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レイドボスAIは恋をした ~孤高の最強プレイヤーと、VRMMO生存戦争を駆け抜けた剣姫の物語~  作者: YY
第3章

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第14話 CBOの一員

 エスコートクエストが終了して数日。

 生存戦争の情勢は、比較的穏やかだった。

 MLOもBKOも侵攻の度合いが落ちており、全体的に静かな日々が続いている。

 しかし雪夜は、それが嵐の前の静けさに思えてならなかった。

 夕方の勉強を終えた彼は、頭の片隅でそのようなことを思いながら、CBOにログインしようとしたが――


「……! これは……」


 スマートフォンが震える。

 生存戦争関連の情報かと思った雪夜だが、表示されていたのは、CBOの公式アカウントからの通知。

 即座に内容を確認したところ、『22時に重大発表!』と言う一文が綴られていた。

 今は生存戦争と言う特殊な状況ではあるが、元来がゲーマーである雪夜は気分が高揚している。

 何より今の彼には、それを分かち合う仲間たちがいた。

 逸る気持ちを抑えてベッドに横になった雪夜は、デバイスを装着して起動ボタンを押す。

 すぐさま拠点である町に足を着け、何も考えずにクリスタルに向かったが、その道中に驚くべきことが起こった。


「……よう」


 名も知らぬ男性プレイヤーから、不愛想ながら挨拶された雪夜。

 思わず目を見開いて立ち止まっていると、そのプレイヤーはそそくさと歩み去る。

 我に返った雪夜は慌てて返答しようとしたが、既に遠くへ行ってしまった。

 未だに衝撃を受けていた彼だが、これはまだ始まりに過ぎない。


「……こんばんは」

「……今日も頼むぜ」

「……お前にだけ任せるつもりはねぇけどな」


 全員が何かを抱えながらも、間違いなく雪夜に声を掛ける。

 エスコートクエストの情報共有の際に、彼が的確にアドバイスしたことが切っ掛けとなり、彼らのわだかまりが溶けようとしていた。

 それは昨日今日の話ではなく、これまでの雪夜の行動が積み重なったからこそ。

 その事実に思い至った彼は、珍しく照れたように顔を背けながら、敢えて淡々と言い返す。


「こんばんは。 よろしく頼む」


 プレイヤーたちから返事はなかったが、雪夜はそれで良いと思っている。

 足早に歩き出した彼が、クリスタルに到着すると、微笑を浮かべたケーキとニコニコ笑ったAlice、ニヤニヤ笑ったゼロに出迎えられた。

 理由をわかっている雪夜は、なんとなく憮然としながら咳払いをし、ひとまず挨拶を交わす。


「コホン……皆、こんばんは」

「こんばんは! いや~、良かった、良かった! やっと雪夜くんも、CBOの一員になったって感じだね!」

「ホントそれな、Aliceちゃん。 なんつーか、雛鳥の成長を見届けた親鳥の気分だぜ」

「ゼロさんの感覚は良くわかりませんが、わたしも嬉しいです。 雪夜さん、今日から改めて頑張りましょうね」


 仲間たちに周囲との変化を思い切り指摘された雪夜は、恥ずかしさからそっぽを向いて沈黙した。

 この辺りは、彼もまだ年相応の少年らしいと言えるかもしれない。

 そんな雪夜の反応に、ケーキたちは苦笑を浮かべていたが、喜んでいるのは確か。

 だが、いつまでも引き摺る雪夜ではなく、なんとか気を取り直して口を開く。


「皆、運営からの告知は見たか?」

「おう、見たぜ。 重大発表だってな」

「内容はわかりませんが、恐らく貴音ちゃんの言っていたアップデート関連だと思われます」

「だよね、ケーキちゃん! どんなのか気になる~!」

「Alice、気持ちはわかるが、まずは防衛だ」

「わかってるよ! 雪夜くんだって、気になって仕方ないくせに~」

「そんなことは……ないぞ?」

「嘘つけ! お前がソワソワしてることくらい、わかってるっての!」

「ふふ……雪夜さん、隠さなくても良いと思います」

「……そろそろ始まるから備えろ」

「あ、誤魔化した」

「誤魔化したな」

「誤魔化しましたね」


 Alice、ゼロ、ケーキからツッコまれた雪夜だが、努めて無視を決め込んだ。

 3人は顔を見合わせて苦笑していたが、決して雰囲気は悪くない。

 むしろ、緊張感と高い戦意、和気藹々とした雰囲気が同居している。

 それは周りのプレイヤーにも伝染しており、今やEGOISTSはCBOの象徴となっていた。

 そうして今日も防衛時間は無事に過ぎ去り、時計が22時を示すと同時に、CBO公式アカウントから通知が入る。


「来たな」

「はい、雪夜さん」

「サッサとチェックしようぜ!」

「うんうん! 何だろうな~」


 雪夜たちだけではなく他のプレイヤーも一斉に内容を確認した。

 そこには――


「え!? URの上のレジェンドレア、LR解禁!?」

「マジかよ……。 どんだけドロップ率低いんだ……?」

「待て、ゼロ。 どうやら、直接ドロップする訳じゃなさそうだぞ」

「そのようですね、雪夜さん。 詳細は伏せられていますが、既存のURを鍛えることで進化させるようです」

「どっちにしろ~……。 苦行なんだろうね~……」

「諦めろ、Alice。 貴音ちゃん……いや、CBO運営はそう言うところだ」

「まぁ、覚悟しておくようにって言ってたしな。 で? いつから実装なんだよ?」

「明日の22時からですね。 急ではありますが、待たされるよりは良いかもしれません」

「ケーキの言う通りだな。 何をさせられるか知らないが……明日にはわかることだ」

「あ、雪夜くん、ベルセルクの顔になってる」

「……気のせいだ、Alice」

「いーや、なってたな。 ホント、どんだけ戦闘が好きなんだよ」

「そうは言うがゼロ、CBOプレイヤーは似たようなものじゃないか?」

「雪夜さんは、その中でも飛び抜けているのです。 わたしは良く知っています」

「ケーキ……。 とにかく、今はこれと言って出来ることはない。 いつも通り、装備の経験値を稼ぎに行こう」

「だね~。 LRか~、どんな性能か楽しみ!」

「Aliceちゃん、すぐに手に入るとは思わない方が良いぜ?」

「わかってるって、ゼロさん! でも、楽しみなのは楽しみなの!」

「わかりましたから、行きましょう。 時間は有限なのですから。 雪夜さん、お願いします」


 ハイテンションなAliceを宥めたケーキに促されて、雪夜は近くのポータル端末にアクセスした。

 パーティを組んでいる彼らは一斉に転移し、狩場としている最難関ダンジョンに向かう。

 こうしてCBOは新たな境地へと到達するのだが、本当の意味でそれが可能なのは、極めて限られた者だけだった。

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