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レイドボスAIは恋をした ~孤高の最強プレイヤーと、VRMMO生存戦争を駆け抜けた剣姫の物語~  作者: YY
第4章

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第25話 総力戦

 朱里と別れて帰宅した雪夜は、全ての用事を済ませてからベッドに腰掛けて、スマートフォンを眺めていた。

 表示されているのは、EGOISTS専用のチャットアプリ。

 開いているのは個別チャットで、相手はAlice。

 暫く厳しい顔でディスプレイを見つめていた雪夜だが、大きく息を吐いてからゆっくりと文字を打ち込んだ。

 内容は、『今日の防衛が終わったら話がある』と言う、簡潔ながら重大なもの。

 僅かな躊躇いを持ちつつも、朱里とのやり取りを思い出した雪夜は、思い切って送信した。

 するとすぐに既読にはなったものの、中々返信が来ない。

 少しばかり不安になった雪夜は、知らず内にスマートフォンを握り力が強くなっていたが――通知音が鳴る。

 即座にアプリを開いた雪夜が見たものは――


『わかった』


 いつもの絵文字や顔文字は一切使わない、たったの4文字。

 どのような感情が込められているのかわからず、雪夜は大いに悩んだ。

 しかし、全ては防衛を終えてからだと意識を切り替えた彼は、半ば無理やり胸の中に押し込んで、ログインの準備をする。

 幾度となく行って来た行為だが、今日はやけにバイザー型デバイスが重く感じた。

 それでも逃げることはなく、心を落ち着けるべく瞳を閉じる。

 時計の秒針が1回転するほどの時間、集中力を高めた雪夜は、目を開いてベッドに横になった。

 そのときには――少なくとも表面上は――調子を取り戻しており、淀みなくCBOの世界へと旅立つ。

 慣れ親しんだ拠点の町は、早朝の陽の光に照らされており、雪夜は眩しさに目を細めた。

 だが、長々と居座ることはせず、すぐにクリスタルの方へと移動する。

 様々なものを抱えつつも、足取りに迷いはなく、思考もクリアに保てていた。

 こうして自身を律することが出来るのは、彼の持つ大きな武器の1つだと言える。

 辿り着いたクリスタルの傍には、数多くのCBOプレイヤーの姿があった。

 全員が戦意に満ちており、今日の防衛が特別だとわかっているらしい。

 そのことに満足しつつ、雪夜は視線をずらした。

 そこにいるのは、最も信頼している仲間たち。

 柔らかな微笑を湛えたケーキ。

 笑顔が輝いて見えるAlice。

 快活な笑みを浮かべて、サムズアップしているゼロ。

 全員が自然体だが、それに反して戦いに備えていることが窺えた。

 彼女たちの様子を見た雪夜は、気を引き締めると同時に安堵し、力強く声を発する。


「皆、準備万端のようだな」

「まぁな。 出来ることはしたつもりだぜ」

「あたしも! あとは思い切り戦うだけだよ!」

「実際に攻めて来るかは定かではありませんが、用意は出来ています」


 雪夜の言葉を受けたゼロ、Alice、ケーキが、それぞれの答えを返す。

 Aliceがいつも通りなことに、雪夜は改めてホッとしながら、敢えて淡々と言葉を紡いだ。


「攻めて来た場合は、打ち合わせ通りに頼む。 イレギュラーが起きる可能性は充分にあるが、大抵のパターンは網羅したつもりだ。 何も起こらなければ、待機していてくれ」

「お任せ下さい。 必ずや、CBOを守り切ってみせます」

「ケーキちゃん、1人で頑張ろうとしないでね? 皆で守るんだから!」

「Aliceちゃんの言う通りだぜ。 今回ばかりは、全員の力が必要だろうからな」

「わかっていますよ、Aliceさん、ゼロさん。 お2人のことも、頼りにしています。 勿論、雪夜さんも」

「あぁ、俺も出来る限りのことはする。 さぁ、そろそろ時間だ。 何としても、生き残るぞ」


 雪夜の最後の言葉は、周囲のCBOプレイヤーにも向けたものだった。

 対するケーキたちや他のプレイヤーたちは、真剣な顔で大きく首を縦に振っている。

 かつてはソロを貫き、憎悪や恐怖の対象だった雪夜だが、すっかりCBOのリーダーのような役割になっていた。

 生存戦争で失ったものも数多くありながら、彼らが掛け替えのない絆を手に入れたのも、動かせない事実。

 そのことに雪夜はくすぐったい思いを抱きつつ、悪くないと思っている。

 そうして彼が薄く笑みを浮かべていると、遂に時計の針が19時を回り――


「来たな」

「うん。 四獣王にTETRA、それに大勢のプレイヤーだね。 いや~、壮観だな~」

「呑気だな、Aliceちゃん。 俺なんか怖過ぎて、震えが止まらねぇぜ」

「良く言いますね、ゼロさん。 今にも最前線に飛び出しそうなのは、わかっています。 ですが、まだ早いですよ」

「そうだな。 ケーキの言うように、もう少し様子を見よう。 まだ転移して来たばかりで、相手がどう動くかわからない」


 安全エリアに、BKOとTHOの大軍が現れた。

 即座に侵攻配信を開いた雪夜は、SCOとMLOにもある程度の軍勢が迫っているのを確認する。

 こちらに関してはフレンとアリエッタ、ネーヴェとモエモエがいれば、充分に対応出来そうだ。

 ただし、CBOに加勢する余裕はないかもしれない。

 最悪は自分たちだけで、四獣王とTETRAを相手する必要があると判断した雪夜。

 かなり厳しい戦いにはなるが、敵の動きはわかり易かった。

 ナーガと蛇族が東から迫り、白太とミントのペアは西から向かっている。

 Evolは北から飛んで来ており、EdenとNicoleが南から。

 Zenithの姿が消えているのは気になるが、彼がスナイパーなのは既に知っている為、どこかに潜んでいるのは間違いない。

 他のプレイヤーたちは拠点を包囲するように展開しており、そのまま圧し潰す勢いだ。

 敵の陣形を見た雪夜は険しい顔付きのまま、はっきりと告げる。


「行くぞ」

「はい」

「頑張っちゃうよ~!」

「大仕事だな!」


 絶体絶命な状況の中で、誰1人として気後れしていないEGOISTS。

 顔を見合わせた彼らは無言で背を向け合い、四方へと駆け出す。

 こうして、CBO最大の戦いは幕を開けた。

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