化が見られた。

 学校のことや生存戦争の話題だけではなく、朱里から具体的な勉強の質問がなされるようになっている。

 良い傾向だと思った雪夜は快く答えており、朱里も真剣に話を聞いていた。

 やがて食事を終えた2人は、登校時間までお茶を楽しむ時間に入る。

 話題が尽きることはなく、主に朱里が主導となって話し続けていたが、不意に彼女が何かを思い出したように口を開いた。


「そう言えば、CBOでアップデートがあるんだよね? LRの実装だっけ?」

「あぁ。 今日の防衛後からだから、初日は様子見になるかもしれない」

「そんなこと言いながら、いきなり狙ってるんじゃないのー?」

「まぁ、出来ることならそうしたいが、何せCBO運営だからな……」

「あー……。 確かに、CBO運営だもんね……」


 2人して、ゲンナリとした顔を見せ合う。

 それほど、CBO運営に対する謎の信頼感は強い。

 とは言え、雪夜にとっては望むところでもあった。


「最近は侵攻もなく、手応えのある戦いは剣姫戦だけだからな。 ちょうど良い」

「うわ、出たよ戦闘狂。 エスコートクエストは面倒じゃなかった?」

「ギミック自体は少し特殊だったが、強さと言う点では大したことなかった。 パーティ自体が強力だったから、猶更だな」

「うーん、言われてみればそうかも。 人形がボスだったことには驚いたけど、落ち着いて対処すれば勝てない相手じゃなかったよね。 それでも、結構脱落した人はいたみたいだけど……」

「CBOも似たようなものだ。 どうしても、一定数は脱落する。 こればかりは仕方ないが、それを最小限に留めることは出来る」

「うんうん。 にしても、LRかー。 CBOが強くなるのは、頼もしいけど怖くもあるんだよね」


 ニヤリと笑う朱里。

 完全に本気で言っている訳ではないが、全くの嘘とも言い難い。

 今は限定的な同盟関係を結んでいるものの、いずれは雌雄を決するときが来る。

 そのときを想像すると、朱里は辛い気持ちになるので、わざと強気なポーズを取っていた。

 そんな彼女の心情を察した雪夜も、敢えて不敵な笑みを返す。


「嫌なら、朱里たちも強くなるんだな。 アップデート権は使い切っても、出来ることはあるだろう?」

「当然、そのつもりだよ! あたしもフレン様も、特訓中なんだからね!」

「そんなことを、俺に話して良いのか?」

「う……。 い、良いの! 今は味方なんだから!」

「お前がそれで良いなら、俺は構わないが……。 取り敢えず、そろそろ出るぞ」

「あ、はーい」


 勢いで誤魔化そうとした朱里に呆れつつ、席を立つ雪夜。

 彼に続いて朱里も準備をして、学校へと出発した。

 新入生だった朱里もすっかり慣れ親しんだ通学路を歩き、途中で宗隆と透流が合流。

 一気に騒がしくなったと思いつつ、雪夜は今の生活を楽しいと感じている。

 これには、EGOISTSとして活動していることや、他のCBOプレイヤーとも交流を持ち始めたことも影響しており、以前よりも人付き合いが良くなっていた。

 クラスメイトとも話す頻度が増え、雰囲気自体は変わっていないが、雪夜が接し易くなったと噂になるほど。

 彼女(仮)の朱里としては、彼が他の女子生徒と仲良くすることを、複雑に思っていたが。

 何はともあれ雪夜は現実にも変化が起き始めており、本人にも自覚がある。

 そしてこの日、決定的な出来事が起ころうとしていた。

 他学年ながら何故か付いて来た朱里も含めて、4人が2年生のフロアに到着すると――


「待っていたぞ、如月くん! 今日こそ、良い返事をもらおうか!」


 朝っぱらから元気な、現生徒会長である石川。

 彼の姿を見た瞬間に朱里と宗隆は面倒臭そうにし、透流は額に手を当てて溜息をついていた。

 それに比して雪夜は平然としており、何の気負いもなく挨拶をする。


「おはようございます、石川先輩」

「おはよう! さぁ、次期生徒会長を引き受けると言うんだ!」

「わかりました」

「そうか、やはり駄目……え? い、今何と……?」

「ですから、わかりましたと言いました」


 雪夜の思わぬ返答に、石川は目を点にして固まっている。

 それは朱里たちも同様で、様子を窺っていた他の生徒たちも同じ。

 まさに、青天の霹靂だった。

 これまでの自分の態度を考えた雪夜は、それも致し方ないと思い、自分から考えを述べる。


「少し心境の変化がありまして。 ただし、条件があります」

「あ……も、勿論だとも! キミが生徒会長になってくれると言うなら、僕は最大限協力させてもらう!」

「有難うございます。 実は、他の生徒会役員を自分で決めさせて欲しいんです」

「それくらい、お安い御用だ! むしろ、キミが決めてくれるなら安心出来る! それで、もう目星は付いているのか?」

「えぇ」


 そう言って雪夜は、クルリと後ろを振り返った。

 そこには、未だに衝撃から立ち直れていない、彼女(偽)と友人たちがいる。

 思わず苦笑をこぼしそうになりつつ、雪夜は真面目な顔で、いけしゃあしゃあと言い放った。


「副会長は東郷宗隆」

「え!? はぁ!?」

「会計は榊透流」

「ちょ……!? 雪夜……!?」

「書記は日高朱里」

「セツ兄!? 何を言ってるの!?」

「この3人に任せたいと思っています」


 突然の任命に、朱里たちは悲鳴を上げた。

 しかし雪夜が取り合うことはなく、素知らぬ顔で石川と相対する。

 一方の石川は興味深そうにしており、おとがいに手を当てて問い掛けた。


「約束した以上、文句を言うつもりはない。 ただ、人選の理由を聞かせてもらえるか?」

「理由は2つあります。 1つは、彼らが最も気心の知れた人物だからです。 生徒会として連携を取るには、その方が何かと都合が良いですから」

「ふむ、なるほど。 もう1つの理由は?」

「適正面の高さです。 東郷は顔が広く、誰とでも友好関係を保つことが出来ます。 これは、俺に致命的に欠けているものでもあります。 榊は几帳面かつ真面目で、数字にも強いです。 会計を頼むには、打って付けの生徒かと。 日高は下の学年との橋渡し役として、必要な人材です。 彼女の友好関係も、かなり広いですから。 以上が、俺が彼らを選んだ理由です」

「うむ、実にわかり易く、納得が出来る理由だ! 流石は如月くんだな!」

「恐縮です」

「実際に代替わりするのはもう少し先だが、これで僕も後顧の憂いもなく卒業出来る! 本当に有難う!」

「熱心に誘って頂いていたのに、今まですみませんでした」


 丁寧に頭を下げた雪夜に、石川は柔らかい笑みを向ける。

 そこには、彼が口にした通り、確かな安堵があった。


「何、気にすることはない。 こうして、最終的には引き受けてくれたのだからな。 それにしても……どう言った心境の変化があったのか、気になるな」

「詳しいことは話せませんが……簡単に言えば、1人でいることに逃げるのをやめようと思ったんです」

「そうか……。 キミが他人とも協力出来るようになれば、向かうところ敵なしだな」

「……そう願います」


 このとき雪夜が思い浮かべていたのはEGOISTSの仲間たちだが、現実世界でもそうあれるように精進しようと誓った。

 満足そうに笑う石川と、苦笑を浮かべる雪夜。

 雪夜は石川を特に慕っている訳ではないが、自分の殻を打ち破る機会をくれたことには、感謝している。

 そうして石川は上機嫌に去って行き、野次馬になっていた生徒たちも、騒ぎながら散って行った。

 残されたのは雪夜と朱里、宗隆、透流の4人。

 無茶振りされた朱里たちは何やら複雑そうな顔をしているが、雪夜は澄まし顔で告げる。


「そう言うことだ、よろしく頼む」

「何から言えば良いかわかんねぇけどよ……。 ホント無茶苦茶だな、お前」

「すまないな、宗隆。 だが、力を貸してくれると助かる。 どうしても嫌だと言うなら、考え直すが……」

「うーん……。 本当は断るつもりだったんだけどな。 けどよ、お前にあそこまで言われると、悪い気はしねぇって言うか……。 なぁ、透流?」

「まぁ、ね……。 ビックリし過ぎて、正直ちょっと付いて行けてないけど……。 でも、宗隆の言う通り、雪夜に認められたのは嬉しいかな」

「じゃあ、引き受けてくれるのか?」

「まぁ、出来る限りはな。 俺は部活もあるから、あまり期待し過ぎんなよ?」

「僕は時間の融通は利くけど業務に関しては自信がないから、むしろ雪夜に教えてもらう立場かも」

「充分だ。 2人とも、感謝する」


 友人たちから了承を得た雪夜は、軽く頭を下げた。

 そんな彼に宗隆と透流は苦笑していたが、まだ1人が解決していない。

 顔を上げた雪夜は、神妙な顔付きの朱里と対峙する。

 怒っていると言う訳ではなく、ただただ真剣だった。

 彼女の様子を見た宗隆たちは不安そうにしていたが、雪夜は真っ向から視線を受け止めて尋ねる。


「朱里はどうだ?」

「答える前に、聞かせて欲しいことがあるの」

「何だ?」

「あたしを選んだのは、単に仲の良い1年生が他にいないから? 他に頼める相手がいたら、あたしじゃなくても良かったの?」


 嘘偽りを許さない力を込めて、朱里が問い質す。

 対する雪夜は数瞬沈黙し――朱里の頭を撫でた。

 驚いた朱里は目を丸くしていたが、雪夜は気にせず言葉を紡ぐ。


「お前を選んだ実務的な理由に嘘はないが、それだけじゃない」

「……実務的じゃない理由って何?」

「俺はこれでも、不安なんだ。 生徒会長と言う責任ある立場になることが、はっきり言って怖い。 だが、朱里が傍にいてくれたら、頑張れると思った。 お前は俺に、元気をくれるからな」

「セツ兄……」

「とは言え、これは俺のわがままだ。 宗隆たちにも言ったが、朱里も嫌なら――」

「嫌じゃないよ! あたしがセツ兄を、支えてあげる!」

「良いのか?」

「うん! 部活があるから、時間的な制約はあると思うけど……」

「大丈夫だ。 無理しない範囲で、手を貸してくれたら良い」

「はーい! ホントにもう、セツ兄はあたしがいないと駄目なんだからー」

「……今日は好きに言ってくれ」


 一転してニコニコ笑い、嬉しそうな朱里。

 彼女の豹変ぶりに雪夜は苦笑し、宗隆と透流も顔を見合わせて笑っている。

 こうして次期生徒会の役員が、暫定的ながら決定した。

 そのことに雪夜はホッとしていたが、まだ何も始まっていない。

 代替わりするのはまだ先だが、今から準備しておくこともあるだろう。

 しかし、意識を切り替えた彼の頭にあったのは、今夜のCBOアップデートだった。

 現時点で詳細は不明だが、少なくとも楽な戦いにはならない。

 雪夜は確信を持ってそう考え――その予感は現実となる。

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