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レイドボスAIは恋をした ~孤高の最強プレイヤーと、VRMMO生存戦争を駆け抜けた剣姫の物語~  作者: YY
第3章

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第1話 駒たちの会議

 MLOの拠点にある大樹の1室に、ペンタゴンが集結していた。

 空間の魔術師、ダリア。

 獄炎の魔女、モエモエ。

 氷狼の魔女、ネーヴェ。

 呪詛の魔術師、ノイ。

 奇跡の魔女、エリス。

 ダリアはにこやかな笑みを湛えており、モエモエはやや緊張気味。

 ネーヴェは優雅に紅茶を嗜みつつ、気を抜いてはいなかった。

 一方のノイは腕を組んで目を閉じており、まるで寝ているかのようだが、発せられる空気は剣呑なもの。

 エリスはオロオロしながら、ひたすら縮こまっている。

 まるで纏まりがないようだが、MLOを勝たせたい気持ちだけは、共通していた。

 そしてこの場には、彼らの他にもう1人いる。

 その人物が、ある意味で最も必死なのかもしれない。


『キミたち、今がチャンスです! サッサとSCOを落としなさい! その為に必要なものがあれば、何でも用意しましょう!』


 ウィンドウ越しに喚き散らしているのは、MLO運営である高垣哲。

 年齢は50歳手前で頭髪は薄く、鷲鼻が特徴的。

 生存戦争でMLOを勝たせたら、上層部に評価されると思い、橋渡し役を自ら買って出た。

 ペンタゴンを自らの出世欲に利用しようとしているが、積極的に動かない彼らを歯痒く思っている。

 今回も無理やり鼓舞しようとしているが、反応は鈍い。

 誰も返事することなく、業を煮やした高垣は尚も言い募ろうとしたが、その前にダリアが口を開いた。


「慌てないで下さい、高垣さん。 わたしたちにも、考えはありますから」

『それでは、その考えを聞かせなさい! いったい、いつになったらSCOに攻め込むんですか!?』

「いつとは、約束出来ませんね。 敢えて言うなら、チャンスがあれば……でしょうか」

『ですから、今がそのチャンスだと言っているんです! 七剣星がたった2人になったんですから、落とすのは容易でしょう!?』

「そう簡単な話ではありませんよ。 確かにSCOを倒すだけなら、すぐにでも可能かもしれません。 ただし、その場合はMLOが危険に曝されます。 MLOの守りを固めつつSCOを倒すのは、意外と難しいんですよ」

『だったら、どうすると言うんです!? このまま手をこまねいて、見ているつもりですか!?』

「そうではありません。 残った七剣星である、フレンさんかアリエッタさん。 この2人のうち1人が防衛に参加しなければ、狙いどきです。 今のところその様子はありませんが、時間の問題でしょう」

『ぐ! その時間が惜しいと言うのに……! こうなったら、現実でその2人に干渉して、ログインを遅らせるしか……』


 功を焦った高垣は、奇しくもガルフォードと同じようなことを考えた。

 しかし、流石にそれを見過ごすことが出来ない者たちがいる。


「待って下さい! 現実で干渉って……プレイヤーに直接危害を加えるってことですか!? そんなの許されません!」

「モ、モエモエさんの言う通りです……! いくらなんでも、それはやり過ぎです……!」


 立ち上がったモエモエが怒声を発し、エリスも控えめながら強い意志を持って訴え掛けた。

 それでも高垣は反論しようとしたが、ネーヴェとノイからも鋭く睨まれて、言葉を失っている。

 そこにダリアから、追い打ちが掛けられた。


「冷静になって下さい、高垣さん。 生存戦争に勝ちたい気持ちはわかりますけど、わたしたちは正々堂々と戦いたいんです。 そのような盤外戦術は、採用されませんよ」

『何を悠長なことを言ってるんですか! 敵はSCOだけじゃないんですよ!? BKOやTHOも控えているんですから、叩けるところは叩けるうちに――』

「ですから、チャンスがあれば動くと言っているではないですか。 わかったら、暴走せずに待っていて下さい。 必ず、良い報告が出来るように頑張りますよ」

『……良いでしょう。 そこまで言うなら、猶予を与えます。 ただし! 何があっても勝ちなさい!』


 その言葉を最後に、高垣が姿を消した。

 そんな彼にダリアは苦笑を浮かべていたが、モエモエが恐る恐る問い掛ける。


「ダリアさん、大丈夫でしょうか? 高垣さん、もしかして本当に……」

「心配いりませんよ、モエモエさん。 いくらなんでも、そこまで考えなしではないでしょう」

「どうかしら。 あの様子だと、思わぬ行動に出ないとも限らないと思うけれど」

「ネーヴェの言う通りだ。 俺も、高垣には不安しかない」

「ネーヴェさんもノイさんも、心配性ですね。 ですが、わかりました。 後ほど、わたしがもう1度話し合いをします」

「ダ、ダリアさんにだけ任せて良いんでしょうか……?」

「気にしないで下さい、エリスさん。 仮にもリーダーである以上、こう言った役割も仕事のうちですよ」


 眉を落とした困り顔のエリスに、ダリアはモノクルの位置を直しながら、笑顔で言い切った。

 彼の主張をモエモエたちも無言で聞き入れ、ひとまずはこの場が解散する流れになったが、その前にダリアは言葉を割り込ませる。


「ノイさん、エリスさん。 お2人に、仕事を頼みたいのですが」

「仕事だと?」

「な、何をすれば良いんですか……?」

「単刀直入に言うと、CBOを偵察して来て欲しいんです。 対象は、言うまでもありませんね?」

「雪夜……か」

「ご明察です、ノイさん。 可能なら、主力全員の情報が欲しいですが、1番は彼ですね。 何せ、ガルフォードさんを落とした、立役者の1人ですから」

「それはわかったが、俺だけでは駄目なのか? 直接交戦しないなら、1人で充分だと思うが」

「そうかもしれませんが、敵地では何があるかわかりませんから。 ノイさんの力は、エリスさんがいてこそ本領を発揮出来ますし」

「しかし……」

「だ、大丈夫だよ、ノイ。 わたしだって、戦えるんだから。 一緒に行こうよ」

「エリス……わかった。 ただし、絶対に無理しないぞ。 少しでも危険だと判断すれば、収穫がなくても撤収する」

「えぇ、それで結構です。 では、タイミングは任せますね。 侵攻は今まで通り、基本的にはモエモエさん主体で行きます。 ネーヴェさんは、もしものときに備えておいて下さい」

「……はい、頑張ります」

「やるべきことはやるわよ」


 CBO偵察を任された、ノイとエリス。

 沈痛な面持ちで、他タイトルを攻め込む決意を固めるモエモエ。

 そんな彼女を横目で見つつ、静かに応えたネーヴェ。

 こうしてペンタゴンの会議は終わり、1人、また1人と部屋を出て行く。

 その背中をダリアは穏やかな笑みで見送っていたが、全員が立ち去ったのを確認してから、ドアの鍵を掛けた。

 そして、キノコの椅子に腰を下ろしつつ、ウィンドウを開いて高垣へと連絡を取る。

 顔にはそれまでの紳士然とした表情ではなく、ニヤニヤした笑みが浮かんでいた。

 数コールしてから応答があり、ウィンドウに映し出されたのは、不機嫌そうな高垣。

 そんな彼の態度に鼻を鳴らしたダリアは、口調だけは変わらず声を発する。


「お疲れ様です、高垣さん」

『……何の用ですか? まさか、もうSCOを落とせた訳じゃないんでしょう?』

「残念ながら、それはまだです。 ただ、釘を刺しておこうと思いまして」

『ふん。 正々堂々と戦いたいから、現実でプレイヤーに干渉するなと言うんでしょう? 甘い考えですが、今回は従って――』

「違いますよ。 あれは建前です」

『建前ですって……?』

「そうです。 本当に有効なら、盤外戦術だろうが何だろうが、わたしは使うべきだと思ってます」

『で、でしたら!』

「言ったでしょう? 本当に有効ならだと。 残念ながら、高垣さんの提示した盤外戦術は、リスクとリターンが見合ってないんです」

『な、何ですって?』


 困惑した様子の高垣。

 そんな彼に、ダリアは容赦なく現実を突き付けた。


「風の便りで聞きましたが、SCOがCBOに似たようなことをして、失敗したそうです。 それ以降、SCOに対する警察のマークが厳しくなったんだとか」

『な!? それは本当ですか!?』

「風の便りだと言ったでしょう。 確証はありませんよ」

『そ、そうでしたね』


 このとき高垣は、ダリアの雰囲気に変化が起きていることに気付いていた。

 もっとも、本人に隠す気がないからでもある。

 戸惑う高垣を見下したように笑ったダリアは、ようやく本題に取り掛かった。


「と言うことで、貴方には別のことをお願いしたいんです」

『別のこと?』

「そうです。 具体的に言えば、他のタイトルにGENESISクエストの偽情報を流すんです。 これまでの傾向を考えれば、GENESISはクエスト内容を全ては公表しません。 そこを逆手に取って、他のタイトルを攪乱するんですよ」

『な、なるほど! 確かにそれなら、上手く行けば他の主力を落とせるかもしれませんね!』

「そう上手く行くかはわかりませんが、何もしないよりはマシでしょう。 ただし、この話は内密にして下さい。 そして、貴方自身が偽情報に気付いたように、振る舞うんです。 そうすれば、メンバーの信用も勝ち取れるでしょう」

『ふ、ふむ! それは良いですね!』

「では、よろしくお願いします」

『えぇ、任せなさい!』


 意気揚々と消え去った高垣。

 そんな彼に嘲笑を漏らしたダリアは、人目がないのを良いことに、行儀悪くテーブルに足を投げ出して呟く。


「どいつもこいつも、馬鹿ばかりだ。 まぁ、使えるうちは使ってあげるよ。 ペンタゴンも他のプレイヤーも運営も、全ては僕の駒に過ぎないからね」


 ニヤニヤと笑ったダリアは、いかにして効率良く駒を使えるかを考えている。

 そうして、ペンタゴンが始動するのに合わせて、雪夜の方にも動きが見られた。

 ただし、現実の方で。

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